今日は糖質制限ダイエットについて取り上げます。
ダイエット業界では人気の糖質制限ダイエット。
あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか。
医師という肩書で糖質制限を強く薦めている一般書も良く見かけますよね。
ただ一口に糖質制限ダイエットと言っても、その方法論は様々です。
そのため、糖質制限ダイエットが良いのか悪いのかというのはその程度にもよります。
それでも、糖質制限ダイエットに関して確実に言えることが1つあります。
です。
私のブログではおなじみですが、これに尽きます。
どんなことでもやりすぎは禁物です。
メリットとデメリットは表裏一体です。
ただそれだけで終わっては面白みがありません。
そのため、今日は糖質制限ダイエットに関してのよくある誤解や疑問について少し解説していきたいと思います。
ブログの内容としては
- 糖質制限の減量効果について。
- 炭水化物は良いもの?悪いもの?
- 炭水化物の摂取量はどれくらいが良いの?
- 各栄養素についての捉え方のポイント。
などについて、とりあげてみました。
1.糖質制限ダイエット万能論には注意。
糖質さえ制限していれば、いくらでも食べて良いっていうのはホント?
最近はさすがに疑問を持つ方も多くなった印象がありますが、糖質制限について以下のような謳い文句をみかけることがあります。
糖質制限さえすれば、いくら食べても良い、運動もいらずに痩せることができる。
いやいやいや、、、
正直なところ、これはあり得ません。
糖質制限を守っていれば、いくら食べても良い(痩せる)というのは間違いです。
痩せるか太るかを決めるのは、摂取カロリーと消費カロリーの差です。
糖質を制限したからといって、この原則は変わりません。
総摂取エネルギー量が一緒なら、栄養素による減量効果に違いはない。
糖質制限ダイエットは日本に限らず、海外でも注目されています。
そして、海外ではその効果を科学的な手続きを経て調べられています。
仮にですが、普段の食生活から糖質を制限すれば痩せるのは間違いないと思います。
しかし、それはあくまでも他の栄養素を変えなかった場合です。
糖質制限をすればいくら食べても良いということは、減らした糖質分を別の栄養素でとることを意味します。
そうなると話が変わります。
もし糖質制限を守れば、他はいくら食べても良いと言うならば、以下の問題をクリアしなければいけません。
といった問題です。
もし、総摂取カロリーはそのままで、糖質の割合を減らした食事で実際に体重が減るのであれば、糖質を制限すればいくら食べても良い(食事制限をしなくて良い)と言うことができる可能性があります。
実際にこのような栄養素のバランスの違いが減量効果に差があるのかといったことを調べた研究があります。
(参照:Frank M Sacks et al.Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates . N Engl J Med. 2009 Feb 26)
その研究内容とは食事の栄養素バランス(炭水化物、たんぱく質、脂質)を以下の4種類に分類し、2年後の体重変化をみるといったものです。
- 炭水化物:65%、たんぱく質:15%、脂質:20%
- 炭水化物:55%、たんぱく質:25%、脂質:20%
- 炭水化物:45%、たんぱく質:15%、脂質:40%
- 炭水化物:35%、たんぱく質:25%、脂質:40%
これら4群にわけており、それぞれ栄養素の割合が異なっています。
結果としては80%の参加者の平均体重減少は4kgであり、満腹感、空腹感、食事への満足度、グループセッションへの出席率は、すべての群で同様だったというものでした。
(各食事療法と2年後の体重変化。回帰係数に有意差はなかった。)
(Frank M Sacks et al.Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates . N Engl J Med. 2009 Feb 26より図引用。)
聞いてしまえば当たり前の結果ではあります。
ただこのことから、糖質制限さえしていればいくら食べても良いということには決してならないことがわかります。
あくまでも、痩せるか太るかはカロリー収支の差であるという当たり前の原則が、この論文からも立証されています。
(※補足:減量というアウトカムに限っては各栄養素の割合は関係ありませんが、健康に関しては少し異なってきます。その点に関してはこの後に少し取り上げていきます。)
2.炭水化物の摂取量についての研究。
炭水化物摂取量と死亡率の関係。
最初にややマイナスなことを書いてしまったので、今度は少しメリット部分について補足します。
炭水化物摂取量自体を見直すこと自体は悪いことではありません。
というのも炭水化物の摂取量と死亡率にはある関係が認められているからです。
その関係とは、以下の通りでU字の関係が認められたというものです。
(Sara B Seidelmann .Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis.Lancet Public より図引用。)
炭水化物の摂取量が多い人ほど死亡率が高いことがわかります。
そのため、炭水化物の割合が多い食事バランスの人は見直すことは有効であることがわかります。
ただ注意したいのが、あくまでもU字関係であるという点です。
見ての通り、炭水化物摂取量は低すぎても死亡率が高くなっていることがわかります。
そのため、過剰な炭水化物制限はリスクがあることが示唆されているという点はおさえておきたいところです。
炭水化物を別の栄養素に置き換える際のポイント。
そして更に言うと、同論文の中で炭水化物を別の栄養素(たんぱく質・脂質)に置き換える際に動物由来のものか、植物由来のものかでも差があったことが報告されています。
動物由来のものと植物由来のものの例としては以下のようなものになります。
- 動物由来:ラム肉、牛肉、豚肉、鶏肉など。
- 植物由来:野菜、ナッツ、ピーナッツバター、全粒粉パンなど。
いかがでしょうか。
これらのことから、炭水化物は多すぎても少なすぎても良くないことが示唆されます。
そして、もし炭水化物をとりすぎている人は、その摂取制限をする際には、なるべく植物由来のもの(たんぱく質・脂質)に置き換えるのがベターであると考えられます。
3.栄養素を良い・悪いだけで決めつけるのはNG。
3大栄養素の割合について。
減量やボディメイクで運動を取り入れている方にとっても、糖質制限は注意が必要です。
減量に関してだけ言うと、3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)の割合の違いによる影響はなく、重要なのは総エネルギー摂取量であることを先ほど紹介しました。
しかし、質的な部分に焦点をあてるとこの3大栄養素の割合は非常に重要になってきます。
3大栄養素の割合はそれぞれの頭文字をとってPCFバランスと呼ばれます。
(Protein:たんぱく質、Carbohydrate:炭水化物、Fat:脂質)
このPCFバランスが重要なのは、栄養素によってそれぞれ得意とする役割があるからです。
栄養素別の特徴。
たんぱく質は身体の組織をつくったり、修復するのに必要となってきます。
それに対し、炭水化物と脂質は主にエネルギー源になるといった役割を果たしています。
ダイエット記事を読んでいると、たんぱく質は重要視される傍ら、炭水化物と脂質は悪者のように扱われることが多いような印象を受けます。
3大栄養素にはそれぞれの特徴があり、良い・悪いだけで簡単に語るわけにはいきません。
たんぱく質については今回、特別触れませんが、悪者にされがちな炭水化物と脂質について少し触れていきたいと思います。
炭水化物について。
糖質制限に関しては、この3大栄養素の内の炭水化物を制限することに他なりません。
炭水化物の制限が薦められる理由は様々ですが、まずは代表的な理由についてご紹介します。
炭水化物は他の2つと比べると、栄養学的にみると、必須ではないといった見方があります。
その理由としては、炭水化物は摂取しなくても他で代用することが可能だからです。
そういう意味では、炭水化物はエネルギー源となりますが、生命維持にとって必須かと言われれば、そうでもないという意見があります。
炭水化物のエネルギー源としての役割は、脂質が担うことも可能です。
また、不向きとは言え多少であればたんぱく質もエネルギー源として活用することができます。
また、厚労省の資料を確認しても、炭水化物が直接ある特定の健康障害の原因となるとの報告は、理論的にも疫学的にも乏しいと記載されています。
(生活習慣病の一種としての糖尿病を除く。)
そのため、炭水化物については推定平均必要量(並びに推奨量)も耐容上限量も設定しないとしています。
(参照:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書)
ただ、だからといって全く必要ないかというとそういうわけでもありません。
代わりがあるとはいえ、炭水化物は現実として主要なエネルギー源となります。
炭水化物が不足することのデメリットの一例。
また、一例をあげると、運動・トレーニングをしている方にとって炭水化物を制限しすぎることは良くない可能性があります。
というのも、低炭水化物食は筋機能の低下(筋持久力の低下助長)をもたらしたといった報告がされているからです。
(参照:J L Walberg et al .Macronutrient content of a hypoenergy diet affects nitrogen retention and muscle function in weight lifters . Int J Sports Med. 1988 )
以前にブログで減量時になるべく筋肉量をおとさないためには、減量ペースが重要であることを書きました。
(過去ブログ:短期で結果が出るダイエット法には要注意?成功のポイントは『減量を焦らない』)
それ以外にも、減量中に筋肉を維持するにはトレーニングが非常に重要となってきます。
そのため、トレーニングのパフォーマンスが落ちてしまうと、この筋肉量を維持しつつ減量するといったことが難しくなる場合があります。
このことから、過剰な炭水化物制限はそういった観点からも少し注意が必要であると指摘されています。
脂質について。
次の脂質ですが、これもついつい悪者にされてしまいがちな栄養素です。
脂質は、栄養素1gあたりのエネルギー量が糖質や炭水化物と違って大きいといった特徴があります。
各栄養素のエネルギー量は以下のようになっています。
- 糖質1gあたり4kcal。
- たんぱく質1gあたり4kcal。
- 脂質1gあたり9kcal。
見ての通り、脂質は単位重量当たりのエネルギー量が大きいのです。
そのため、同じ重さの食事量をとったとしても、エネルギー量は大きくなってしまいます。
脂質が太りやすいというのはこうしたことが関係しています。
(※正確には脂肪細胞の中には水分が20%ほど含まれているため1gあたり7.2kcalとして計算されています。
→ちなみにこれは過去ブログの3,500kcalルールと関連しています。)
(過去ブログ:ダイエットするなら知っておきたい減量の魔法公式「3,500kcalの法則」の利点と注意点。)
脂質に関しての詳細は今後も別途紹介していきたいと思いますが、今日は先ほどの炭水化物と同様にトレーニングに関する豆知識を1つご紹介します。
実は体脂肪が少ない人ほど、除脂肪体重が落ちやすくなる可能性があるということです。
除脂肪体重が落ちやすいとは、筋肉量が落ちやすいことを意味します。
そのため、筋肉量を落とさないためにはある程度の蓄えも必要であることが示唆されています。
(参照:Eric R Helms et al .A systematic review of dietary protein during caloric restriction in resistance trained lean athletes: a case for higher intakes . Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2014)
脂質についても奥が深い話なので、また取り上げていきたいと思います。
4.【おまけ】PCFバランスの決め方
適切なPCFバランスのとり方のコツ。
これらのことを踏まえると、3大栄養素といった名前の通り、全て重要となります。
それでは、このPCFバランスは実際にどのようにしてバランスをとっていくのが良いのでしょうか。
食事バランスの推奨のされ方としてよくあるパターンで、各栄養素の割合で紹介される場合と、体重1kg〇〇gといったように紹介される場合の2パターンがあります。
割合で決めるか、当事者の体重あたりで決めるか、といった違いですがそれぞれにメリット・デメリットがあります。
どちらでも悪くはないのですが、今日は1つ面白い考えとして、この2つを組み合わせるといった方法があるのでそれをご紹介したいと思います。
私はこれを初めて知った時は、面白く、非常に理にかなった方法だなと感じました。
それが以下のような方法です。
【栄養素の摂取量の決め方】
- たんぱく質:体重に対する重さで決まる。
- 炭水化物:全体のカロリー摂取量に対する割合で決める。
- 脂質:全体のカロリー摂取量に対する割合で決める。
見ての通り、
なぜ栄養素によってそのような違った方法で決めるかについては理由があります。
先ほど、たんぱく質は身体の組織をつくったり、修復する時に使われると書きました。
当然ながら、身体が大きい人は小さい人に比べて、多くのたんぱく質が必要となります。
そのため、たんぱく質は身体の大きさ(体重)に合わせて摂取量を決めることが有効であると考えられます。
身体の大きさに合わせて、栄養素の摂取量を決めるのは非常に理にかなっています。
ただ、その一方で全ての栄養素を身体の大きさだけで決めてしまうと、時にそれが問題となってしまう場合があります。
なぜなら身体の大きさが同じであっても、カロリー消費量が高い人もいれば低い人もいます。
そのため、身体の大きさだけで摂取量を決めてしまうと、以下のような問題が生じてしまいます。
- カロリー消費量が高い人→全体のカロリー消費量が少なくなりすぎる。
- カロリー消費量が低い人→全体のカロリー消費量が多くなりすぎる。
いくら体格が同じでも基礎代謝や活動量には個人差があります。
痩せたいのであれば、カロリー収支はマイナスにする必要があります。
反対に体格をよくしたい、筋肉量を増やしたいのであれば、カロリー収支をプラスにする必要があります。
もし身体の大きさといった基準だけで3大栄養素全てを決めてしまうと、カロリー収支をコントロールすることができなくなってしまうのです。
そのため、たんぱく質のような身体の組織を作る・修復する栄養素は身体の大きさにあわせて、残り2つは総カロリー摂取量に対する割合で決める方が良い場合があります。
- 総カロリー摂取量は以前ご紹介した「3500kcalルール」などを用いて決める。
- たんぱく質摂取量は身体の大きさに合わせて決める。
- ①の「3500kcalルール」で求めた総カロリー摂取量から②で決めたたんぱく質摂取量のカロリーを引く。
- 残りの総カロリー摂取量内で、適切な割合となるように脂質と炭水化物摂取量を決める。
といったものです。
これらの具体的な摂取量の細かい値は、その人の状態や目標によって異なってきます。(減量なのか増量なのかなど)
脂質と炭水化物量は割合で決めると言いましたが、その際の注意点として、最低ラインは下回らないようにします。
もしこの最低ラインを下回るようであれば、減量のペースをおとす、、、つまり、総摂取カロリーを増やすことが必要となります。
細かいことではありますが、このような注意点も踏まえつつ、計算を用いていくことで自然と適切なボディメイクのための食事方法を作り出すことができます。
5.まとめ
- 糖質制限をしていれば、いくら食べても良いというのは間違い。
- 炭水化物の摂取量は多すぎても、少なすぎても死亡率が高いといったU字の関係が認められている。
- 炭水化物を別のものに置き換えるなら植物由来のものがおすすめ。
- 3大栄養素はどれも大事。良い・悪いはない。
- PCFバランスを決める際の1つのコツとして、たんぱく質は体重に対する重さで、炭水化物・脂質は全体のカロリー摂取量の割合で決めるのがおすすめ。
- 減量時でも、最低ラインとして、脂質は体重1kgあたり0.5g、炭水化物は体重1kgあたり1gは下回らないようにする。