”かむ”ことの秘密⁉「よく噛む」がもたらす不思議なダイエット効果とは?

Q.よく噛むことってダイエットに良いの?早食いは太るって聞くけど本当なの?
A.ダイエットで「よく噛むように」と言われるのは、噛むことで若干とはいえエネルギー消費量が増えるためです。ただそれも噛むという動きに使用するエネルギー量が増えるという単純なものだけではなく、神経系を通じて熱産生を促したり、またホルモンによる食欲調節が作用したりと意外と多面的に作用することがわかっています。

 

以前にも書いたことがありますが、体重の増減は単純に言えば消費カロリーと摂取カロリーのバランスによって決まります。そのためダイエットのようにもし痩せたい場合であれば、当然ながら摂取を減らす消費を増やすといった選択肢になります。

そして今回取り上げる“よく噛む”という行為は、実はその消費部分を増やすことと減らすことの両方に作用すると考えられています。

ではそもそも何故、よく噛むことはダイエットに良いのでしょうか。また実際によく噛むことでどれくらい消費分の増大や摂取分の減少が見込めるのでしょうか。

まず私たちの1日の総エネルギー消費量は大きく3つに分けられ、その割合を表すと下記のようになります。

  • 基礎代謝量:約60%。
  • 食事誘発性熱産生:約10%。
  • 活動時代謝量:約30%。

以前に基礎代謝量を上げるために筋肉量を増やすことをオススメしましたが、それはこの割合から見てもわかるように1日の総エネルギーの中で1番ウエイトが大きいためです。

(以前のブログは筋肉と基礎代謝の関係を利用し上手にダイエット参照)
↑この内容もまだまだ補足が必要なので詳細は随時またブログで取り上げていく予定です^^

そして今回の噛む行為とは主に真ん中の食事誘発性熱産生(Diet-induced Thermogenesis:DIT)に関わる部分になります。

まず結論として事実、健康な人を対象に早く食べる場合とゆっくり食べる場合を比較した研究(食事時間と噛む回数を記録)によるとゆっくり時間をかけ、噛む回数の多かった方がDIT(食事誘発性熱産生)が高かったことが報告されています。

(参照:Yuka hamada,et al:The number of chews and meal duration affect diet-induced thermogenesis and splanchnic circulation:obesity,silver spring.2014 May;22(5):E62-9.doi)

では何故よく噛むと、このDITが高まるのでしょうか。

様々な見解はありますが、1つは褐色脂肪細胞が関与していると考えられています。

褐色脂肪細胞という言葉は聞きなれないかもしれませんが、脂肪と言っても一般的にイメージされる脂肪とは異なります。エネルギーの貯蔵庫としての脂肪は白色脂肪細胞と呼ばれ、そちらが一般的なイメージ通りの脂肪になります。

以前に私のブログで小児期〜青年期までにある程度、脂肪細胞の数が決定してしまうため子供時代の肥満も注意が必要であるといった旨の記事を書きましたが、その時の脂肪細胞が白色脂肪細胞にあたります。

(以前のブログは子供の時の運動歴が成人以降も影響を与えるの?参照)

それに対して褐色脂肪細胞とはエネルギー消費を高め、体脂肪を減らす働きを持っている細胞になります。

事実、この褐色脂肪細胞の量や活性はBMIと体脂肪率と有意な負の相関を示していたり、反対に安静時代謝率とは有意な正の相関があることがわかっています。

そのため、この褐色脂肪細胞は肥満予防につながる可能性や肥満治療のターゲットとなりうる可能性が指摘されています。

(参照:Wouter D van Marken Lichtenbelt,et al:Cold-activated brown adipose tissue in healthy men.N Engl J Med. )

ダイエットを考えている方からすれば何ともありがたい存在のように感じますね。

そして面白いことに、噛むという行為が交感神経を活性化させることによって褐色脂肪細胞による熱産生・エネルギー消費が高まるといわれています。

余談ですがこの褐色脂肪細胞はそれ以外には寒冷刺激により活性化されることや、夏に比べて冬により活発に働くといった特徴を持っています。

(参照:Masayuki Saito et al:High incidence of metabolically active brown adipose tissue in healthy adult humans: effects of cold exposure and adiposity.Diabetes. 2009 Jul.)

よく噛むことがダイエットに良いといったエネルギー消費面ではこういったことが理由として挙げられます。

そして冒頭でも早食いが太るとされる要因の一つとしては、食欲調節との関係が指摘されています。

長くなってしまうので今回はこちらの詳細は触れませんが、簡単に言うと早く食べることにより食欲調節に関与する血糖値の上昇が起きる前、満腹感を感じる暇もない内にどんどん食べてエネルギーを過剰摂取してしまうといった問題からくるとされています。

ダイエットには運動も重要ですが、実はこの食欲調節も非常に重要であることがわかっているので、それについてはまた別の機会に詳細を書いていきたいと思います。

また最後におまけで少し触れると、

今回取り上げた食事誘発性熱産生(DIT)ですが、摂取する栄養素によっても差があることがわかっています。

3大栄養素といえば糖質、脂質、たんぱく質ですが、実はこの栄養素によって摂取したエネルギー量のうちの何%が消費されるかが異なっているのです。

内訳としては以下の通りになります。

  • 糖質:約6%
  • 脂質:約4%
  • たんぱく質:約30%

見ての通りたんぱく質だけ桁が違いますね。

たんぱく質は摂取したエネルギー量の約3割がこの食事誘発性熱産生として消費されます。そのため同じエネルギー量を摂取するのであればたんぱく質の割合を増やした方が食事誘発性熱産生が増える、、、言い換えれば消費エネルギーが増えることになります。

ダイエット方法で度々、たんぱく質量の多い食事を勧められているのはこういった背景もあります。

ただ、当然ですがだからといって暴飲暴食はNGです(笑)

今日はそんな噛むこととダイエットの関係について少し紹介させていただきました。

私は痩せ型ではありますが、昔から食べるのが相当早いため少し注意が必要です^^;

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