腰痛、、、抱えている人は多いと思います。
そんな腰痛のある人が付けているコルセット(腰ベルト)。
腰痛のない人でも、つけている人を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
↓
ということに関して今日はご紹介したいと思います。
1.実は一言では説明できない腰ベルト(コルセット)の効果とは?
簡単そうに思えるこの疑問、、、実は答えるとなると正直なところ、かなり難しい問題なのです^^;
というのも、腰ベルトに関しては科学的根拠を調べても、有効という意見もあれば有効でないといった意見もあり、見解が一致しないのです。
まず私の過去ブログでもご紹介した、ヨーロッパの腰痛予防ガイドラインを参照すると、実は腰痛ベルトは推奨されないとしています。(レベルA)
(参照:European Guidelines for Prevention in Low Back Painより)
また別の論文を参照しても、腰痛予防に関しては、何もしない場合やトレーニングを行った場合と比較しても効果的ではないといったことが報告されています。
同様に、腰痛治療に関しても何もしない場合やその他の介入と比べても効果的であるかというと不明であるといった結論をしています。
(参照:I C D van Duijvenbode et al:Lumbar supports for prevention and treatment of low back pain. Cochrane Database Syst Rev 2008)
これらだけを参照すると、腰ベルトは意味がないのではないかといった結論になってしまいそうですね、、、。
まだ話は終わらず、続きます。
2.腰ベルトをしていると筋力が落ちるってホント?
反対に、腰ベルトに関しのデメリット面として、よく聞くものとして
腰ベルトを長期間つけていると筋力がおちてしまうため良くない
といった意見があります。
実はこのコルセットによる筋力弱化というデメリット面に関しては、現時点で言い切るには少し早計であると私は考えています。
というのも、慢性腰痛を有する40名の被験者を対象に、無作為にコルセットを6ヶ月着用した群(CW)とコルセット非着用群(NW)の2群に分け調査した研究を参照すると、
(参照:NAOTO SATO et al:Effects of long-term corset wearing on chronic low back pain.Fukushima J. Med. Sci.Vol. 58, No. 1, 2012)
Fig. 4. Time course of %MPF at L2
The averages of %MPF at L2 are not different significantly over the 6 months in both the CW and NW groups.
Fig. 5. Time course of %MPF at L5.
The averages of %MPF at L5 are not different significantly over the 6 months in both the CW and NW groups.
(引用:NAOTO SATO et al:Effects of long-term corset wearing on chronic low back pain.Fukushima J. Med. Sci.Vol. 58, No. 1, 2012 )
半年もの間、コルセットを着用していると、体幹などの筋力は落ちてしまいそうな印象を持ちますが、この論文を参照すると、そうとも言い切れないことが考えられます。
また興味深いことに、同研究によると、慢性腰痛に対するコルセット治療は、腰痛を改善し、短期間の筋持久力を向上させたといった結果報告がされています。
ただ注意点として、腰ベルトをして筋持久力が向上したのは着用してから最初の1か月間であり、それ以上の期間ではそういった効果はなかったようです。
Fig. 3.Time course of the holding time
The position -holding time of the CW group is significantly prolonged at 1 month compared with baseline(p<0.05) and remains similar at 3 and 6 months. In the NW group, no significant change is observed in the position -holding time over the 6 months.
(引用:NAOTO SATO et al:Effects of long-term corset wearing on chronic low back pain.Fukushima J. Med. Sci.Vol. 58, No. 1, 2012 )
また別の論文を参照しても、腰痛の有無にかかわらず、腰ベルトを短期間(2週間)使用した場合の結果として、腰部機能は悪化しないといった結果報告がされています。
(参照:Gregory Neil Kawchuk et al:A non-randomized clinical trial to assess the impact of nonrigid, inelastic corsets on spine function in low back pain participants and asymptomatic controls. Spine J. 2015)
こういった結果から、世間で言われているほど、腰ベルト着用による筋力低下などのデメリット面に関しては短期間では起きるといった心配はしなくても良いと言えます。
3.腰ベルトの効果が一致しない理由とは?
しかし、何故、腰ベルトの効果に関しては、ここまで見解が一致しないのでしょうか。
ここから先は私の推測でしかありませんが、
腰の痛みというのは、本当に多種多様な原因で引き起こされます。
椎間関節、椎間板にかかるストレスもあれば、ヘルニアや脊柱管狭窄症のように神経を圧迫することによるもの(厳密には下肢症状)、仙腸関節障害や股関節機能の低下からくるもの、心理的な影響からくるものなどなど、、、。
過去ブログであげた図を再度引用すると、以下のようなものが腰痛の原因になると考えられています。
↓
(引用:腰痛診療ガイドライン2019年)
加えて、これらの中からきれいに1つに原因が特定できるわけでもなく、これらの中から複数合併しているといったケースも多分にあり得ます。
そのような多種多様な腰痛を一括りにしてしまうには無理があります。
しかし、反対にこうした腰痛の中には、私の臨床経験上からも腰ベルトが有効となるものもあります。
ただもどかしい話、それであっても腰ベルトをしてすぐに解決とも言えないのです。
不思議な話かもしれませんが、一見シンプルな腰ベルトですが、案外この腰ベルトを巻く位置だったり、巻き方ひとつの違いでもかなり効果が異なってくる場合があるといった印象を私は持っています。
そのため、私は適応となりそうな患者さんなどに聞かれた際であっても、まずは実際に持ってきてもらったり、持っていない人には試しのものをお渡しし、目の前でいくつかのパターンを評価した上で、試してもらいます。
このパターンに関しては、文字ではなかなか細かく伝えにくい部分ではありますが、また取り上げていきたいと思います。
何はともあれ、こういった複雑な事情が腰ベルトの効果の差となっており、見解が一致できないこと原因の1つとなってしまっているのではないかと考えられます。
4.腰ベルトに関しての主観アドバイス。
もしあなたが腰痛を抱えており、腰ベルトを検討しているなら、ひとまず試してみるのも全然ありだと私は思います。
今回ご紹介したように、筋力が弱くなるといったデメリットはすぐにでてくる可能性は低いので、腰ベルトに関しては試してみることによるリスクはそれほど高くありません。
それでも心配な場合は、仕事中だけなど、腰の負担が強くかかってそうな場面だけ活用するといった使い方であれば尚、悪いリスクを負う可能性は低いと考えられます。
ただ、理想は、専門家に相談した上で、指導をもらうのが確実だと言えます。
そしてあまり効果を感じられない場合は、その主観に従って、無理して着用し続ける必要性も低いと言えます。
最後に大事なのは、あくまでも腰ベルトはサポートとして用いるものなので、根本治療になることは期待できないということです。
あまり長く続くような腰痛、もしくは痛みの強い腰痛であれば、まずは整形外科に受診することをオススメします。
人によっては、腰痛程度(?)で整形外科を受診するのは気が引けるかもしれません。
しかし、良い整形外科であれば、腰痛の程度に関わらずしっかりとした対応をしてもらえると思います。
(大した腰痛でないため全然向き合ってくれなかったといった声を聞くこともありますが、、、その場合は腹が立ってしまうかもしれませんが、きっぱり忘れてしまいましょう^^;)
仮に、自分が期待したような対応がなかったとしても、医師にかかることで重篤な疾患を見落とすということは避けることができるので、自身の身体のリスク管理として非常に重要になると私は思います。
そうした見落としがないことを医療機関でしっかり確認した上で、そこでそれ以上対応してもらえないようなら民間療法に頼ってみるというのもありだと思います。
(場合によってはセカンドオピニオンも)