足首の捻挫リスクファクターとは?その重要性と対処法についてご紹介。

 

皆さんは足首の捻挫を経験したことはあるでしょうか?

 

骨折等と比べて捻挫は比較的軽く感じることもあるかもしれませんが、捻挫も立派な外傷の1つです。

 

捻挫はスポーツで頻繁に起こる傷害であると同時に、厄介な特徴として一度起こすと非常に再発を起こしやすい傷害であることでも知られています。

(参照:Pau Golanó et al. Anatomy of the ankle ligaments: a pictorial essay.Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2010 May.)

 

今日はそんな少し身近な傷害である捻挫の危険性を高める要因についてご紹介します。

1.足首の捻挫について。

 

まずは足首の捻挫の特徴について少しご紹介します。

 

足首の不安定性は2つに分かれる。

 

捻挫は足首の不安定性と密接に関連していますが、そんな足首の不安定性は大きく以下の2つに大別されます。

 

1つは病的弛緩や退行性変化などの器質的な問題である機械的不安定性( Mechanical instability)

もう1つは固有感覚や筋肉のコントロール不全によって引きおこされる機能的不安定性(Functional instability)に大別されます。

 

このうち後者の機能的不安定性に対してはリハビリのような機能訓練が有効であると言われています。

 

捻挫は痛みがなくなれば良いというわけではない。

 

また過去に足首を捻挫した人にバランス障害を認めることがありますが、その原因の1つとして靭帯には感覚のセンサー(メカノレセプター)が豊富にあるためそれが損傷した結果、固有感覚が障害され生じると考えられています。

(参照:Pau Golanó et al. Anatomy of the ankle ligaments: a pictorial essay.Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2010 May.)

 

そのため捻挫の予防は勿論のことですが、過去に捻挫したことがある人も痛みが治まればそれで大丈夫というわけではなく、痛みが治まっても受傷前と比べて足首の機能が低下している可能性が高いので注意が必要です。

 

そんな“足首の捻挫に関わるリスク因子”についてご紹介します。

 

2.足首の捻挫リスクを高める要因とは?

 

まずは観察研究による報告についてご紹介します。

 

捻挫をしやすい人の特徴。

 

男性241名の男性を1~3年間追跡した前向き研究によると、以下に当てはまる人は捻挫のリスクが高いことが報告されています。

 

  • 足首を反る筋力が弱い。
  • 足首を反る可動域が狭い。
  • 心肺持久力が低い。
  • バランスが悪い。
  • ランニング速度が遅い。

(参照:Tine Marieke Willems et al. Intrinsic risk factors for inversion ankle sprains in male subjects: a prospective study.Am J Sports Med. 2005 Mar.)

 

足首固有の問題

 

上2つはまさに足首固有の問題であると言えます。

”足首を反る動きが固い人”、それと“反る筋力が弱い人”は捻挫を起こしやすいことになります。

実は機能解剖学的に捉えてもこれは合点のいく結果でもあります。

 

というのも

足首の関節は構造上、反っている時に関節がしっかりとはまることで安定しており、
反対に下に倒している時は関節がゆるい状態、いわゆる不安定になる作りとなっています。

 

そのため、足首を反る動きが固くていきにくい”というのは、言い換えると足首の関節を安定した位置に持っていきにくい状態であると言えます。

 

パフォーマンス低下による問題。

 

またその他の3つ(心肺持久力が低い、バランスが悪い、ランニング速度が遅い)は総合的なパフォーマンスの低下と捉えても良いかもしれません。

勿論、これらも足首固有の問題と結びつけることも可能ではありますが、個人的には身体機能全般のパフォーマンス低下からくる捻挫リスクとして少し分けて捉えた方がわかりやすいと思っています。

実はこうした総合的な身体パフォーマンスの低下が(足首の捻挫だけに関わらず)様々な傷害リスクを高めることは有名です。

 

このことはまた別で取り上げたいと思いますが、参考までに過去の私のブログ記事で関連あるものを下に載せておきます↓

筋肉痛って何?身体の疲労度の簡易チェック方法とは?
見かけの筋力低下とは?持ち前の筋肉を発揮できない身体について。

 

またこれら以外にも同論文で

  • 協調性が低い。
  • 前脛骨筋と腓腹筋の反応が速い。

といったことも捻挫リスクを高める因子であることが報告されています。

これらについては少し専門的になるので、足の機能解剖などを取り上げる際にご紹介したいと思います。

 

おさらいをすると足首の捻挫リスクを高めるものとして

  • 足首を反る筋力が弱い。
  • 足首を反る可動域が狭い。
  • 心肺持久力が低い。
  • バランスが悪い。
  • ランニング速度が遅い。
  • 協調性が低い。
  • 前脛骨筋と腓腹筋の反応が速い。

といった因子が関係していることが示唆されています。

 

ただこうした小難しい内容だけでなく

もっとすぐにわかるような捻挫リスクのチェック方法ってないの?

って思ってしまいますよね。

 

難しい質問ではあるのですが実はそれがないこともないので、今日は最後にそれをご紹介します。

 

ただ補足としてそれは論文の中でも記載されているのですが、当然ながらそれだけで全てを予測できるわけではありません。

ただ1つのスクリーニングツール(ふるい分け)として使うのはありではないかといったニュアンスで書かれているのでそれをご紹介します。

 

3.足首の捻挫リスクをチェックする方法。

 

片足立ちで捻挫リスクをチェック。

 

それは非常にシンプルなのもので、何かというと

“片足立ち”です。

 

高校バスケットボール選手を対象にした研究で、足首を損傷するリスク因子を分析した結果、プレイ前に実施した片足立ちテスト時の前後・左右方向の姿勢動揺の大きさがその後の足関節損傷と有意に相関していたことが報告されています。

(参照:Hsing-Kuo Wang et al. Risk-factor analysis of high school basketball-player ankle injuries: a prospective controlled cohort study evaluating postural sway, ankle strength, and flexibility.Arch Phys Med Rehabil. 2006 Jun.)

 

そのため片足立ち時のふらつきが大きく、キープが難しい人は足首を捻挫するリスクが高いことが示唆されています。

手軽にできるスクリーニングなので気になる方はこの方法で少しチェックしてみるのも良いと思います^^

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