誰しも、風邪などで何かしら病院にかかったことがあると思います。
ありがたいことに私は今のところ健康そのものなので、めったに病院にかかることはありません。
それでも数年に1度は風邪をひいたり、花粉症がひどいため病院にかかることがあります。
1.病院不信の声。
私は医者ではありませんが、普段整形外科で働いていると時々、整形外科に対して悪いイメージを持っている患者さんと出会うことがあります。
整形外科あるある。
その中でよく聞く内容としては
整形外科にいっても目も見ず、痛いところを触りもせず、パソコン(カルテ)だけをみて対応された。
とか
こちらの話はほとんど聞いてくれず、湿布をだされただけで終わった。
や
私の方を見ずに、ろくな説明もないまま手術を勧められた。
それ以外にもひどいものになると
診察に行ったは良いものの怒られただけで終わった。
不満があるならもう来るなと言われた。
といった経験をお持ちの方もいました^^;
勿論、そういった整形外科ばかりではなく、とても評判の良い整形外科も沢山あります。
ただその一方で、先ほどあげたような不満を抱えた患者さんも多いんだなというのも多く見受けられます。
そういった経験をした人は当然ながら整形外科に嫌毛がさし、次回以降は痛みがあっても受診をしなくなったという方も多くいます。
代わりに針治療や整骨院、近くの整体に通うようになったと話される方もいます。
民間(代替)医療と通常医療
私は医療機関に勤めているのと同時に、医療の外の世界でフリーでやっている面もあるのでそれぞれのメリット、デメリットをある程度は把握しているつもりです。
そんな私からも言えることは、何か不調があった際は医療機関を受診し、通常医療に頼ることをお勧めします。
仮に医療に対して不満や不信感を持っていたとしても、まずは医療機関での通常医療を受けることが最善と言えます。
これはリスクマネジメントとして本当に強くお勧めします。
たとえ問題(整形外科で言うと痛みなど)が解決しなかったとしても、表にはわかりにくい部分でそのメリットを受けているからです。
それは何も医療保険という金額面の話だけではなく、医療機関を受診することで、少なくとも放置していると重篤となり得るような病気を見逃すということは高確率で回避することができるからです。
そのため、もし代替医療や医療機関以外に頼るにしても、そうした重篤な問題がないとわかったうえで利用することがとても大事です。
2.良い医療機関とは?
ちなみに私自身、今まで転職を経験し、現在勤めているところ以外の医療機関でもそれなりに勤務してきましたが、良い病院、クリニックを見つけるのはなかなか難しいかなと思っています^^;
良いかどうかは通ってみないとわからない?
こればかりは実際に行って(受診して)みないとわからない部分が大きいと言えます。
ただそれだけでは心もとないので、良い医療機関を見つけるために1つ、参考となるような論文があったので、今日はそれをご紹介したいと思います。
その論文はシステマティックレビューであり、エビデンスレベルでいうと最上位のものになります。
医者の経験年数と質は比例しない?
その論文を参照すると、結論から言うと
といったものです。
医療機関を受診する前にホームページであらかじめ調べたりするかもしれませんが、その際にその病院の医者、クリニックの院長の経歴などをチェックする方も多いと思います。
通常の感覚であれば、ベテランの人の方が安心があると思います。
そしてベテランの医者の方が、良い医療を提供してくれると期待すると思います。
正直なところ主観的には私もそう感じます^^;
ただ興味深いことに、ベテランだからといって必ずしも質の良い医療を提供してくれるかと言えばそうでない可能性も高いことが示唆されています。
ベテランの方が質が低い?
それどころか、ベテランの医者は通常よりも質の低い医療を提供する可能性があることを指摘されています。
これはなかなか衝撃です^^;
先ほども軽く触れたようにシステマティックレビューとはエビデンスのレベルでいうと最上位のものになります。
いわゆる信頼性の高いものとなります。
↓(エビデンスのピラミッド:上になるほど信頼性が高いとされている。)
そのシステマティックレビューは62のアウトカム(結果・成果)に関するデータを報告した59の論文を分析しています。
エビデンスが示す経験と質の関係
その結果が以下になります。
- (62件の評価のうち)32件(52%):評価したすべてのアウトカムについて、診療年数の増加とともにパフォーマンスが低下すると報告していた。
- 13件(21%):いくつかのアウトカムについて経験の増加とともにパフォーマンスが低下するが、その他のアウトカムについては関連がないと報告。
- 2件(3%):最初は経験の増加とともにパフォーマンスが上がり、ピークに達し、その後低下すると報告(凹関係)。
- 13件(21%):関連なし。
- 1件(2%):いくつかのアウトカムについて診療年数の増加とともにパフォーマンスが向上するがその他のアウトカムには関連がない。
- 1件(2%):すべてのアウトカムについて診療年数の増加とともにパフォーマンスが向上したと報告していた。
※最も客観的なアウトカム指標を用いた研究に限定して分析しても、結果は大きく変わらなかったと報告。
(参照:Niteesh K Choudhry et al.Systematic review: the relationship between clinical experience and quality of health care. Ann Intern Med. 2005 Feb)
ちなみにイメージしやすくものすごく簡単に補足すると、ここでのパフォーマンスとは臨床能力、健康知識、態度、診療、実際の成果などになります。
びっくりではありますが、上の結果からもわかるように、経験年数が上がるとむしろパフォーマンスは低下している傾向にあることがわかります。
実際に同論文の結論としては、
としています。
いやはや恐ろしい、、、
何とも信じがたい話ではあります^^;
3..リハビリあるある。
この論文は医師に関しての報告ではありますが、エビデンスはありませんが私のようなリハビリ職にしてもあてはまるような気がして他人事には思えません^^;
リハビリにも言える経験と質の関係。
肌感覚にはなりますが、リハビリ職でも提供するリハビリの質というのはなかなか差があると感じています。
勿論リハビリ職は国家試験があるので、最低限の知識は担保していると言って良いかもしれませんが、国家試験が受かって資格をとった直後というのはまだまだわからないことだらけです。
はたから見れば、国家資格をとったということはリハビリに必要な最低限の医療知識は有していると思うかもしれません。
ただリハビリ職というのは、国家試験の受験前に臨床実習も終了しているとはいえ、実際のリハビリの評価やそこからのアプローチというのはほとんど全て働きだしてから身につけていくといった世界です。
私自身、国家資格をとった直後はホントにこれで患者さんのリハビリをしても良いのか?(・_・;)
と感じて、その後現場にでるにあたっての手ごたえも自信も全く持ち合わせておりませんでした。
そういったリハビリ職は多いと思います。
国家資格を得てからは実際に病院や施設などに入職しても、その後しばらくは1人でリハビリを行うわけではなく、先輩についてもらい、指導を受けつつ臨床経験を積んでいきます。
そうなると入ったばかりの新人と比べると、当然ながら経験を積んだ人のリハビリ内容の方が質は高いものであると考えられます。
ただ私もこの業界に入って、それなりの年数を重ねたので感じることがあります。
それは経験年数もある程度の年数が経過すると、それ以降の質の良し悪しに関しては必ずしも経験年数では推し量れないなといったのが正直なところです。
経年年数は長いけど同じ業界の人から見ると”ん?”と感じることや、反対に自分より経験年数は浅いけどものすごく参考、勉強になるリハビリを提供している人もいます。
勿論その反対も然りですが。
そのため、今回のこの論文のような経験年数が必ずしも質と比例しないといった内容は”ドキッ”とする内容ではありました。
ただ医師を対象とした論文で、それも信頼性の高いと考えられる論文でそういった内容があるというのは何とも他人事には思えません。
しかも、単純に比例しないどころか経験年数を重ねるにつれてパフォーマンスが低下しているのが確認されたというのは否応なく危機感を感じさせられる内容です^^;
極論にならないように注意。
ただ補足したいのは、そういった傾向はあるものの、これを拡大解釈して経験年数が豊富な医師は必ず質が低いという考えに至るのは誤りです。
あくまでもそういった傾向があるだけであって、当然ながらそれを全てにあてはめ、一般化して良いわけではありません。
何が言いたいのかというと、
病院やクリニックを選ぶ際に、その医師の経歴や経験を考慮すること自体は問題ないと思います。
ただそれと同時にこうした論文を参考にすると、そうした経歴や経験年数のみで判断するのは早計であるということです。
もし、経歴や経験年数だけにこだわって医療機関を受診してみた結果、そこが丁度良いところであれば問題ありません。
ただ仮にそこがイマイチであったり、少し腑に落ちないことがあった際は食わず嫌いをせずに、一度そうした医師の経歴や経験を気にせず別の医療機関を受診してみるのも一つの手かなと個人的には思います。
医療機関を決める基準。
あの人は有名な人だから、、、
あの人は立派な経歴を持っているから、、、
あの人は経験が長いから、、、
といった理由だけで選んでしまうと本質を見誤る恐れがあります。
ネットで色んな情報を得られる現代ですが、必ずしも全てを解決してくれるわけでもありません。
私としては、そうした情報も参考にしつつ、それだけでなく周りの信頼できる人からの口コミや実際に自分が受診して感じたことといったローカルな部分の情報も食わず嫌いをせずに目を向けてみるのも良い方法だと思います。
人同士になるので単純に合う、合わないといったこともあると思いますし^^
皆さんもそうしたことはわかったうえで行動している人も多いと思いますが、こうした質の高いエビデンスベースでも経験と質は必ずしも比例しないということが証明されているというのが何とも興味深かったので今回取り上げさせていただきました^^
4.おわりに。
私は医者ではありませんが、リハビリ専門職の端くれではあるので、これは通ずるところがあるので肝に銘じて今後も頑張っていきたいと思います。
自分を疑う重要性。
余談ですが、とある海外の理学療法士兼ストレングストレーナーの方の本に書いてあった内容に以下のようなものがあります。
経験豊かな専門家は、自分自身の主観の犠牲になることがある。
最も客観性のある専門家とは、自分が客観的ではないことを知っており、そのために仕事を再確認するためのシステムに従うことを理解している人々である。
良くも悪くも私は昔から確信を持てない性格です。
実際にとった行動を後悔することはありませんが、行動する時・している時は常に「これで大丈夫なのかな?」といった意識があります。
これはずっとただの短所だと考えていましたが、こうした内容を読むとある種この性格も武器にもなり得るかなと感じました。
自信がある≠正解。
このブログでもたびたび触れてきましたが、私は自分の過去の考えが間違っていたことや、どんなに気を付けていても主観が入ってしまうことを自覚するようにしています。
振り返ってみれば同じようなミスを犯したなと感じることもあり困ったものですが、少なくとも自分が絶対的に正しいと思っていなければ、客観的でもないことを自覚しているという点に関しては、使い方次第でこの業界でも1つの強味として活かしていけるのではないかと考えています^^
自信満々で「これが正解である!」と道しるべを示してくれるような人はカリスマ性があり、魅力的にうつります。
それはその人の強味であり、実際に魅力となります。
事実、そういったアクションが必要な場面もあると思います。
ただそうした一面だけでなく、ある程度一歩引いた目で、自分が客観的ではないこと、間違っている可能性があるということを常に認識できる人もそれは立派な能力であり強味である思います。
皆さんはどっちのタイプかはわかりませんが、どちらのタイプであったとしても、自分のタイプを自覚したうえでそれぞれの強味を活かしていきたいところですね^^