【腰痛の罠】見逃されがちな腰痛:椎間関節性腰痛のサインとは?

Q.前回言っていた非特異的腰痛について、全く対策がないわけではないってどういうこと?
A.例えばですが、レントゲンなどの画像診断では発見が難しい腰痛の中で椎間関節性腰痛というものがあります。それを例に話すと腰痛体操の中で腰を反らす様な体操を紹介されるのを見たことがある人もいるかもしれませんが、もし痛みの原因がこの椎間関節性の腰痛であれば腰を反らす運動は逆に腰痛が増悪する可能性が高いため注意が必要です。

 

前回のブログで腰痛診療ガイドライン(2019)を参照にし、その中で原因が特定できない腰痛である非特異的腰痛として

  • 筋・筋膜性腰痛
  • 椎間板性腰痛
  • 椎間関節性腰痛
  • 心因性腰痛

が該当しているとご紹介しましたが、今日はその中の椎間関節性腰痛について少し書いていきます。

椎間関節性腰痛とは名前の通り、椎間関節と呼ばれる関節部分からくる腰痛のことを言います。

その椎間関節の場所はというと下のイラストでの赤丸部分になります。

腰椎の後ろ部分にある関節であり関節の構造上、腰を反る際に関節が閉まり、反対に腰を丸めると緩むといった関節になります。

椎間関節は脊柱(背骨)にかかる荷重の16%を受け止めており、残りの84%は椎体や椎間板といった腰の骨の前部分が支えていると言われています。

そしてこの椎間関節には感覚受容器と呼ばれる刺激を受けとるセンサーが豊富にあることもわかっています。

更に重要なのは椎間関節周囲にもそうしたセンサーは存在するのですが、椎間関節に関してはその周囲の組織と比べても特に痛覚を受容する侵害受容器が多いといった特徴を持っています。

(参照:山下敏彦:椎間関節性腰痛の基礎.日本腰痛会誌,13(1): 24 – 30, 2007)

これは言い換えると、椎間関節は痛みの発生源になりやすいことを意味しています。

そうした元来痛みの発生源になりやすい性質を持っている椎間関節ですが、この関節は主に腰を反らしたり、そこから捻る動作などによって負荷がかかることがわかっています。

そのためそうした動作の多いアスリートなどには比較的頻度の多いものとなっています。

私の感覚からしても、若い人でもこの椎間関節性の腰痛は比較的多く見受けられます。

特に反り腰タイプの人には多く見受けられる印象です。

また椎間関節は腰の骨の後ろ側にある関節ではありますが、腰の前側の問題と無縁かと言うとそういうわけでもありません。

腰の前側にある椎間板の変性が生じ、椎間板高が減少すると自然と椎間関節にも負担がかかりやすくなってしまいます。

それが進行していくと軟骨が変性、消失し椎間関節の変形が出現してしまい変形性脊椎症へと進行していくこともあります。しかし、初期の変形などでは画像での異常所見などは見つけられないことも多いのが特徴としてあげられます。

一応、CT画像で椎間関節の骨棘形成を認めたり、MRI画像では椎間関節の関節液貯留や関節周囲の浮腫像を認めることもあるようですが関連性は不明であったり、そのような画像所見がなくとも症状を呈することが多いと言われています。

ちなみにですが反対に椎間板の変性や椎間板ヘルニア、脊椎分離症といった器質的障害は画像診断で比較的確定しやすいといった特徴をもっています。

では画像診断では発見されにくい椎間関節性腰痛ですが、見つける手立てが全くないかと言うとそういうわけでもありません。

この椎間関節性腰痛の見極め方として一般的なのは

  • 腰を反った時に痛みが出る。(ピンポイントな痛み)
  • Kempテストと呼ばれる身体を反る+捻る動きをする検査を行い、下肢痛は伴わないものの腰痛が生じる。
  • 椎間関節に圧痛がある。

などといった方法で確認します。

しかしここで補足したいのが、下肢痛がないものと書きましたが椎間関節が炎症することによりその炎症が神経根にも広がり下肢痛が出現される場合もあることがわかっています。

(参照:Hisayoshi Tachihara et al.:Does facet joint inflammation induce radiculopathy?: an investigation using a rat model of lumbar facet joint inflammation.2007 Feb 15;32(4):406-12.)

そのため必ずしも下肢痛があるからといって椎間関節性腰痛が除外されるわけでもなければ、下肢痛=椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などというわけでもないことがあります。

こういった少し難しいケースに関しては今回取り扱いませんが、そういうこともあるといった程度に補足させていただきました。

簡単にですが椎間関節性の腰痛について触れましたが、ここまで読んだところで再度おさらいですがこの腰痛は主に腰を反るストレスの蓄積で発生することが多いのが特徴です。

(ただ椎間関節性腰痛でも症状が強い場合には腰を丸める動きでも腰痛が誘発される場合があるので絶対的な法則ではないのでそこは要注意です。)

そのため、こういったタイプの腰痛の場合は反るような腰痛体操は余計に痛めることになるため基本的に行いません。

このタイプの腰痛の場合は主にお腹の筋肉を使う運動をしたり、反対に腰の部分を丸めるような方向に促すような運動を指導することが多くなります。

ただこのタイプの腰痛の人の中にはそうした運動をする前に、そもそも股関節周囲に問題があったりする人もいるのでその場合は股関節周囲に対してのリハビリを行うこともあります。

え?、股関節?と思うかもしれませんが、それについてはまた触れていきたいと思います。

姿勢を良くするためにと腰を反らしたり、猫背を矯正するのは良いといった考えをお持ちの方もいるかもしれませんが猫背にもタイプがあったり、今回のような椎間関節性の腰痛の方の場合はそういった反る動きが逆効果を生む可能性が高いため注意が必要です。

(一概に身体を反らす運動が絶対にいけないわけではありませんのでその辺についてもまた触れていきます。)

そのため機能障害的に腰痛を捉えてもやはり多種多様な腰痛に対して〇〇だけで大丈夫といったことにはならないことがわかります。

今日はそんな反らすと良くないことの多い椎間関節性腰痛についての簡単なご紹介でした。

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