最近ではすっかり馴染み(?)ある言葉になっている”メタボリックシンドローム”、通称”メタボ”。
今回のブログでは 「メタボ改善のための運動は朝にするのが良いのか、夕方にすると良いのか」についてご紹介します。

1.メタボリックシンドロームとは。
メタボに該当する人とは?
肥満症診療ガイドラインを参照すると、メタボリックシンドロームの診断には内臓脂肪の蓄積が必須項目となっています。
それに加えて、高血圧・高血糖・脂質異常の3つのうち、2つ以上があてはまる場合がメタボとなります。
メタボに該当する人は心血管疾患を発症するリスクが高いため、その予防と治療は重要です。
当然ながらその予防対策は早いに越したことはありません。
メタボ治療の一例。

減量することにより内臓脂肪は減少することが知られています。
また、内臓脂肪は皮下脂肪と比べて減少しやすいと言われています。
今日はそんなメタボに関する面白い論文を見つけたのでご紹介したいと思います。
それは
「朝と午後、運動するならどっちが良いの?」
といった疑問に応えてくれる論文です。
同じ運動内容でも朝と午後で効果が変わる?
2024年に発表されたRCTで、同じ運動であったとしても朝と午後に行うのでは効果が異なるといった研究結果が報告されました。
(参照:Felix Morales-Palomo et al.Efficacy of morning versus afternoon aerobic exercise training on reducing metabolic syndrome components: A randomized controlled trial.J Physiol. 2024 Dec;602(23):6463-6477.doi: 10.1113/JP285366. Epub 2023 Nov 28. )
興味深い話です。
「なんで同じ運動であっても取り入れる時間帯が違うだけで効果が変わるの?」って感じますが、その疑問についての説明も後述します。
2.朝と午後の運動効果の違いについて。
研究紹介。
まずは参照論文の研究内容についてご紹介します。
研究の概要は以下の通りです。
- 139人のボランティアが参加。
女性49人、男性90人。平均BMI30.6。
※メタボの基準を満たした人たち。 - ランダムに3つのグループに分類。
①朝(8時~9時)に運動するグループ
②夕方(16時~18時の間)に運動するグループ
③コントロールグループ(運動をしない) - 運動グループは16週間の運動を実施。
監督下での有酸素運動(3回/週)。
エアロバイクでの高強度インターバルトレーニング。 - 食事アドバイスは以下の通り。
食事制限なし。
炭⽔化物 (総エネルギーの45〜65%)。
タンパク質 (〃 10〜35%)。
脂肪 (〃 20〜35%)。
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸は制限。
※この論文内でのメタボの基準は以下の5つの内、3つ以上該当する人。
・ウエストが男性は94cm以上。女性は80 cm以上。
・⾼⾎圧である(収縮期⾎圧が130mmHgを超えている、および/または拡張期血圧が85 mmHgを超えている。)
・空腹時⾎糖値が100mg/dL以上。
・トリグリセリドが150mg/dL以上。
・HDLが男性は40mg/dLより低い。女性は50mg/dLより低い。
研究結果。
研究結果は以下の通りです。
- 運動グループは運動をしないグループと比較して心肺機能、代謝機能、体組成の改善を認めた。
- 朝に運動したグループの方が、夕方に運動したグループよりも収縮期血圧、インスリン感受性の改善がやや高かった。
要約すると、運動しない人と比べて運動をする人の方が共通して心肺機能、代謝機能、体組成の改善を認めました。
ただし、血圧や血糖値を下げることを目的にするなら、同じ運動でも朝に運動する方がより高い効果が期待できることが示唆されました。
3.運動の原則。
FIITの原則。
過去に私のブログでも取り上げましたが、運動の負荷量を決める際に用いる代表例として”FIIT”というものがあります。
↑過去ブログ参照。
おさらいすると、FIITは運動を処方する際の基準となるものであり、それぞれの頭文字をとって名付けられた名称です。
- F→Frequency:頻度
- I→Intensity:強度
- T→Time:時間
- T→Type:種類
目的に合わせてこれらの各項目をカスタマイズし、最適と考えられる運動を提供する際に役立ちます。
しかし、そういった運動の原則に則って決めた同じ運動を行ったとしても、その効果に差が出るということは実は珍しいことではありません。
というのも運動の効果は、遺伝や食事をとるタイミング、睡眠量など様々な要因によっても左右されることがわかっているからです。

その一方で、運動はそういった乱れた概日リズムを整えるきっかけとなる可能性があるとされています。
今回の朝の運動の方が効果が高かったといった結果は、そういった仮説を後押しするものになると考えられますね。
4.今回の紹介論文に関しての補足。
最後に今回参照した論文についての”長所”と”短所”についても軽く触れておきます。
情報源に関しての長所。
①RCTを用いた研究である。
今回、参照した論文の何よりの長所としてはRCTであるという点です。

”因果関係”とは原因と結果の関係があるということです。
似た言葉の”相関関係”は、2つの事柄に関係があることはわかってもどちらが原因で、どちらが結果なのかまではわかりません。
↑過去ブログ参照。
また因果関係を導く際によくある過ちとして、
〇〇をした→△△が改善した→だから〇〇は効果がある。
といったものはサンタ論法と呼ばれ、典型的な非科学的な考えです。
よくある単発のビフォーアフターなどはそれに該当します。
残念ながら因果関係というものは、そんなに簡単に検証できるものではありません。
今回、参照した論文はそうした”因果関係の検証”という難しい問題に対して、現時点で最良とされている手法であるRCTを用いた論文になります。
②サンプル数の多い研究である。
それに加えて、同様の他の研究と比べサンプル数が多いということが長所として報告されています。
詳細は割愛しますが、一般的にサンプル数が多いということは、結果の信頼性が高いことを意味します。
情報源に関しての注意点。
反対に今回の情報源の注意点についてもご紹介します。
①生活のリズムの好みについては未評価。
それは、この研究には参加者の生活リズムの好みを評価していないという点です。
良し悪しは別にして、人の生活リズムは朝型タイプの人や夜型タイプの人、不規則な人など様々です。
そういった生活リズムの好みについては今回の研究では評価されていないといったデメリットがあります。
②参加者のモチベーションが高かった。
そしてもう一点、同論文内のLimitationsで興味をひかれたのは、今回の参加者のモチベーションについての記述です。
今回の研究に参加されたメタボリックシンドロームの参加者は16週間という期間の運動を完了した人たちです。
経験ある人も多いかもしれませんが、16週間といった期間の運動を継続するということは普通にすごいことです。
このことからも、今回の参加者はモチベーションの高い人たちの集まりであることがうかがわれます。
同論文内でもモチベーションの低い人たちでは、もしかしたら同様の結果は得られないかもしれないといった可能性について触れてました。
これに関しては非常に興味深い視点でした。
というのもリハビリの分野でも、同じリハビリであったとしてもモチベーションの違いによって機能回復の効果に差があったといった論文が存在するからです。
そのため、メタボリックシンドロームであったとしてもその可能性については確かに考えられるなと感じました。
5.まとめ
いかかでしたか。
今回は【メタボの改善として運動を取り入れるには朝と午後の運動のどちらが良いか】について、最新の論文を基にご紹介させていただきました。
私自身は運動をするならもっぱら朝派です。
夕方や夜になるとこの上なくだらけてしまう性格です。
そういう意味では、収縮期血圧やインスリン感受性の改善という点については朝の運動の方が良い可能性が示唆されたのは有難い話です。
ただ、運動しないよりはした方がメリットが大きいのは明らかなので、時間にこだわらず、まずは継続した運動を行えるようになることがスタートとしては大事だと感じています。
また、こうなると朝よりも夕方や夜に運動をする場合のメリット部分とかも知りたいところですね。
その点についてはまたご紹介したいと思います。