【頭痛管理のポイント】最低限知っておくべきことについて(危険因子,管理方法など)

日本頭痛学会のホームページを参照すると、国際頭痛学会により頭痛は一次性頭痛、二次性頭痛、その他といった感じに分類にされます。

(日本頭痛学会HPより引用。)

そんな中でも一次性頭痛で最も多い頭痛として緊張性頭痛というものがあります。

緊張性頭痛の世界人口での有病率は38%と言われています。

更にこの緊張性頭痛は反復性(episodic tension -type headahce:ETTH 月に15日未満)と慢性(chronic  tension-type headache:CTTH 3ヶ月を超えて,平均して1ヶ月に15日以上)に分類されるのですが、この内の反復性緊張性頭痛に関して日本頭痛学会は以下のように記載しています。

反復性緊張型頭痛には鎮痛薬が有効です。鎮痛薬の使用が月に数回程度の方は通常、毎日服用する予防薬の必要はありません。頻度の多い反復性緊張型頭痛や、慢性緊張型頭痛では抗うつ薬などの予防薬の内服、ストレスマネジメント、リラクセーション、理学療法などが推奨されています。

(日本頭痛学会HPより引用。)

ここにも記載されている通り、反復性緊張性頭痛には鎮痛薬の有効に触れているのと同時に、理学療法なども推奨されています。

ただ緊張性頭痛に関しては、まだまだ不明点も多い頭痛であると言われています。ちなみにですが、ほとんどの調査で共通して緊張性頭痛は男性よりも女性の方が有病率が高いことが知られています。

実は私も中学生くらいから頭痛は持っており、日常生活に支障が出る程ということは滅多にないのですが、気をつけていないと頭痛は今でも起きます。

ただそれでも過去の酷かった時と比べれば相当に楽であり、自覚症状としては昔よりは全然問題なく日常を過ごせてはいます。^^

今日はそんな緊張性頭痛に関して、頭痛持ちである私が実際に気をつけていることも少し絡めて書いていきたいと思います。

※ちなみに同HP内で鎮痛薬に関しては

鎮痛薬の飲みすぎで、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)に移行し、さらに頭痛が悪化することがあるため、鎮痛薬の飲みすぎには注意が必要です。鎮痛薬は週に1-2日程度にとどめる必要があります。

(日本頭痛学会HPより引用。)

とも書かれているため、もし使用している方は参考にしてください。

 

1.緊張性頭痛でまず気をつけたい物理的ストレスは?

 

まずは緊張性頭痛は名称の通り、身体的・精神的ストレスが継続的にかかることにより引き起こされる頭痛です。

そのため、これは運動器障害全てに共通と言っても良いと思いますが、対策としてまず重要なのは普段のかかっているストレスを減らすことが欠かせません。

どんなに鎮痛薬で痛みを和らげたり、理学療法などといった治療を行っても普段のかかっているストレスが大きくては当然ながら治療効果を得ることは難しくなってしまいます。

そのため、冒頭でも推奨されていたようにまずはストレスマネジメントについての一例についてご紹介します。

 

現代人にとって多くの人が当てはまりやすく、頭痛につながりやすい生活習慣としてはやはりスマホやパソコンの使用、またそれに類似するデスクワークがあげられると思います。

まずは以下の図を見てください。

(Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head.より引用)

これは姿勢や頭の位置によってかかる首のストレスの関係性について書かれた論文なのですが、これを参照にすると首の角度とそれによるストレス増大の関係性は以下のようになっています。

  • 首の角度が中間位→10-12lbs
  • 15°傾く→27lbs
  • 30°傾く→40lbs
  • 45°傾く→49lbs
  • 60°傾く→60lbs
  • 90°傾く→測定不可

ちなみにlbsは質量の単位であるポンドのことであり、スタートポジションである中間位の10-12lbsはkg(キログラム)に変換すると、4.54-5.44kgになります。

成人の頭の重さが大体その程度になります。

これを見るとお分かりの通り、首が15°前に傾くにつれて約2倍、30°で3倍、45°で4倍、、、といった感じに首にかかるストレスが増えることがわかります。

(参照:Kenneth K Hansraj. Assessment of stresses in the cervical spine caused by posture and position of the head.Surg Technol Int. 2014 Nov.)

先ほどの図が示す通り、まさにスマホを首を前に傾けて見ている時間が長いとそれだけで強いストレスがかかり続けることになります。

そのため、ついついなってしまいそうなこうした姿勢には要注意です。⬇︎

こういった姿勢は何もスマホやパソコン操作時やデスクワークに限らず、普段の立ち姿勢なども猫背で頭が前方に位置してしまっている方は非常に多い印象です。

またこうした写真やイラストを客観的に見るとわかりやすいのですが、いざ自分でこの姿勢を修正しようとすると実は思いの外難しいのです。

私は普段整形外科のリハビリ業務で患者さんに携わっていますが、必要であると判断した際は姿勢の修正・アドバイスをさせていただくのですが、ほとんどの人が最初はびっくりされます。

「これが本当に良い姿勢ですか???」

といった感じで^^;

というのも、患者さん自身の身体の感覚と私が実際に中間位(もしくはその人にとって良い姿勢)であると評価し、修正した姿勢とはかなり乖離があることが多いのです。

それくらいに、実は頭ではわかっていても自分では非常に気がつきにくく、一度体験しないとなかなか修正できないものが姿勢でもあります。

また姿勢には幾つかのパターンにも分類できるので、理想は専門の人に一度見てもらい個別に修正・アドバイスを受けることに越したことはありません。

ただそれでは元も子もないので、今回は一般的なアドバイスを紹介させていただきます。^^

ものすごく端的に言うと、イメージとしては下の絵の黄色矢印のように修正するのが良いです。

ポイントとしては

  • 顎を引く
  • 胸椎を反る(肩甲骨を軽く寄せる、みぞおちを軽くあげるイメージ)
    →この時に肩や首に力が入らないように注意。
  • お腹を軽く締める

といったイメージとなります。

補足として、こういう姿勢修正でのあるあるが、

自身で猫背を直そうとした際に上半身の丸まりや頭の角度はあまり変わらずに、腰だけを反って正しい姿勢になった気になってしまう人がそれなりに多いのです。^^;

腰だけを反った姿勢は以前にも少し紹介した非特異的腰痛の一つである椎間関節性腰痛にも繋がりかねないので注意が必要です。

(以前のブログは非特異的腰痛の一例について。をご参照ください。)

そのため、修正するのは頭の位置といえども上記の3点は最低限意識していただきたいところではあります。

 

2.頭痛の危険因子は何?

 

頭痛に関してはまだまだ原因が不明なことが多いことは先ほど触れましたが、その中でも頭痛に関する独立した危険因子があることがノルウェーで実施された横断研究の結果で報告されています。

この研究はノルウェーで5,847人の学生を対象にした研究なのですが、それによると頭痛の再発率に影響を及ぼす危険因子として

  • 過体重
  • 喫煙
  • 運動不足

が挙げられています。

(参照:L Robberstad et al.An unfavorable lifestyle and recurrent headaches among adolescents: the HUNT study.Neurology. .)

ちなみにいうとここで言う運動不足は同論文内の表現はlow physical activityです(笑)。

更に別の研究を参照すると、

頭痛の予後不良因子としては、片頭痛であれば発症年齢が20歳未満であることなどが挙げられ、

緊張性頭痛では

  • 片頭痛の合併
  • 未婚
  • 睡眠障害

などが報告されています。

(参照:Ann Christine Lyngberg et al. Prognosis of migraine and tension-type headache: a population-based follow-up study. Neurology. .)

未婚が頭痛の予後不良因子にあるのもなんか興味深いですね(笑)

 

私は頭痛の始まりは中学生ですし、

未婚の独身ですし、

以前にも触れましたが睡眠は少しおろそかにしがちなので、、、

非常に耳の痛い話です^^;(笑)

これでもかと予後不良因子が当てはまってしまっています(汗)

自分の頭痛のリスク管理のためにも気をつけようと思っていますが、もし当てはまる方がいれば頭痛にはこうした危険因子があることをぜひ参考にしてください。

 

3.頭痛管理で最低限気をつけておきたいことは何?

 

まずこれは私にも言えることですが、普段気をつけているとは言えど私も時々頭痛が出ます。

私のように日常生活に支障は出ない程度ではあるものの頭痛があるといった方は医療機関までは受診しない方も多いと思います。

日常生活にも支障が出るほどであれば、当然ですが頭痛外来などの医療機関で一度見てもらうことをお勧めします。

また慢性頭痛の診療ガイドラインによると、私のようにそんなひどくない頭痛の人でも安心感を得るためにも受診する方がそれなりにいるみたいなので、自分では大したことはないと感じていても一度受診するのも良いと思います。

整形外科でもそうですが、どこか身体を痛めていても、ついつい我慢してしまい相当にひどくなってから来院される方も多いですが、もっと早く来ていればよかった(笑)と話される人が多いです。^^

私自身はそれなりに強い頭痛になった際は市販薬を服用するのですが、私の場合はそれで大体はおさまることが多いです。しかしだからといって頻回に飲むことはなるべく避けています

なぜなら頭痛のガイドラインでも

市販薬を必要以上に服用している症例は、薬物乱用頭痛や反跳頭痛を生じる可能性があるため適切な治療が必要である。(推奨グレードA)

(慢性頭痛の診療ガイドライン2013より引用)

と書かれているためです。

また同ガイドラインでは理学療法は明確な評価が困難であることを前置きとした上で、運動プログラムは有効である可能性が示唆されており、副作用が少ない点コストの点を勘案して推奨されているようです。

またマッサージやリラクセーション、運動プログラムの併用が効果的であると報告しています。

ただここで1つだけ個人的にですが、注意していただきたいことがあります。

首の辛さなどで整体やマッサージを受けに行った際に、そこでもし、うつ伏せなどの姿勢(うつ伏せに限らずではありますが)で首を強く圧迫されるような手技、マッサージをされる場合はそうした施術を受けるのはやめていただく方が賢明だと私は思っています。

というのも、リハビリで問診をしている際に度々聞くのが過去にそう言った首を強く圧迫されるような手技を受けた後に調子が悪くなったと言われる人がそれなりにおられるのです。

また人によっては吐き気やその調子の悪さが数週間~数ヶ月に渡って続くといったことがあります。

これは医療関係の雑誌や症例報告でも度々報告されていたり、理学療法士や医療系のリハビリスタッフでもそうした行為をし、患者が悪くなったといった報告や話も聞きます。

本来、頸部はかなり繊細な部分ではあるので、私の個人的な見解ではありますが、首が辛かったり凝っているからといって首に関しては強く圧迫されるような指圧系のマッサージ等は受けない方が良いと私は考えています。(参考程度に)

4.(余談)頭痛と肩こりは関連が深い?

 

長くなってしまうので頭痛に関しての具体的な運動等に関してはまたの機会に書いていきますが、最後に少しだけ余談的な話をご紹介します。

日本ではよく聞く

肩こり

という言葉。

実はこの”肩こり”という症状の名前は英語ではほぼないということはご存知でしょうか。

実は肩こりという症状名に近い英語表現は

  • neck pain
  • chronic neck pain
  • stiff neck/shoulder
  • nonspecific chronic neck pain
  • neck and shoulder pain
  • cervico-brachial pain syndrome
  • axial pain syndrome

といった表現になると言われています。

見てのとおりですが、肩こりという症状名に一致する英語表現には、肩よりもむしろ首(neck)という言葉が入ることの方が多いようです。

一説では欧米諸国と違い、日本人が肩という部位に関して固有認識を有していたことに由来するといった考えもあるようです。

(参照:篠崎哲也.肩こりの特徴と理学療法への留意点.理学療法ジャーナル vol.49.No.5 May 2015)

首と頭痛に関しては非常に関連が強いのですが、首と肩に関しても関連が強い部位ではあります。

また詳細は書いていきますが、私自身の経験からしても首と肩の関連が深いことや、頭痛に対する運動に関して肩も含めた運動が重要になることは多いと考えています。

そのため、もし緊張性頭痛に自分が該当するなと感じる方は自覚の有無関係なく、肩こりを解消するような運動等も取り入れていただくことで症状が軽減する場合もあり得ると思います。

少しずつこうした一部分だけでなく、首と肩の関係、肩と頭痛の関係や股関節と腰の関係性といった、運動や疼痛予防する上でも重要となる各部位ごとの関連などについても今後書いていけたらなと思います。^^

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