扁平足の原因と改善方法について。後脛骨筋の重要性。

扁平足とは、足にあるアーチがつぶれた状態を指します。

 

解剖学的には足のアーチは3つあるのですが、1番イメージしやすいのは土踏まず(内側縦アーチ)だと思います。

 

その土踏まずがつぶれた状態を扁平足と言います。

そして、この扁平足は脛の痛み足の裏の痛みなどの原因となり得ます。(リスクファクター)

 

今日はそんな扁平足の原因や、有効な運動方法に関しての豆知識をご紹介します。

 

1.足のアーチの構成要素。

 

まず、前提として、この足のアーチの構成要素は、大きく分けると静的支持組織動的支持組織に分けることができます。

 

  • 静的支持組織:骨の配列、靭帯、関節包、足底腱膜
  • 動的支持組織:筋肉(足部内在筋、下腿の筋肉など)

 

この2つに分類した内、トレーニング(運動)といった手法で改善を図れるのは主に動的支持機構になります。

 

つまり、足のアーチの構成に関わっている筋肉を鍛えることで扁平足を改善するといった方法になります。

 

2.足のアーチを作るのに最も重要とされている筋肉とは。

 

足のアーチは様々な筋肉によって構成されていますが、

 

その中でも、何と言っても一番重要だと考えられているのが後脛骨筋と呼ばれる筋肉になります。

 

後脛骨筋

 

14名の新鮮凍結された死体脚を使用した研究の結果によると、後脛骨筋腱の支持のあり/なしの2パターンの状態で荷重をかけ、比較した結果、後脛骨筋腱の支持がある脚の方が優位に足のアーチが高い状態に保たれていたことがわかっています。

(※脛骨の縦軸に500Nの繰り返し軸方向荷重を合計10,000回かけ、アーチの評価は舟状骨の高さで評価した。後脛骨筋腱の力は32N)

 

これらのことから、同論文では、足のアーチの保持には先ほどご紹介した静的支持組織のみでは不十分であり,足のアーチを維持するためには,後脛骨筋が不可欠であったと解釈し、後脛骨筋の筋力低下や機能不全がある場合はその対処が必要であるといった旨の結論がされています。

(参照:Tomoaki Kamiya et al:Dynamic effect of the tibialis posterior muscle on the arch of the foot during cyclic axial loading, Clin Biomech (Bristol, Avon). 2012 )

 

 

更に、成人における後天性扁平足は、80%の症例で後脛骨筋腱機能障害があったといった報告もあるため、扁平足を語る上では決して見落とすことのできない筋肉です。

(参照
・Xavier Crevoisier et al:Hallux valgus, ankle osteoarthrosis and adult acquired flatfoot deformity: a review of three common foot and ankle pathologies and their treatments. EFORT Open Rev. 2017
・Kaihan Yao et al:Posterior Tibialis Tendon Dysfunction: Overview of Evaluation and Management. Orthopedics. 2015)

 

3.後脛骨筋腱障害について。

 

ここで少し細かい補足をしたいと思います。

 

成人における後天性の扁平足の80%に後脛骨筋腱障害を認めたことをご紹介しましたが、その名の通り、ポイントは“筋”だけでなく、“腱”も含まれているということです。

 

とは筋肉の終わり部分で骨に付着する部分になります。

 

各組織の連続性としては、骨→腱→筋肉→腱→骨といった感じに筋肉と骨が付着する際の仲介をしているようなイメージです。

 

そして後脛骨筋の機能は、この後脛骨筋腱の状態に大きく左右されます

 

仮に後脛骨筋腱が変性してしまうと、後脛骨筋の力を伝達できなくなってしまいます

 

筋肉はしっかり作用しているのに、その先にある腱が力をうまく伝達できない状態であることから、結果として筋力低下と同じような状態に陥り、足のアーチの動的支持機構が低下することで扁平足に繋がってしまうのです。

 

そして注意が必要なのが、この後脛骨筋腱は元々の特徴として、血流が乏しいことから変性しやすい部位でもあるのです。

 

後脛骨筋腱が変性する最も一般的な原因は、微小外傷反復性負荷とされています。

 

つまり、そこをぶつけたり、反復的にストレスがかかり続けると変性していきます。

 

ただ、

後脛骨筋腱障害のリスク因子はそれ以外にも、高血圧肥満糖尿病ステロイドへの暴露といったものもあります。

(参照:Posterior Tibial Tendon Dysfunction)

 

ステロイドはともかく、意外に感じるかもしれませんが、内科的なことも影響してくることは知っておいて損はないと思います。

 

このように元来、障害されやすい部位でもあることも相まって、扁平足といった足の障害を考える上では、後脛骨筋は切っても切り離せないものになります。

 

4.後脛骨筋腱障害に対しての運動療法とは?

 

では、最後に

 

扁平足の原因になる後脛骨筋腱障害に対してはどうすれば良いの?

 

といったことについて言及したいと思います。

 

 

これに関しては、非常に参考となる介入研究があります。

 

 

後脛骨筋腱症を有する成人に対して、以下のような介入をした結果を報告している論文があります。

 

比較した介入内容については以下の3種になります。

  • 装具装着+ストレッチ。
  • 装具装着+ストレッチ+コンセントリック漸進的抵抗運動。
  •  装具装着+ストレッチ+エキセントリック漸進的抵抗運動。

 

(※装具はアーチサポートのインソールを着用。
ストレッチはふくらはぎのストレッチ(腓腹筋とヒラメ筋)
運動は後脛骨筋トレーニング。)

 

結果は、全ての介入方法で痛みを含む、足部機能指標のスコアが改善したことが確認されています。

 

ただ、後脛骨筋トレーニングを追加したグループの方がインソールとストレッチのみのグループと比べてより、痛みの軽減と機能の改善を認めたといった報告がされています。
(エキセントリック運動>コンセントリック運動)

(参照:Kornelia Kulig et al:Nonsurgical management of posterior tibial tendon dysfunction with orthoses and resistive exercise: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2009)

 

これらのことから、扁平足に深く関わる後脛骨筋腱障害に対しては、インソールとふくらはぎのストレッチ、後脛骨筋のトレーニングといった方法が有効であることがわかっています。

 

また、この論文内では実施されませんでしたが、足のアーチの保持には足の指の筋肉も重要であると言われています。

 

今日ご紹介した後脛骨筋ほどではないですが、長趾屈筋長母趾屈筋と呼ばれる筋肉も足のアーチ保持に関わっているとされています。

そのため、これら足の指の筋肉に対してのトレーニングも扁平足に対して一定程度、有効であると考えられています。

 

 

いかがでしたか。

 

今回は扁平足に対してのちょっとした豆知識のご紹介でしたが、次回のブログは、この続きで扁平足に対して、実際に有効だったトレーニングやストレッチの方法についてご紹介したいと思います。

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