肩こりとストレートネック。意外な関係に迫る⁉

今日は”肩こり”について取り上げたいと思います。

肩こりと聞くと大したことない印象を持つ方もいるかもしれませんが、肩こりは生活の質を大きく落とす可能性が指摘されており、決して無視できない問題でもあります。

 

また肩こりに関しては、専門的な視点から捉えてもまだまだ謎が多く、非常に難解な問題でもあります。

 

1.肩こりの概要。

 

肩こりとは。

 

まず肩こりに関しては日本整形外科学会から一般向けに以下のようなパンフレットが作成されています。

 

日本整形外科学会:肩こりパンフレット

 

このパンフレットを読むと、例えば肩こりの症状に関しては以下のように説明されています。

(肩こりパンフレットより引用)

 

肩こり人口は多いので、このパンフレットに書かれているような自覚症状をお持ちの人も多いのではないでしょうか。

 

肩こりの原因は。

 

その他にもこのパンフレットには肩こりの原因

  • 猫背や前屈みといった不良姿勢。
  • 運動不足
  • 精神的ストレス
  • 長時間の同一姿勢
  • 冷やしすぎ

などと書かれており、

 

肩こりの予防法と治療法。

 

その予防法治療法として

  • 同じ姿勢を長時間とらない。
  • 温める。
  • 適度な運動をする。
  • リラックスする。
  • 薬物療法(筋緊張緩和剤、湿布、局所麻酔など)

といったものがあげられています。

 

このあたりに関してはご存知の方や聞いたことのある人も多いかもしれません。

 

肩こりは一種の国民病?

 

過去に私のブログでも取り上げましたが、だいぶ前になるので肩こりの概要として現時点(2022年2月)で厚労省より報告されている最新の国民生活基礎調査を再度見てみると、、、

(参照:厚生労働省 2019年国民生活基礎調査
※2020年の国民生活基礎調査は新型コロナウイルスの影響により中止されました)

 

病気やけが等で自覚症状のある人(有訴者)は人口1000人当たり 302.5人とされています。

そしてその中での男女別のトップ5が以下であると報告されています。

 

見てのとおり、

肩こりは男性では2位女性では1位

となっております^^;

 

私が普段働いていても肩こり症状を訴える方は非常に多く、中には長年ひどい肩こりをずっと抱えており、肩こりに関してはもう諦めていたと言う方まで過去にはいました。

腰痛についても同じようなことを書きましたが、肩こりもそれだけ抱えている人が多く、一種の国民病といって良いかもしれません。

 

 

今日はそんな肩こりについての豆知識として1つ取り上げたいのが

ストレートネック“と”肩こり“の関係

についてです。

 

2.ストレートネックと肩こりの意外な関係。

 

ストレートネックとは。

 

ストレートネックとは最近ではスマホ首と言われることもありますね。

 

首(頚椎)とは脊柱、、、いわゆる人間の背骨の中の1部分を指します。

分類として脊柱は頚椎胸椎腰椎(+仙骨・尾骨)に分類され、本来はそれらがS字状となるような3つの弯曲が存在します。

形としては下の絵のように頚椎では前に、胸椎では後ろに、腰椎では再び前に弯曲しています。

 

こうしたS字状の弯曲はあらゆる面で非常に重要な役割を担っているのですが、ストレートネックとはいわゆる、この中での頚椎部分に本来あるはずの”前方の弯曲”がなくなっていることを指します。

 

そしてもしかしたらですが、肩こり症状を抱えている人の中で

ストレートネックがあるから私の肩こりは治らない

と考えている方はいないでしょうか。

 

ネットで検索したり、本や雑誌などにもストレートネックが肩こりの原因だと書かれていることも多いのですが、

実は「ストレートネック=肩こり」と短絡的に捉えるのには少し注意が必要です。

 

 

ストレートネックと肩こり症状の関連は乏しい。

 

というのも日本人を対象に頚椎のレントゲン画像と肩こりや各頸部症状などを比較した研究によると、

ストレートネックと肩こり症状は関連が乏しい。

といった報告がされています。

(参照:Gentaro Kumagai et al.Association between roentgenographic findings of the cervical spine and neck symptoms in a Japanese community populatio. J Orthop Sci. 2014 May.)

 

これに関しては納得できない方や反発する声もあるかもしれませんが、私の考えとしては少なくとも事実としてこうした医学論文による報告もあるので、必ずしもストレートネックがあるから肩こりになる、もしくは肩こりが治らないと一辺倒に決めつけるのは良くないと考えています。

事実、ストレートネックなのに肩こり症状のない人は私自身も見たことがあります。

 

関連が全くないとも言えない理由。

 

ただ同時に補足したいこともあります、、、

 

姿勢としてはストレートネックと近いものでFHP(forware head posture)というものがあります。

これは日本語では頭部前方姿勢と表現されることもあります。

文字どおり、頭が前方に位置した姿勢のことを指します。

(専門的にはこの頭部前方姿勢(FHP)はCVA(craniovertebral angle)と呼ばれる、第7頚椎の棘突起を通る水平線と耳珠と呼ばれる部位を結ぶ線のなす角度が48°未満の姿勢のことを指します。)

 

難しいことを抜きにしてイメージとしては下の写真のような顔を前に突き出したような姿勢を指します。

 

こうした頭部前方姿勢(FHP)の人を対象に、首の位置によってその周囲の筋肉の活動がどう変わるかといったことを調べた研究によると、首の角度によって過活動を起こす筋肉や反対に有意に減弱してしまう筋肉があることがわかっています。

(参照:SongHee Cheon et al.Changes in neck and upper trunk muscle activities according to the angle of movement of the neck in subjects with forward head posture. J Phys Ther Sci. 2017 Feb.)

 

そのため、先ほどのストレートネックの存在自体がイコールで肩こりとなるような関連は認められないにしても、顔を突き出した姿勢などの不良姿勢によって一部の筋肉が普段から過活動を起こし、そこから肩こりにつながる可能性はあると考えられます。

 

「肩こりとストレートネックには関連が乏しいが、ストレートネックと概念が近い頭部前方姿勢によって肩こりが起きる可能性はある。」

 

どうしてこういった細かいというか、ややこしい話をするかと言うと、骨や関節の状態といった”器質的な面”と姿勢(変形とは別)や各関節の動きや筋肉の作用などの”機能面”といったものをある程度分けて考える必要があると私は考えているからです^^;

 

それは以前に股関節のcam typeの変形の話でも取り上げたように、骨や関節の状態といった器質的な問題だけが全てを決めるわけではないといったことを補足しておきたかったので少し細かい話にはなりますが触れさせていただきました。

(過去のブログは股関節痛を生じやすい人とは?をご参照ください。)

 

以前のcam typeの変形のように、肩こりに関しても同様で

ストレートネックといった頚椎の変形があるから必ず肩こりが起きる、もしくは今ある肩こりは絶対に治らないといったわけではない。

ということが考えられます。

 

もちろん肩こりについてはまだまだ原因不明のことが多かったり、肩こりと一言に言っても原因は多種多様であったり、場合によってはそれらが複合しているといった可能性も優に考えられます。

 

ただどんなことでも0か100かで捉えてしまうのには注意が必要で、ストレートネックは気をつけるべき問題の1つではあると同時に、仮に現時点でストレートネックがあったとしても必ずしもそのせいで肩こりが治らないと諦めてしまうべきではないと私は思っています^^

 

肩こり関連で今回、ストレートネックを選んだことに深い意味はなかったのですが、ネットや本などでも比較的ストレートネック=肩こりといった書かれ方をされていることが多かったので、一辺倒な誤解がないように豆知識としてご紹介させていただきました。

 

 

3.雑記

 

普段こういった仕事をしていても肩こり症状を持っている方は本当に沢山いるんだなと実感させられます。

本来、肩こりでリハビリのオーダーが出ることはなく、肩こり症状がある程度合併していることの多いリハビリ適用となるものとして五十肩(肩関節周囲炎)が挙げられます。

そんな五十肩に対してのリハビリを通して、必要な際は肩こり症状に対してもアプローチやアドバイスをすることがあるのですが、これは解消されると本当に喜んでもらえます。

私自身は元々肩こりの自覚症状はないのですが、患者さんのそういった反応を沢山見ていると本当に辛いんだなと感じさせられます^^;

勿論、人によってはある程度の期間、自主的に適した運動を継続してもらう必要のあるケースも存在しますが、そうした肩こり症状に対しての運動についても私の実経験とエビデンスベースの両方からご紹介していけたらと考えています。

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