日本人の肥満者の割合は、厚労省の資料によると男性で33.0%、女性で22.3%のようです。
(厚生労働省、令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf参照)
自粛生活を強いられる昨今、運動不足で少し太ってきたという声が私の周りでもちらほら聞かれます。
特に肥満でない方にとっても、ダイエットに挑戦したことがある人は多いかもしれません。
そしてそのダイエットをする際にもポイントになるものとして基礎代謝があります。
基礎代謝という言葉自体は普段でも使用されることがあるくらいに馴染みある言葉だと思います。
今日はダイエットに絡めて、そんな基礎代謝と筋肉の関係について触れていきたいと思います。
その前に一つお断りを入れときたいことがあります。
まずは代謝にはついてですが、代謝には基礎代謝だけに限らず、活動時の代謝、睡眠時の代謝、安静時の代謝といった感じで厳密には異なるいくつかの似たような種類が存在します。
その中でも特に似たもので基礎代謝量(Basal metabolic rate:BMR)と安静時基礎代謝量(Resting energy expenditure:REE)があります。
簡単に説明すると【基礎代謝量(BMR)】は、心身共に安静にしている状態でのエネルギー代謝量、いわゆる生命維持だけに必要なエネルギーのことを指し、
それに対して【安静時基礎代謝量(REE)】はBMRよりも測定条件を緩くして測定したもので、文献によってはBMRの10~20%増しと記載されている場合もあります。
しかし、この両者は日本に限らず諸外国でもやや曖昧に使われることが多いようです。
今回は代謝と筋肉の関係に触れる際に、これらの中でも安静時基礎代謝量(REE)について絡めて紹介していきます。
ただ、イメージとしては普段私たちが日常使っている基礎代謝のイメージでほぼ問題ないのでご了承ください。
目次
1.運動は実はカロリーをあまり消費しない?
まず減量するためには当然ながら、食事と運動の見直しが必須になってきます。
今日はその中でも、ひとまず運動側に焦点を当てていきます。
ダイエットのために運動をする。
ごく当たり前のようですが、ここで1つ注意があります。
聞いたことがある人もいるかもしれませんが、身体活動の強度を測るもので【METs(メッツ)】という単位が存在します。 そしてこの“METsと消費カロリーの関係”をわかりやすくまとめた表がタニタのホームページにあるので、それを参照してみます。 例えば、全身運動の代表格のような存在の水泳について確認してみます。 【体重50kgの人が1時間泳ぎ続けた】として、その消費カロリーは528kcal(平泳ぎ)となります。 運動習慣のない人からすれば1時間泳ぎ続けるとなると、相当大変だと思いますが、それでもチョコチップのメロンパン1個分くらいの消費にしかなりません(泣)。 それ以外でも見てみると、【体重50kgの人が1時間ジョギングした場合】の消費カロリーはどうでしょうか。 早見表を確認すると、369kcalです。 1時間程度のジョギングならメロンパン1個すら許されないかもしれませんね(泣)。 興味ある方は、下記のリンクよりタニタの早見表を参照していただければと思いますが、これだけでもいかに運動でカロリーを消費するのが大変かがわかります。 (消費カロリー早見表:https://www.tanita.co.jp/content/calorism/table/index.html ) またこのよく使われるMETsという指標ですが、これはあくまでも各運動の”参考値“です。
例えば、ジョギングにしても各人の歩行スピードにより同じジョギングであったとしてもMETsは変化します。 そのため実際にはこのMETsを使用し、運動量などを計算することは少し荒削りで難しいといった欠点があります。 ただ後に紹介しますがこのMETsを使ってエネルギー消費量を算出する式があるのですが、その式がダイエットを考える上で一つの面白いポイントに繋がってきます。 ひとまずここでは【運動でカロリーを消費するのは、思いの外難しい】ということを知っていただければ十分です。 それなら何故、そんな一見カロリーの消費効率が悪いように見える運動が減量する上で重要になってくるのでしょうか。 運動をすることで単純に消費カロリーを増やし、減量につなげていくことも勿論重要なのですが、それだけではなくもう1つ、ダイエットをする上で運動が欠かせない理由があります。 頑張って痩せたにも関わらず、リバウンドでまた戻ってしまったというエピソードを聞いたことある人は多いと思います。 それもそのはずで食事量を減らし、1度減量に成功したとしても、もしそれが大きな制約と我慢の上で達成したものであれば、目標達成後もそれをキープし続けるのは至難になってきます。 自分の好きな食べ物を常に制限し、食事量を抑え続け、楽しい外食の際にもカロリーを気にして、、、 そうなると何か少し寂しいですね。 加えてそれでも痩せなかったら可哀想になってしまいます。 短期的には我慢できても、やはりそれを何年もずっと我慢となるとどうしてもストレスにもなってしまいます。 しかし、また好きなように食べてしまうとリバウンドしてしまうといったジレンマに陥ってしまいそうです。 では、こういったリバウンドを防ぐにはどうしたら良いのでしょうか。 要するにリバウンド防止とは単純に元の状態に戻らないだけでなく、”太りにくい体質”になることでもあり、私はこれが重要であると考えています。 そして、その体質を変える方法の1つとして運動という手段を用います。 つまり、単純に消費カロリーUPだけで減量を目指すのではなく、運動をうまく活用することで、太りにくい体質変化も狙っていきます。 食事の管理が全く必要なくなるというわけでは決してありませんが、もし自分の身体自体が太りにくい体質になれば、少なくとも目標達成後もガチガチに我慢をする必要は少なくなり、キープもしやすくなります。 それは当然、リバウンド防止にもなるだけでなく、またそこから更にダイエットする際にも労力が少なくて済むようになります。 皆さんも周りに、
などはいないでしょうか。 頑張ってダイエットしている方からしたら「何て嫌味なんだ」と感じるかもしれませんが(笑) 勿論、普段の食事の好みやリズム等もあると思いますが、実はそれ以外の要素でも“太りにくい体質”というものは事実、存在します。 それでは運動で手に入れることができるその太りにくい体質とは具体的にどういったものなのでしょうか。 一言で言うとそれは、基礎代謝の高い人です。 いわゆる何もしていなくても、消費エネルギーの高い人です。 摂取エネルギーより消費エネルギーの方が上回れば痩せますし、その反対であれば太ります。 そのため、そもそも何もしなくても消費エネルギーの多い人は多少摂取カロリーが多かろうが、太りません。 そして同時に何もしなくても消費されているので、基礎代謝の低い人みたいにランニングや水泳などをやらなくても、1日の消費エネルギーは自然とそれなりに大きくなります。 そんな太りにくく、痩せやすい体質を獲得するために運動が重要になってきます。 この基礎代謝の高さの秘訣と運動の関係について専門的知見も少し織り交ぜながら紹介したいと思います。 この見出しだけ聞くと意味がわかりませんね(笑)。 まずは先ほど書いたように太りにくい体質になる方法の1つとして、基礎代謝を高めるという方法があります。 そしてその基礎代謝ですが、冒頭でも書いたようにここでは安静時基礎代謝(REE)を用います。 実はこの安静時基礎代謝は、ある簡単な式で求めることができます。 【除脂肪体重】とは、字の通り体脂肪の重さを引いた体重を指します。 そしてこの ちなみに、安静時基礎代謝量で出てきた28.5という数字ですが、日本人の食事摂取基準で示される18-29歳の基礎代謝基準値と日本人の一般的な体格を参考に算出されたものです。 日本人のアスリートでも安静時基礎代謝量のこの式と係数がおおよそ当てはまるといわれています。 そしてもう一つ、 つまり除脂肪体重が高ければ、安静時基礎代謝量も高いということになります。 その点を踏まえてもう一度この安静時基礎代謝量の式を確認していただきたいのですが、REE=28.5×LBMであり、28.5という係数は日本人であれば概ね変わらないことを踏まえると、除脂肪体重(LBM)を高めることができれば、結果として安静時基礎代謝量(REE)が高くなることがわかります。 そして、その高めたい除脂肪体重の求め方の式を確認すると、LBM=(1-体脂肪率)×体重なので、当然ですが【体脂肪率が低ければ低いほどLBMの値が大きくなる】ことがわかります。 同時に体重も高ければ自然とLBMの数値が高くなるのもわかります。 そうです。 ついダイエットというと、減量に目が行きがちですがそもそも減量を目指す時に陥る誤りとして、間違った体重の減らし方をしてしまい、安静時基礎代謝量まで低めてしまっている場合があります。 ダイエットをしているつもりが、実は自らエネルギー使用効率が悪い、言い換えれば”太りやすい体質”に向かってしまっている可能性があります。 せっかくの努力が無駄になるどころか、より反対の結果に結びついてしまっては非常に勿体ないですよね。 考えてみれば単純なことなのですが、 重たいものを動かす方がより大きなエネルギーが必要になってきます。 先ほどのMETsでも説明しましたが、同じ運動を行ったとしても消費するエネルギー量というのは個人差があります。 その秘密はMETsを使って導きだされる運動時のエネルギー消費量の式にあります。 今まで、見てきた式はあくまでも安静時の時のものですが、 実はこの【運動時”のエネルギーの消費量】というのは、エネルギー消費量=METs×体重(kg)×時間(h)×1.05という式で求めることができます。 ここで注目していただきたいのが、エネルギー消費量の式に体重が含まれています。 そのため、さっき見た安静時だけに限らず、運動時の消費エネルギーを稼ぐにも体重が重い方が有利になります。 これらが、見出しのダイエットには体重を増やす方が良いといった所以です。 そしてその体重を増やすということですが、何も普段測定している体重のことだけではありません。 むしろそれよりも重要なのは、【脂肪以外の体重を増やすこと】が最大のポイントになります。 では、脂肪以外の体重を増やすにはどうしたら良いのでしょうか。 脂肪以外のもので量を増やしやすいものとは何でしょうか。 内臓や骨はそうそう増やすことはできません。 もう予想はできているとは思いますが、 脂肪を除いた体重を増やすには、筋肉を増やす必要があります。 基礎代謝を高めるには筋トレが良いと言われているのはこう言った側面があります。 なので基礎代謝に焦点をあて、太りにくい体質を獲得したいのなら、まずは筋肉の量を増やすような筋トレをすることが良いと考えられます。 そしてこの筋肉に関してですが、大きく分けて3つの機能的要素があります。 それが の3つです。 実はこの、3つの機能は高めたい機能によって、それぞれ適した運動方式や負荷量が変わってきます。 そして、太りにくい体質を獲得するのが目的なのであればこの3つの中で言うと、”筋肉量を高めるのに適した運動”を選択することが1番効良い方法となります。 ここまでのおさらいとして、 ダイエットを成功するための1つのオススメは太りにくい体質を獲得するといった方法があります。 その太りにくい体質を獲得するためには、筋肉量を増やすようなトレーニングがおすすめです。 そして筋肉には筋肉量だけでなく、筋力や筋持久力といった要素もあり、鍛えたい要素によってトレーニング方法が変わってきます。 そのためただ闇雲に運動をするのではなく、普段皆さんが行っているダイエット方法に加えて、筋肉量を増やすようなトレーニングを取り入れると太りにくい体質につながりやすくリバウンド防止にもなることから、私個人としてはおすすめだと考えています。 では、その“筋肉量に特化したトレーニングとはどんなものなのか”ということを次回に書いていきたいと思います。 2.ダイエットのための運動は消費カロリーUP目的だけではない?
3.ダイエットをするには体重を増やす必要がある?
4.太りにくい体質獲得の鍵は除脂肪体重を増やすことにある?
5.まとめ