前回のブログで扁平足に対して、後脛骨筋と呼ばれる筋肉が重要であることをご紹介しました。
(前回ブログ:扁平足(へんぺいそく)を治すにはどんなトレーニングが良いの?(前提知識編))
簡単に前回のおさらいをすると、扁平足に関わる後脛骨筋腱症を有する成人に対して、以下のような介入が有効であったことを示唆した論文があることをご紹介しました。
比較した介入内容については以下の3種です。
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- 装具装着+ストレッチ。
- 装具装着+ストレッチ+コンセントリック漸進的抵抗運動。
- 装具装着+ストレッチ+エキセントリック漸進的抵抗運動。
(※装具はアーチサポートのインソールを着用。
ストレッチはふくらはぎのストレッチ(腓腹筋とヒラメ筋)
運動は後脛骨筋トレーニング。)
これらを実施した結果、全ての介入方法で痛みを含む、足部機能指標のスコアが改善したことが確認されています。
ただその中でも、後脛骨筋トレーニングを追加したグループの方がインソールとストレッチのみのグループと比べてより、痛みの軽減と機能の改善を認めたといった報告がされていることをご紹介しました。
(エキセントリック運動>コンセントリック運動)
(参照:Kornelia Kulig et al:Nonsurgical management of posterior tibial tendon dysfunction with orthoses and resistive exercise: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2009)
これらのことから、扁平足に深く関わる後脛骨筋腱障害に対しては、インソールとふくらはぎのストレッチ、後脛骨筋のトレーニングといった方法が有効であると考えられていることをお伝えしました。
1.扁平足に関わる後脛骨筋腱障害に有効だったストレッチ法。
まずストレッチですが、これは腓腹筋とヒラメ筋と呼ばれるふくらはぎの筋肉に対してのストレッチになります。
実際の論文の説明としては、以下のような絵と一緒に説明がされています。
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(引用:Kornelia Kulig et al:Nonsurgical management of posterior tibial tendon dysfunction with orthoses and resistive exercise: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2009)
2枚の絵がありますが、左側の写真が腓腹筋のストレッチ、右側がヒラメ筋のストレッチになります。
筋肉の付着部や走行の関係で、各筋肉のストレッチ方法が異なります。
まず左側は見たことがある人も多いのではないでしょうか。
学校の体育などでアキレス腱のストレッチといった説明をされてやっていたという人もいるのではないでしょうか。
右側と左側の絵とでは何が違うのかというと、1番の違いは膝を伸ばしているのか、曲げているのかといった膝関節の角度です。
膝を曲げた状態でふくらはぎを伸ばすことで、腓腹筋でなく、ヒラメ筋に特化してストレッチをかけることができます。
- 腓腹筋のストレッチ:膝を伸ばした状態で、足首が反るように伸ばす。
- ヒラメ筋のストレッチ:膝を曲げた状態で、足首が反るように伸ばす。
といった方法になります。
(膝を曲げた状態と膝を伸ばした状態の2パターン共に実施する。)
まずは最低限これらを守っていただければ概ね問題ありません。
ただその他にも、同論文内で細かい注意点が書かれているので参考程度に下記に残しておきます。
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- ストレッチをする側の足が少し内側に向いていることを確認する。
- 足のアーチが十分に保たれていることを確認する。
- ふくらはぎや膝の後ろの筋肉が軽く伸びる程度にする。
- 痛みを感じた場合はすぐに中止して、フォームを確認してから再度行う。
→それでも痛みが続く場合は中止。 - 足の下に斜面台をいれる。
2.扁平足に関わる後脛骨筋腱障害に有効だった後脛骨筋トレーニング。
次に後脛骨筋のトレーニングについてご紹介します。
同研究内で行った後脛骨筋トレーニングは、抵抗を加えた状態で足首を内に動かす(抵抗性足部水平内転運動)といった手法を用いていました。
足関節内転とは以下のような動きを指します。
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先行研究により、後脛骨筋はこうした足関節内転の動きの際に活動すること、そして扁平足の人がアーチサポートの装具と靴を着用しながら運動を行った場合に後脛骨筋が選択的に活性化することなどがわかっていたので、それらの手法を使用していました。
研究では、下の写真のような器具を用いて後脛骨筋トレーニングを行っていました。
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(引用:Kornelia Kulig et al:Nonsurgical management of posterior tibial tendon dysfunction with orthoses and resistive exercise: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2009)
これは研究のためにこういった器具を用いていましたが、当然ながら、実際に後脛骨筋トレーニングをするのにこうした器具をわざわざ準備する必要はありません。
ただ、代わりにセラバンドなどの弾力性を持つバンドがあるとトレーニングをする際に便利です。
色によって強度が異なるのですが、安価なものでおススメのものを参考程度に以下に載せておきます。
スポーツショップなどで実際に見て、自分の気に入ったものを購入するのも良いと思います。
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これらのバンドは私が実際に現場で使っていることもあれば、私自身のトレーニングにも使っています。
このバンドを使って、足関節内転運動に対して抵抗をかけます。
使い方としては、まず下の写真のように結んでわっかを作ります。
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そのつくったわっかを以下のように、足にひっかけて運動するといった方法になります。
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後脛骨筋をトレーニングするには、個人的にもまずはこの方法から始めていただくのをオススメします。
わっかを作るのが手間であれば、以下のように片方の足で踏んだ状態で固定し、使うやり方でも構いません。
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3.それ以外の後脛骨筋トレーニング。
ただ、こうしたバンドを購入・使用するのが面倒だといった人もいると思います。
そんな人のためにも、道具を使わない後脛骨筋トレーニングの方法も1つご紹介させていただきます。
それがカーフレイズです。
カーフレイズとは以下のような運動です。
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見ての通り、言うなればただの踵上げ(つま先立ち)です。
そのため、このまま普通に踵上げ運動をするだけでは、後脛骨筋トレーニングとは言えません。
後脛骨筋は足関節の内転といった動きの際に活性化するとご紹介しました。
そうです。
しかし、理屈(メカニズム)だけで物事を考えると、ただの思い込みとなってしまう可能性があり、運動関連の一専門家の端くれとして、そうした無責任な提言だけで終わらせるわけにもいかないので、その論拠も示しておきます。
足関節を中間位、外転30°、内転30°といった3条件で踵上げ運動を行った際の筋活動を調べた研究があります。
その研究報告によると、足関節の位置によって異なる筋活動を認めたことがわかっています。
結果は以下の通りです。
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- 足関節30°内転位での踵上げ→後脛骨筋と長指屈筋の筋活動が高値を認めた。
- 足関節30°外転位での踵上げ→長腓骨筋の筋活動が高値を認めた。
(参照:Hiroshi Akuzawa et al:The influence of foot position on lower leg muscle activity during a heel raise exercise measured with fine-wire and surface EMG . Phys Ther Sport. 2017)
これらのことから、足関節を内転位の状態で踵上げ運動をすることは、後脛骨筋トレーニングに有効であると考えられています。
もし先ほどのバンドを用いた運動が煩わしいといった方は、こういった方法のトレーニングもあるので参考にしていただければと思います。