整形外科の分野では有名な話ですが腰痛の内の約8割は非特異的腰痛であると言われています。
非特異的、、、文字どおり”原因を特定できない腰痛”を指します。
腰痛の内の8割も原因を特定できないの!?
と思われるかもしれませんが、それについて今日は書いていきたいと思います。
腰痛診療ガイドラインを参照すると腰痛は原因別分類で
- 脊椎由来
- 神経由来
- 内臓由来
- 血管由来
- 心因性
- その他
に分類されます。
表としてはこんな感じになります。
(腰痛診療ガイドライン2019年より引用)
この多種多様な分類の中で
診断法が確立しており病態に対応した治療法が存在している疾患に脊椎腫瘍、椎間板ヘルニア、尿路結石などが当てはまると記載されています。
同時に
他の一群は疾患の診断と治療が確立していない疾患・ 症候群であり、これに対しては診断・治療いずれにも不十分な手法しかない、あるいは医療者誰もが納得する共通の診断・治療法がないものであると記載されています。
具体的にどういったものかというと
- 筋・筋膜性腰痛
- 椎間板性腰痛
- 椎間関節性腰痛
- 心因性腰痛
などがそれに該当しておりこういったものをまとめて非特異的腰痛と呼び、原因が特定できない腰痛として扱われます。
厚労省に掲載されている腰痛関連の資料の図を拝借するとこんな感じになります。
(腰痛対策より引用)
これを見ると腰痛の原因はわからないことだらけではないかといった印象を持つかもしれません。
事実、この非特異的腰痛が85%といったことはなかなか刺激的な言葉であるためかこの言葉はニュースや雑誌でも今でも度々取り上げられるのを見かけます。
しかし同時にこの「非特異的腰痛が85%」といった言葉は少し一人歩きしすぎている感も否めません。
以前にこのブログで腰痛予防に関して書いた際にも、確かに腰痛の原因となるものは多種多様であり複雑です。
しかし腰痛の8割が原因不明なのだから医師にかかることは無駄だと考えるのだけは決してやめていただきたいと思います。
というのも腰痛の中には腫瘍性腰痛など命に関わるものもあるため、少なくともそうした命に関わる病気でないこと、運動麻痺などに繋がらないことなどを明らかにすることはできるので、この初期対応は非常に重要でありそれを欠かすことは危険です。
また同時に
この非特異的腰痛に全く対策がないというわけでもありません。
あくまでこの非特異的腰痛は画像検査等を行い器質的な変化を認められないものを指します。
しかし、何も画像に写すことしか腰痛の原因の特定方法がないわけではありません。
これはある程度医師の判断にもよるものですが、腰痛を抱えている人で画像上全く問題がなく、特にある程度活動性も高くて若い人などはリハビリのオーダーがでない場合もよくあります。
別にこれは非難しているわけでは決してなく事実、腰痛の大多数は1~2週間で回復するとも言われており経過観察が悪いわけではありません。
それに整形外科によってはリハビリスタッフがいない病院やクリニックもあるので希望したところで受けることが物理的にできない場合もあります。
しかし自然回復する腰痛も多いのと同時にその反面、オーストラリアの腰痛患者の1年間の追跡研究を参照すると腰痛患者の約3分の1は1年以内に回復が得られなかったといった報告もあります。
(参照:Nicholas henschke et al.Prognosis in patients with recent onset low back pain in Australian primary care: Inception cohort study.BMJ Clinical Research)
長引く腰痛は非常に辛いですよね。
過去に病院を受診し、異常はないと言われたけど痛みは残っているし続いている。
このような方は何が悪いのでしょうか。
勿論、腰痛の原因は心因性などもあるので多種多様で十把一からげにはできませんが人によっては画像上問題なくても“機能障害”があり痛みが出ているという人がいます。
こういう方に関してはリハビリの本領発揮とも呼べる部分であり事実、何年もずっと腰痛を抱えていたという人の中でも機能的に見れば障害が明白でそれを少し改善するだけで良くなるといった人もいます。
(勿論、程度問題なので中には回復まで長くかかる人もいます。)
次回はそんな非特異的腰痛についてあくまで例の1つですが少し書いていきたいと思います。