デフレの代償とは!?デフレが引き起こす社会的悲劇について

 経済におけるインフレーション(インフレ)とデフレーション(デフレ)という言葉はよく聞くと思います。物価が上がることをインフレ、反対に物価が下がることをデフレと言いますが、何故デフレがそんなに問題なのかを簡単に書いていきたいと思います。

1.デフレは物が安く買えて良いのでは?

恥ずかしながら私は10代までは上の見出し通りに考えていました(笑)。

自分が買い物をするなら安い方がお得なのでデフレの方がありがたいと捉えていました。

まして私が学生の時は円高であり、海外旅行に行くにもお得になるので円高+デフレは有難いのでは?と本気で思っていました。

今思うと本当にとんでもないなと感じますがそんなデフレについて少し掘り下げていきます。
 

まずはデフレの定義を確認すると、IMF(国際通貨基金)ではデフレを

「少なくとも2年間の継続的な物価の下落」

と定義しています。

デフレとは物価の下落であるため事実、この見出しのように物が安く買えるためこれはデフレの1つのメリットになるのかもしれません。

しかし、それはあくまでも消費者目線だけで捉えた場合であり、違った目線で捉えれば全く話が変わってきます。

デフレという現象はその消費者のメリットを埋めて余りあるほどのデメリットが存在します。

またそのほぼ唯一と言っても良い消費者にとってのメリットでさえめぐるに巡って結局は消費者のもとへデメリットとして返ってきます。

なので基本的にはデフレは百害あって一利なしと言っても良いのではと私は思っています。

2.デフレの最大の問題は?

デフレの弊害をあげれば経済成長率(名目、実質)の低下、借金の負担増、新卒の就職難、失業者・非正規社員の増加、労働環境の劣悪化、出生率の低下と枚挙にいとまがありませんが、その中でも

強調して1つ挙げるなら、

失業率の増加が大きな問題点としてあげられます。

デフレではモノの値段が下がりますが、モノの値段だけが下がって給料は下がらないといったうまい話は基本的にありえません。

賃金(名目)には下方硬直性という特徴があるのですぐに給料が下がることはないかもしれません。

しかしモノの価格が下がるということは売り手の立場から捉えると、それはそのまま売り上げの低下(利益減)につながり業績は悪化することが予想されます。

そして業績が悪化すれば当然企業はコストを抑える必要が出てきます。

例えば従業員の給料を減らす、もしくは解雇、新規職員募集の中止などといった人件費削減もその1つの生き残り戦略となります。
 

そしてその影響を受け失業した人や給料が減らされた人たちは当然消費を減らすため、そうなるとモノはますます売れなくなります。

もっと安い値段でなければ誰もモノを買ってくれなくなるため売り手はモノの価格を減らし、、、

といった具合に物価は減少していきます。

このような悪循環をデフレスパイラルと言います。この悪循環は失業者を増やしていきます。

以前にブログで少し取り上げましたが、失業者が増えるとそれに伴い自殺者も増え人々の命を奪っていくことに繋がります。

なので言い換えればデフレの放置は人の命がなくなることを放置することになり得、非常に深刻な問題です。

デフレの問題は様々ですが、やはり私達人間にとって1番の不幸は命を失うことであると思うので、生命の危機と関係のある失業率の増加をデフレの1番の問題としてあげさせてもらいました。
 

以前にブログで慢性疼痛は幸福度を大きく棄損する要因になることを紹介しましたが、大阪大学社会経済研究所のペーパーによると実はこの

“失業”という現象も大きく幸福度を棄損します。

(なぜあなたは不幸なのか.筒井義郎,大竹文雄,池田新介 https://www.iser.osaka-u.ac.jp/rcbe/gyoseki/fukou.pdf 参照)
 

興味深いのがこのペーパーによると所得を調整したとしても失業者はなおも不幸であるため、失業者の幸福度を改善するには失業給付ではなく雇用を確保することが必要であるとしています。

職を失い収入がなくなることは勿論大変なことですが、人としての幸福ということを捉えた際には単純に収入の問題だけではなく雇用の確保(失業率の低下)は重要であることが示唆されます。

3.失業率を減らすためのヒントとは?

自殺者を減らすためにも失業率を減らすことが必要となりますが、そのヒントは経済学にあるのでご紹介します。

経済学では有名な「フィリップス曲線」というものがあります。

これは

物価と失業率には負の相関がある

ことを示すものです。

負の相関ということは物価が下がれば失業率が上がり、反対に物価が上がれば失業率が下がる、ということです。

つまり大雑把に言ってしまえばデフレでは失業者は増え、インフレでは失業者は減ります。

これはいわゆる経験則ではありますが事実このような関係が成り立っています。
 

しかし、だからといって闇雲にインフレ率を上げていけば失業率がゼロになるのかといえばそういうわけではありません。

失業率の低下には限度がありこれを「インフレ非加速的失業率(NAIRU)」と言います。

名前の通りインフレを加速しない失業率であり、インフレがどれだけ進んでも失業者は一定割合存在することを指します。

経済政策でインフレ目標が掲げられますが、その目標値こそがこの失業率が最大限低下する時のインフレ率の推計値と言われています。

そのためこのインフレ目標を達成することが失業率の低下、及びそれに付随する自殺者の減少につながります。
 

また、日本はもう成熟(?)しているから経済成長は不可能、もしくは経済成長にこだわらなくても良いといった論調も時々見かけますがこれは誤りだと考えています。

というのもこの有名なフィリップス曲線と似たような関係で経済成長率と失業率にも負の相関関係が存在するからです。

これは「オークンの法則」と言われ、経済成長率が上がると失業率は下がるといった負の相関を示す法則です。

今回は詳細は省略しますが、デフレというものは経済成長率を低下させる作用を持ちます。

つまりデフレは物価の減少と経済成長率の低下といった作用を持っており、その結果として失業者の増加(それによる自殺者の増加)という負の現象をもたらします。

これだけに注目してもいかにデフレの弊害の大きさがわかります。
 

デフレの弊害についてはその他も少しずつ書いていきたいと思いますが、それに合わせて今回で物価や経済成長率と失業率の関係を書いたので、では実際にどういった方法でそれらを改善していくことが求められているのかといった問題なども今後メモしていきたいと思います。

4.まとめ

  • 少なくとも2年間の継続的な物価の下落のことをデフレという。
  • デフレの最大の問題点は失業者の増加。それに伴う幸福度の低下及び自殺者の増加。
  • 失業率を減らすヒントは物価の上昇(インフレ)と経済成長。

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