ストレッチの誤解を解く!ストレッチのメリットとデメリットを解説!

今日はストレッチのメリットについてご紹介します。

 

1.「ストレッチは良くない」といった内容についての注意点。

 

ストレッチは筋力低下を招くといった記事も時折見かけ、ストレッチは良くないといった内容を目にすることがあります。

 

しかし、ストレッチの良し悪しは、その行うストレッチの手法や、使う場面によって異なります。

 

そのため、十把ひとからげにストレッチは絶対的に良いというわけでも、反対に絶対に悪いといったような二者択一には必ずしもなりません。

 

ストレッチが良くないといった内容で紹介される記事の多くは、私の過去ブログでも取り上げた、持続的な伸張によるストレッチの急性効果に関して述べられているものがほとんどであるといった印象を持っています。

 

これは以前に軽く説明しましたが、持続的に筋肉を伸長するようなストレッチ(スタティック・ストレッチ)は確かに、一時的に身体機能のパフォーマンスを低下させるといった一面を持っています。

 

そのため、運動の直前競技参加の直前といった場面では適していないというのが現在の通説です。

 

しかし、たまにこうした内容を一部誇張したり、拡大解釈したりすることで、ストレッチ自体が良くないといった結論で書かれている内容の記事を目にすることがあります。

 

書いている本人はそういった意図はないのかもしれませんが、読者にインパクトを与えるためかはわかりませんが、これでは人によっては誤解が生じる可能性があります。

 

こうした記事には安易に釣られないようにするのが無難であると私は考えています。

 

あくまでも運動“前”のスタティック・ストレッチング単体の実施が適していないのであって、それ以外の場面、もしくは短期や長期といった時間軸の違いでも、その良し悪しの結論は変わってきます。

 

前置が長くなりましたが、今日はそんな誤解を解くのと同時に、ストレッチに関しての意外なメリットについてご紹介したいと思います。

 

2.ストレッチのメリットとは?

 

ストレッチと聞くと、身体の柔軟性を向上させるといったことが1番イメージしやすいと思います。

 

しかし、実はストレッチは老化による筋力低下、筋肉量減少の予防に関しても有効である可能性が示唆されています。

 

スタティック・ストレッチの急性効果である筋力低下(パフォーマンス低下)が喧伝されていた時期があったので、誤解している方もいるかもしれません。

 

場合によってはストレッチをすると筋力が落ちるから良くないといった認識を持っている人もいるかもしれません。

 

過去に私が関わったリハビリ患者さんの中にも、昔見たテレビの報道でそういった認識を持った方がおり、そこからストレッチをするのをやめたといった方がおられました^^;

 

そのTVの報道自体は過去のものであり、どういったものだったのかはわかりませんが、そういった内容で良くあるものとしては、先ほどご紹介したようにスタティック・ストレッチによる急性効果についてであることが予想されます。

 

そもそも、ストレッチはこの一部の急性効果を除いては、そういったイメージとは反対で、むしろ筋力低下や筋肉量減少の予防につながると考えられています。

 

3.サルコペニアとは?

 

あなたはサルコペニアという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 

サルコペニアとは筋肉の量が減少していく老化現象のことであり、25~30歳頃から進行が始まり生涯を通して進行すると言われています。

(参照:e-ヘルスネット サルコペニア)

 

4.ストレッチはサルコペニアに対して有効?

 

サルコペニアは筋肉量が減少することなので、筋肉をつけるのに適しているレジスタンストレーニングなどが有効な治療法の1つだと考えられています。

(参照:Nan Chen et al:Effects of resistance training in healthy older people with sarcopenia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.Eur Rev Aging Phys Act. 2021)

 

 

筋肉が少なくなるのだから、そのために筋トレをするといったことは非常にイメージしやすいと思います。

 

実際にサルコペニアの診療ガイドラインでも、その予防のために”運動”が強く推奨されています。

(参照:サルコペニア診療ガイドライン)

 

ただ、運動は何も筋トレだけでなく、ストレッチもサルコペニアに対して有効である可能性が示唆されています。

 

 

柔軟性のレベル別に、低筋肉量、低筋力、サルコペニアの有病率について調査した研究があります。

 

その研究によると、柔軟性が高い者はそうでない者に比べて、低筋肉量、低筋力、サルコペニアの有病率が低いといった特徴があったと報告されています。

 

Figure 2.
Prevalence of low muscle mass, low muscle strength and sarcopenia in participants with different categories of flexibility at baseline (n = 9453). P values were adjusted using the Benjamini-Hochberg method.

(引用:Peng Gao et al:Cross-sectional and longitudinal associations between body flexibility and sarcopenia.J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2023)

 

また同論文の縦断的解析によると、4年間で柔軟性が1cm増加するごとに、低筋肉量、低筋力およびサルコペニアの発生のリスクの低下が認められたと報告されています。

 

こういったことから、柔軟性を向上させるような運動はサルコペニアの予防に有用である可能性があると結論付けています。

 

(参照:Peng Gao et al:Cross-sectional and longitudinal associations between body flexibility and sarcopenia.J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2023)

 

急性期病院に入院した65歳以上の高齢者を対象にした研究によると、サルコペニアの人はそうでない人に比べて、退院後3か月以内の死亡率が高かったといった報告もあるため、決して軽視できないものです。

(参照:Anna Paola Cerri et al : Sarcopenia and malnutrition in acutely ill hospitalized elderly:prevalence and outcomes.J Clin Densitom. 2015)

 

5.【補足】サルコペニア予防の運動の第一はレジスタンストレーニングである。

 

最後に補足として、今回はストレッチがサルコペニアの予防につながる可能性についてご紹介しましたが、サルコペニアの治療に関してガイドラインで推奨されているのは主に、レジスタンストレーニングを含む運動です。

 

高齢者であれば、週3回のそういった運動などが、筋肉量、筋力、機能の改善を通じて大きなプラスの効果をもたらすと考えられています。

(参照:Phu S, Boersma D, Duque G. Exercise and sarcopenia. J Clin Densitom 2015)

 

私は一時、筋力トレーニングを軽視していた時期がありましたが、それは明確に過ちであったと今は考えています。

 

筋力トレーニングは非常に重要です。

加齢に伴いその重要性は増してきますが、若い人でも決して軽視できません。

 

しかし、もし過去の私と違って反対に筋力トレーニングを重視しすぎるがあまり、ストレッチは筋力を低下させるといった一辺倒な情報だけを鵜呑みにし、ストレッチを怠っている方がいれば、それはそれで注意が必要だと思っています。

 

今日は、そんなストレッチの誤解を解くための豆知識のご紹介でした。

 

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