腰痛の8割が原因不明は本当か?日本では異なる腰痛事情について解説!

私の過去ブログでも非特異的腰痛についてご紹介したことがあります。

 

腰痛の内の8割が非特異的腰痛、、、つまり原因が特定できない腰痛であるといったものでした。

 

(腰痛対策より引用)

 

 

しかし、私の個人的な印象としては、こうした腰痛の8割が非特異的腰痛であるという言葉は少し一人歩きしすぎているきらいがあるということを以前にも書かせていただきました。

 

そして、8割が原因がわからないからといって、医療機関にかかっても無駄だといった発想にはならないでいただきたい旨をお伝えしました。

 

今日はこうした内容の続きを取り上げていきたいと思います。

 

1.日本では原因不明の腰痛はそこまで多くない?

 

それは、腰痛の約8割が原因不明であるといった有名な報告がある一方で、日本の例をみてみると必ずしもそうではないのではないかといった内容です。

 

 

実は、とある日本の調査によると、腰痛患者の内、78%が診断可能で、原因不明の非特異的腰痛は22%でしかなかったと報告されています。

(参照:Hidenori Suzuki et al:Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study. PLoS One. 2016 )

 

これは、山口県内の整形外科クリニックから320名の患者を対象に、患者には自己問診票を記入させ、X線検査と神経学的・身体的検査は各病院の整形外科医が行ったものでした。

 

 

320名の腰痛患者の鑑別診断の内訳は以下のように報告されています。

 

Fig 2. Summary of the Differential Diagnosis of LBP.

Total number of LBP patients is 320.

(引用:Hidenori Suzuki et al:Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study. PLoS One. 2016)

 

日本語にすると、

  • 筋・筋膜性腰痛:56名
  • 椎間関節性腰痛:68名
  • 椎間板性腰痛:40名
  • 仙腸関節症候群:18名
  • 腰椎圧迫骨折:10名
  • 脊椎腫瘍:0名
  • 腰椎椎間板ヘルニア:22名
  • 感染症:1名
  • 腰部脊柱管狭窄症:35名
  • 強直性脊椎関節炎:0名
  • 内臓疾患:0名
  • 心理社会的要因:1名
  • その他:69名

です。

 

 

非特異的腰痛は腰痛全体の85%を占めるという有名な結果ですが、日本のこの調査に限っていえば、非特異的腰痛は22%しかいませんでした。

 

 

つまり、日本では、腰痛の8割近くが診断可能だったのです。

 

 

同調査では、日本の整形外科医による腰痛患者に対する詳細な診察、問診、画像診断により、高い割合で特異的なLBP症例を特定することが可能であることが示され、現実には日本における非特異的腰痛の割合は22%に過ぎないと結論づけています。

 

 

これはどういうことでしょうか。

 

2.日本と欧米諸国の医療システムの違い。

 

こうした一見、不可思議な理由の説明として、欧米諸国と日本における医療システムの違いが指摘されています。

 

というのも、日本では腰痛患者は通常、最初に整形外科クリニックを訪れ、整形外科医に診てもらうといった特徴があります。

 

 

え?それって普通なのでは?

 

腰が痛いのだから病院(クリニック)なら整形外科でしょ?

 

 

と思うかもしれません。

 

 

私も純日本人なので、それが当たり前だと思ってしまいます(笑)

 

しかし、こうした医療機関のフリーアクセス(患者が自分の意思で好きな医療機関を選べる)というのは、欧米諸国では比較的珍しいのです。

 

代わりに欧米の医療制度として、ホームドクター制が多くとられています。

 

ホームドクターとはかかりつけ医のことを指し、まずは地域のかかりつけ医(総合医)に診てもらって、必要に応じて大学病院や専門医を紹介してもらうという流れとなっています。

(正確にはその前に、電話などで看護師に症状を聞かれ、そこで看護師に必要と判断された場合にかかりつけ医にかかるといった流れとなることが多いようです。)

 

 

3.イギリスには病院にかかる前の門番がいる?

 

例えば、イギリスでは地域の人口に合わせて、各地域に必要な人数の家庭医(GP:general practitioner)が振り分けられています。

 

そして患者は、まずそのGPのいるクリニックに予約・受診します。

 

GPは患者が病院にかかる前の門番の役となっており、専門的な治療が必要な場合は、GPから病院へ紹介されるといったシステムとなっているようです。

(参照:康永秀生:健康の経済学 医療費を節約するために知っておきたいこと.中央経済社)

 

そのため、腰痛などがあっても日本とは違い、システム上、まずはこうしたかかりつけ医・GPにかかって、そこで必要と判断された後に初めて整形外科にかかることになっていることが考えられます。

 

こうした欧米諸国と日本における医療システムの違いが、今回紹介したような非特異的腰痛の割合の違いとなって報告されていると考えられます。

 

そのため、腰痛の内の8割以上は原因のわからない非特異的腰痛といった謳い文句にあまり振り回されるのも、日本においては少し注意が必要かと思います。

 

腰痛の中には重篤な病気が隠されている可能性もあるため、どうせ原因がわからないからといって整形外科の受診をさけることは個人的にはオススメできません。

 

リハビリ的な観点から言うと、比較的若い人に多い印象ですが、反対に、実はそこまで大した問題ではないのに、姿勢や動きの悪さから腰痛を抱え続けている人も一定数います。

 

そうした人はちょっとした気づきや修正だけでも、症状が大きく軽減したり腰痛がなくなるといった場合もあります。

 

そういう人は決まって、長年苦労して耐えてきたのは何だったのか、もっと早くこれば良かったと口をそろえて話されます。

 

せっかく日本に生まれ、過ごしていることですし、こうした日本の医療制度の恩恵を受けるのも良いと個人的には思います。

(日本の医療制度は効率が悪いといった批判が多くあるのも事実ですが)

 

医療制度の違いから、こうした調査・研究報告の違いがでてくるというのも何とも奥深いですね。

 

なかなかこうした背景の違いから生じる報告結果の違いというのは盲点となりやすいため気を付けたいところですね。

 

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