前回、このブログで骨の健康についての概要を取り上げました。
※過去ブログは 骨の健康について(概要編) をご参照ください。
今日はその続きで、
といった内容を取り上げたいと思います。
そうした骨を丈夫にするのに向いている運動をご紹介する前に1つだけ補足があります。
1.丈夫にしたい骨の部位によって適した運動は異なる。
1つの運動方法で全てをカバーすることはできない。
それは、「骨を丈夫にする運動」と一口に言っても実は
例えば腰椎の圧迫骨折などを予防するために腰の骨を丈夫にしたい場合と、足の骨の骨折を予防するために足の骨を丈夫にしたい場合では、それぞれ適した運動というものは違ってくるのです。
そのため今日はその中でも前回、転んで骨折してしまう部位で多いものの1つとして取り上げた
以前もご紹介した通り、股関節部(大腿骨)の骨折は死亡リスクの上昇にも関与しているため予防は非常に重要となってきます。
大腿骨の骨折は年々増えている。
日本では過去20 年にわたり、5 年ごとに計5 回の全国規模の調査が行われてきました。
その調査結果を参照すると大腿骨の骨折というものは年々発生数は増えており、高齢者の発生率も高くなっていることがわかっています。
そんないつ自分に降りかかってくるかもしれない大腿骨を丈夫にするのに適した運動についてご紹介していきます。
2.大腿骨を丈夫にするのに適した運動① 【歩く】
大腿骨を丈夫にするのに適した運動の1つとして歩くことが有効であるのがわかっています。
なんだそんなことか、、、と思われるかもしれませんが少し詳細についてご紹介します。
まず以前に私のブログでも軽く書いた通り、骨密度の減少は男性に比べて女性の方が大きいことがわかっています。
無理なダイエットなどが原因となることもありますが、1番有名なものとしては女性の場合は閉経後の女性ホルモンの低下が原因として挙げられます。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは骨吸収を抑制する働きがあります。
そしてその骨吸収の亢進は破骨細胞の活性化に依存していると言われれており、そのため閉経に伴うエストロゲンの欠乏は破骨細胞の活性化を誘導し、骨が脆くなりやすくなります。
そんな閉経後女性の骨密度維持に対する歩行の効果について調べたシステマティックレビューとメタアナリシスを参照すると、
(参照:Di Ma et al. Effects of walking on the preservation of bone mineral density in perimenopausal and postmenopausal women: a systematic review and meta-analysis.Menopause. 2013 Nov.)
歩くことが健康に良いということはよく言われますが、骨の健康を考えた際にも歩くことは有効であることがわかります。
腰椎は歩くことでは丈夫にできない。
ただここで1つ注意があります。
歩くことで大腿骨の骨密度改善が見込めますが、実は同論文で
そのため、歩くことは骨密度の改善につながることが示唆されますが、それはあくまでも大腿骨の骨密度に限っての話で、それ以外の部位では歩くことは骨密度に対してあまり効果的な方法ではないことが示唆されています。
※大腿骨以外の部分に対して有効な運動についてはまた別の機会にご紹介したいと思います。
3.大腿骨を丈夫にするのに適した運動② 【ダイナミックフラミンゴ療法】
ダイナミックフラミンゴ療法とは。
先ほどの歩くことが大腿骨の丈夫さを作るのに有効であるということを踏まえた上で次に紹介したいのが、ダイナミックフラミンゴ療法です。
そうです。このフラミンゴのことです↓
過去に私のブログで運動器の劣化具合をあらわすロコモティブシンドロームについて取り上げたことがありますが、実はこのダイナミックフラミンゴ療法はそのロコモ予防のトレーニングとしても推奨されています。
(参照:一般社団法人日本臨床整形外科学会 ロコモの治療)
※過去ブログは あなたの運動器は大丈夫?若くても知っておきたい現時点での運動器の劣化具合 をご参照ください。
片足立ちで大腿骨は丈夫になる。
具体的な方法としては
片足立ちを1分間キープするのを1日左右3回ずつ実施する
というものです。
(一般社団法人日本臨床整形外科学会 ロコモの治療より画像引用)
何てことない体操のように感じますが、実は片足立ちというのは普通に両足で立っている時と比べて大腿骨への負荷が2.75倍であると言われています。
先ほど歩くことが大腿骨の骨密度改善に有効であることをご紹介しましたが、実はこの片足立ちを1分間キープするという負荷を歩く負荷で換算すると、約53分間の歩行と同等であると言われています。
(参照:keizo sakamoto et al.Dynamic Flamingo Therapy for Prevention of Femoral Neck Osteoporosis and Fractures.showa univ j med sci 11(4),247-254,december 1999)
そのため、先ほどの歩くことも大腿骨の丈夫さを作るのに適した運動ではありますが、大腿骨の丈夫さを作ることだけに関して言えばこのダイナミックフラミンゴ療法の方が効率的と言えるかもしれません。
4.補足
骨は丈夫にするのに、骨折予防には繋がらない?
最後にダイナミックフラミンゴ療法と骨の健康について補足をしたいと思います。
このダイナミックフラミンゴ療法について行われたランダム化比較試験の研究を参照すると、
6ヶ月間、高齢者にダイナミックフラミンゴ療法を行った結果、
- 片足立位時間の増加
- 日常生活自立度の向上
- 転倒回数の減少
といった効果が認められたと報告されています。
これらは非常に良い報告ではあるのですが、実は同論文で骨折数には有意差は認めず、骨折の予防効果はなかったと報告されています。
この結果をどう解釈すれば良いのかは迷うところではあります。
大腿骨を丈夫にするのに有効であろう運動であり、転倒予防や日常生活の自立度も向上するといったプラスの面は確認されているのに、最終的な骨折の予防効果に関しては効果が認められないといった報告があるのは気になるところです。
単純に高齢者が最終的な骨折を予防するにはもっと別の良い運動方法があるのか、、、
ダイナミックフラミング療法はもっと若いうちから取り入れることで骨折予防が認められるようになるのか、、、
そういった疑問の余地は残ります。
骨の健康のカギは成長期にある。
ただ現時点で言えることは、以前も取り上げた骨折の危険因子である骨粗鬆症の予防に関しては言えば、まず第一に重要なことは“成長期”に骨量を十分に増加させて高い最大骨量を獲得することであると言われています。
又、骨粗鬆症によって増大した骨折リスクを低下させ健全な骨格を維持するには薬物療法が中心であるとも言われています。
そのため骨がもろくなってしまった後では運動や食事(栄養)は必要な要素ではあるものの、あくまでサブ的な位置づけであると言えます。
そしてその中心となる薬物療法も決して万能ではなく、
「骨粗鬆症の薬物治療は,あくまでも,骨強度の低下により骨折リスクが増大してい ることが明らかな例において,そのリスクをせいぜ い 3 ~ 5 割低下させるにすぎない」ことを理解することが必要である。
といった記載がされています。
骨の健康には治療よりも予防の観点が重要。
これらを勘案すると、ある程度骨がもろくなってしまった状態ではそこから回復することは相当に難しいことがわかります。
そのため理想を言うと若いうちから、それもこと骨の健康となると本当の理想は成長期の子供の内から予防していくことが重要であることがわかります。
私もそうですが、健康であるうちは予防についてはついつい後回しにしてしまうものですが、長い目で見た際のリスク管理としては本来は決して後回しにしてはいけないものだと思います。
そのため、完璧である必要はないにしても(そもそも私は完璧にはできないので^^;)今のうちにできる限り、少しずつ予防となる習慣を身につけるようにささやかに頑張っています。
自分が全然できていなければ説得力がゼロなのでそこは最低限気をつけたいところです^^;(汗)
皆さんも少しずつ予防、将来のリスク管理を考えるきっかけの一助になれば幸いです^^
5.まとめ
- 丈夫にしたい骨の部位によって適した運動方法は異なる。
- 大腿骨を丈夫にしたいなら”歩くこと”と”片足立ち”が有効。
- 腰椎は歩くだけでは丈夫にはならない。
- 骨を丈夫にするだけでは、骨折予防には繋がらない?
- 骨の健康には”治療”よりも”予防”が重要。
- 成長期に骨量をいかに増やせるかがカギ。