【骨粗鬆症】から学ぶ!骨の健康とその重要性とは?

あなたは自分の骨の健康について気にしたことはあるでしょうか。

 

筋肉に関しては筋トレ本や雑誌の記事、ネット情報は枚挙にいとまがありませんが、同じ運動器でも骨に関してはそれらと比べると注目されることが少ない印象があります。

 

そのため普段から健康のために運動をしているといった方でも、骨を意識して運動しているという人は少ないのではないでしょうか。

 

そんな他の運動器と比べるとやや注目されにくい“骨”ですが、実は骨の健康はその人の予後(生活の質)に大きく関わる要素でもあり、健康な身体作りには欠かせないものです。

 

今日はそんな

身体における”骨”の健康

について軽く概要を書いていきます。

 

1.骨の問題の代表格である”骨粗鬆症”とは?

 

まず一般的に骨の問題と聞いてイメージされやすいものとして骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が挙げられます。

字面にすると少し難しい字ではありますが、聞いたことある人も多いのではないでしょうか。

 

骨粗鬆症とは。

 

骨粗鬆症とは一言で言ってしまえば、骨がもろくなった状態のことを指します。

 

e-ヘルスネットを参照しても骨粗鬆症については

骨の代謝バランスが崩れ、骨形成よりも骨破壊が上回る状態が続き、骨がもろくなった状態のこと。

e-ヘルスネットより引用。

と記載されています。

 

ではなぜ身体の骨がもろくなってしまうかというと、、、

 

骨粗鬆症の原因は。

 

骨粗鬆症の原因としては

  • 骨を形成するカルシウムやマグネシウムの不足。
  • カルシウムの吸収に必要なビタミンDの不足。
  • 運動不足による骨に対する負荷不足。

といったことが書かれています。

(参照:e-ヘルスネット)

 

ここまでの内容も知っている人は多いかもしれません。

 

では、実際にこうして骨が脆くなった状態(骨粗鬆症)というのはどうやって確かめることができるのでしょうか。

 

骨粗鬆症の確かめ方。

 

その答えが骨密度を確認する”というもので、実際に骨粗鬆症の診断基準に使われています。

 

骨密度とは骨を構成するカルシウムなどのミネラル成分のつまり具合ことを指します。

 

※1 骨密度は骨の単位面積(cm2)当たりの骨塩量(g)で算出されます。

(2重X線吸収法(DXA法:Dual-energy X-ray absorptiometry)によって測定(e-ヘルスネット参照)))

※2 日本では1996年に骨密度測定値を取り入れた骨粗鬆症の診断基準が作成されました。

 

ただここで補足を入れると、確かに骨密度は一般的で非常に重要な要素であることに違いはありませんが、“骨の丈夫さ(骨強度)”というものは何もこの骨密度だけに限りません。

 

骨密度以外にも多様な骨折危険因子が明らかになってきており、日本骨粗鬆症学会による「予防と治療ガイドライン2015年版」でも

骨の丈夫さを表す「骨強度」は骨密度と骨質の 2 つの要因からなり、骨密度は骨強度のほぼ 70%を説明し、残り の 30%程度は「骨質」により説明できる。

と説明されています。

(参照:一般社団法人日本骨粗鬆症学会:予防と治療ガイドライン2015年版)

 

(引用:予防と治療ガイドライン2015年版)

 

骨粗鬆症と聞くと、骨密度のみに焦点があたりがちですが骨強度の内の3割は骨質も影響しているということから近年注目されています。

2011年と少し前の記事ですがTBSサイトの記事でも以下のように取り上げられたことがあります。

骨質という考えを取り入れ、新たな骨の治療法を確立したい。

 

2.骨質とは? 骨密度との違いって何?

 

骨質についてですが、骨密度と何が違うのかという説明で使われる表現として、建物に置き換えて説明されることがよくあります。

 

骨質と骨密度の違い

 

建物に置き換えた際の骨強度、骨密度、骨質のそれぞれの違いは

  • 骨強度→建物自体の強度
  • 骨密度→コンクリート
  • 骨質→鉄筋

といった表現がされます。

 

建物の強度を考えた際に素材のコンクリート(骨密度)は勿論重要になりますが、それらを支える鉄筋(骨質)もしっかりしていないと建物全体の強度としては脆弱になってしまいます。

 

そして建物でいう鉄筋に相当するこの骨質に大きく関わっているのが、実はコラーゲン架橋(かきょう)と呼ばれるコラーゲン分子の結合です。

架橋という言葉の通り、コラーゲン分子同士の繋がりを示しています。

そうしたコラーゲンの繋がりの悪いコラーゲン架橋を悪玉架橋(老化架橋、AGEs架橋)と言います。

 

骨密度が高くても骨折しやすい場合がある。

 

そして

このコラーゲン架橋の繋がりに異常があると“骨密度が高くても骨折をしやすい”といった状態になってしまうことがわかっています。

 

 

骨の栄養と聞くとカルシウムを連想しがちではありますが、このようにコラーゲンが骨(骨質)に重要ということから、、、

  • コラーゲンの生成にはビタミンCが必要。
  • 正常なコラーゲン架橋の形成・維持にはビタミンB群が必要。
  • コラーゲンの材料にはアミノ酸の供給源となるたんぱく質が必要。

といった結論が導かれます。

 

そのため骨の健康のためには何もカルシウムだけでなく、その他多くの栄養素が必要となります。

(その他にも骨形成に必要なビタミンDやビタミンKなども勿論重要です。)

 

ここでもやはり「〇〇のためには〇〇さえ摂っていれば大丈夫」という短絡的なアドバイスが良いわけではなく、様々な要素を取り入れ、そのバランスが重要になってくることがわかります。

 

こういった骨のメカニズム等の詳細は正書に譲るとして何はともあれ、骨密度の影響にしろ、骨質の影響にしろ、私たちは加齢に伴い骨がもろくなってくることはまぎれもない事実です。

そして骨密度に関して言えばその減少率は男性よりも女性の方が大きいこともわかっています。

 

整形外科にかかることがなければ、普段からこうした骨密度や骨質といった指標を用いて自分の骨強度を知るといった機会は少ないので、骨の健康について意識する人は少ないかもしれません。

骨の健康は”治療”よりも”予防”が重要。

 

しかし冒頭でも書いたように骨の強度は心身ともに健康でい続けるための重要な要素の1つであり、何よりも骨のもろさが発覚してからの治療以上に”予防”という観点が重要になってきます。

 

ただ、どんな分野でもそうですが“予防が大事”というのは誰しも頭ではわかっていても実際に取り組むことが非常に難しく、できない人が多いという特徴を持ち合わせているのがこの予防です^^;

これに関しては私自身も実感しますし、ついついサボってしまうことは正直あります(笑)

(職業柄、自分の身体機能のパフォーマンスチェックはしており、ある一定ラインは下回らないように気をつけており今のところは維持できています^^;)

 

ただそれでも個人的にはそうした予防の重要性を少しでも知ってもらいたいところではあるので


そもそも骨がもろくなると何が困るの?

といった内容について軽くご紹介します。

 

3.骨がもろくなることにより生じる大きなリスクとは?

 

骨折しやすくなる。

 

まず端的に結論を先に言うと、骨がもろくなって1番困ることは当然ながら


骨折しやすくなる

といった問題です。

 

更にもう少し深堀りして

骨折することの何が問題なの?

ということに焦点を当てます。

 

骨折は物凄く痛いので、痛いのが嫌なんだから当たり前だ

というのは勿論そうなのですが、、、

 

ただ中には骨が折れた時は痛くても、それさえ我慢して折れた骨がくっついてしまえばそれで終わりと考えている方もいるかもしれません。

 

しかし、実はそういうわけにもいきません。

 

実はそんな単純なものではなく、

骨折には痛い以上にもっと別の大きなリスクも存在します。

 

私は職業柄、骨折した方や骨折後から日常生活に復帰するまでといった経緯を見ることも多々ありましたが、骨折は年齢を重ねた人ほど深刻な問題となってきます

 

骨折することのリスクとは。

 

それこそ良く言われるリスクとして

高齢者が転倒し、足の骨を骨折してしまいそこから寝たきりになってしまったり、認知症が進行してしまった、、、

などという話はこの仕事をしているとよく耳にします。

 

また普段リハビリをしている方の中でも、骨折に対して気を付けている方も多く、「私は転んで骨折してしまったらもう終わりかもしれない」と話される方もいます。

 

それ以外にも、実際に転んで骨折した人の中に「今まで転んで骨折するなんて考えてもみなかった」とご自身の身体機能の低下を憂いている方もいました。

 

大げさな話では決してなく、そうした主観的な経験談に限らず、エビデンスベースでもある程度の年齢になってからの骨折はその後の生活の質や予後を大きく左右してしまうリスクを孕んでいることがわかっています。

 

骨折により死亡リスクが高くなる。

 

例えば転んで骨折してしまう部位で多いものの1つとして股関節部(大腿骨)の骨折があります。

その股関節部の骨折に関してのメタアナリシスを参照すると、

高齢者は股関節部分の骨折後の3か月間に全死因死亡のリスクが5~8倍高くなる

といった報告がされています。

(参照:Patrick Haentjens et al. Meta- analysis: excess mortality after hip fracture among older women and men.Ann Intern Med. 2010.)

 

また別の研究でも

股関節部分の骨折をした高齢者の1年死亡率が10.1%だった

といった報告もされています。

(参照:Keizo Sakamoto et al. Report on the Japanese Orthopaedic Association’s 3-year project observing hip fractures at fixed-point hospitals.J Orthop Sci. 2006 Mar.)

つまりは股関節部分の骨折をした高齢者の内の1割は、骨折後1年で亡くなってしまうリスクがあるということになります。

 

股関節部分に限らず他の研究を参照しても、骨粗鬆症からくる骨折は死亡リスクの上昇につながることが指摘されています。

(参照:Dana Bliuc et al. Mortality risk associated with low-trauma osteoporotic fracture and subsequent fracture in men and women.JAMA. 2009.)

 

なんとも怖い話ですね^^;

当たり前ですが、骨折はしないに越したことはありません。

 

転ばない、転んでも大丈夫な身体作りが重要。

 

ある程度の年齢になれば、転倒して手や足をぶつけて骨折といったことが起こり得るので転倒しないといった対策も重要ですが、別の見方をすると

たとえ転んでしまったとしても折れないくらいの丈夫な骨を作っておくという対策も非常に重要になってきます。

ましてや骨粗鬆症で骨がもろくなってしまうと、くしゃみや軽い尻餅程度の衝撃でも骨が折れてしまうこともあるので、そうなってしまうと普段の日常生活を過ごすのも怖くなってしまいますよね^^;

 

そうならないためにもやはり予防は非常に大切です。

 

※転倒については過去のブログで米国老年医学会、英国老年医学会、米国整形外科学会の資料を参考にして少し取り上げたことがあるのでよければそちらをご参照ください。

(過去のブログは 単純な筋力トレーニングのみだと対応できないことって何?を参照。)

その際に参考にした資料は↓

(Guideline for the Prevention of Falls in Older PersonsAmerican Geriatrics Society, British Geriatrics Society, and American Academy of Orthopaedic Surgeons Panel on Falls Preventionを参照。)

 

4.骨折の危険因子とは?

 

骨密度の低さ以外の骨折の危険因子について。

 

そんな骨折の危険因子については冒頭で取り上げた“骨密度”の低さが勿論ありますが、それ以外に独立した危険因子としては

  • 既存骨折
  • 喫煙
  • 飲酒
  • ステロイド薬使用
  • 骨折家族歴
  • 運動不足

などがあげられています。

(参照:一般社団法人日本骨粗鬆症学会:予防と治療ガイドライン2015年版)

この1番上にあるように、過去に骨折していたかどうか(既存骨折)ということも骨折の危険因子として含まれています。

そのため、骨折したのがくっついてしまえばそれで終わりと言えないのはこういうところにも理由があります。(この詳細についてはまた別の機会に取り上げたいと思います。)

 

それでも最大の危険因子は骨粗鬆症である。

 

ただこうして数ある危険因子の中でも骨折の最大の危険因子は骨粗鬆症であると言われています。

 

そのため、骨折のリスクを下げるのに1番効率的なのは骨粗鬆症になるリスクを減らすことであることがわかります。

 

骨折は身体機能や生活の質を大きく損なうだけでなく、今日ご紹介したように死亡リスクも有意に上昇させることから、健康のためには”骨”という運動器も決して見落としてはいけない重要な要素の1つでもあります。

 

こうした骨の丈夫さを作る、もしくは骨粗鬆症を予防する1つの方法として“運動”があるのですが、今回のブログの続きとしてそうした骨を丈夫にする(骨粗鬆症予防)のに適した運動についてもまた書いていきたいと思います。

 

5.まとめ

  • 骨について最も気をつけたいものの1つが骨粗鬆症である。
  • 骨粗鬆症を確認するには骨密度を評価する必要がある。
    →しかし骨密度だけでなく”骨質”も非常に重要である。
  • 骨の栄養素はカルシウムだけでなく、その他多くの栄養素が必要である。
  • 骨粗鬆症による骨折は死亡リスクを優位に上昇させる。
  • 骨密度以外にも独立した骨折の危険因子はたくさん存在する。

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