人の悩みは尽きないものです。
その中でも生活の大半を占めている仕事関係で悩んだり、ストレスがかかっている人も多いかもしれません。
職場でのストレスからくる悪影響といえば、精神面(メンタル)と絡めて語られることが多いと思います。
しかし、今日は少し違った視点で捉えてみたいと思います。
というのも、職場環境を整えることは、身体を整えることにもつながると考えられるからです。
言い換えると、身体の調子や痛みは何も身体機能だけでなく、職場から受ける悪影響が招いている可能性もあります。
1.”職場環境”と”腰痛”の関係について。
まずは腰痛についてです。
私は幸い、現在は腰痛はありませんが、この仕事をしていると本当に多くの腰痛を抱えた人と出会います。
また、ひと昔前では腰痛になるのは年老いた人といったイメージがありましたが、実はそうではありません。
治療を必要とするレベルの腰痛になると、確かに年齢が上がるにつれて、その割合は多くなります。
(70代女性では4割程度と他の年代と比べて増加)
年齢が若かろうと、そうでなかろうと、3~4人に1人は腰痛の自覚症状があるといった状況です。
(参照・引用文献:腰痛に関する日本全国調査.日本整形外科学会)
腰痛と言えば、姿勢が悪いせい、運動不足のせい、筋力がたりない、、、などなど色々聞くことがありますが、
世の中には、ホントに色んな研究あり、面白いものです。
まず、その中で1つ取り上げたいのが、以下のような研究です。
といったものです。
この論文はシステマティックレビューであり、一般的にエビデンスレベルが高いと位置づけられるものです。
またそれ以外に、仕事上の意思決定の自由度が低いこと、といったことも腰痛の危険因子となることが示唆されていました。
(参照:W E Hoogendoorn et al:Systematic Review of Psychosocial Factors at Work and Private Life as Risk Factors for Back Pain. Spine (Phila Pa 1976). 2000)
私の経験談になりますが、確かに仕事に満足していない状況だと、異様に身体が疲れるというか、仕事量と見合っていない調子の悪さを経験したことがあります。
疲れる、、、というと、最近も取り上げた”疲労“ですね。
2.”職場環境”と”疲労”の関係について。
ここでご紹介したいのは、労働者集団における、疲労および心理的苦痛の発症の危険因子となりうる幅広い心理社会的作業特性について調べたといった研究です。
その研究は8833人の従業員を対象にしたものですが、
男性では、仕事の要求度の高さなどが疲労のリスクを増大させ、
反対に疲労のリスク軽減となるような因子としては、男性では意思決定の自由度、女性では同僚からの社会的支援といったものでした。
(参照:U Bültmann et al:Psychosocial work characteristics as risk factors for the onset of fatigue and psychological distress: prospective results from the Maastricht Cohort Study. Psychol Med. 2002 )
また別の研究ですが、“労働災害で負傷するリスク因子”としても、先ほどの研究と少し被る部分がありました。
その研究によると、仕事上の高い要求、上司や同僚との衝突は、労働災害で負傷するリスク因子を高くすることが報告されていました。
(G M H Swaen et al.Psychosocial work characteristics as risk factors for being injured in an occupational accident . J Occup Environ Med. 2004)
3.まとめ。
こういうのを参照していくと、身体にやさしい職場環境とは
- 同僚、上司含め人間関係が良好。(支援が見込めるような関係)
- 高すぎる要求をされない。
- 自分で仕事量がコントロールできたり、意思決定ができる。
といった感じになるのかもしれませんね。
単純な活動量や身体機能だけでなく、職場環境次第でも身体的な疲れや痛みの程度が左右されるというのは、不思議なものですね。