それどころか
こういった経験をお持ちの方もいるかもしれません。
事実、ケガをした直後だったり、急性炎症の時期では安静といった手段が第一となります。
しかし、それと同時にもう一つ知っておくべきことがあります。
それは……
ということです。
今日はそんな安静にしすぎることによるリスクについて少しご紹介します。
1.不活動が痛みを呼び込む?
廃用が痛みを引き起こす要因となる。
身体の局所の不活動や長時間寝ていたりといった全身の不活動のことを“廃用”と言います。
例えば、とある論文では腰痛発症から4日以上安静にしてしまうと、その後1年以上も痛みをはじめとした機能障害が残存したと報告されており、安静による廃用が慢性的な運動器疼痛に発展するリスクファクターになると指摘しています。
(Verbunt J A,et al:A new episode of low back pain : who relies on bed rest?,Eur J pain, 12:505-516,2008.)
また、別の研究では23名の健康な人の腕を4週間ギプス固定したところ、その内の52.2%に冷痛覚閾値の低下、36.1%に熱痛覚閾値の低下があったと報告されています。
(Butler SH:Disuse and CRPS.In:Harden RN,etal,Complex Regional Pain Syndrome,Progress in Pain Research and Management 22, )
つまり元々は健康であった人の腕を固定することにより熱さや冷たさ、痛みに敏感になってしまったのです。
またこれら以外の研究でも似たような報告はされており、更に固定の期間が長いほど回復するまでにも時間を要し、慢性疼痛へと発展する可能性が高いことが示されています。
過度の安静には注意。
痛みがあるとどうしても動くのを避けてしまいがちですが、
そして少しこれに関連した話で、興味深いことに運動の特殊な作用の1つとして、鎮痛効果があるといった報告などがあります。
2.運動に鎮痛効果がある?
EIHとは。
運動の重要性は様々ですが、その中でも近年は運動による鎮痛効果が注目されています。
それはEIH(exercise-induced hypoalgesia)と呼ばれており、
というものです。
EIHのメカニズム。
ただ、このEIHのメカニズムはまだ解明はされてはいませんが、下和弘氏(慢性疼痛に対する運動療法の最近のエビデンス,MB Med Reha No.242)によると
- オピオイドやノルアドレナリン、セロトニン、エンドカンナビノイドが関与して内因性疼痛抑制システムを作動させる。
- 運動によって産生される一酸化窒素によってNO/cGMP/K+ATP pathwayを介して疼痛を抑制する。
- 運動によって末梢の免疫系に変化が生じる。
といった仮説が挙げられています。
こうしたメカニズムは専門的になり難しいのですが、運動が慢性的な疼痛を緩和するといった科学的根拠は沢山報告されています。
なのでもし軽度の痛みがある方で、運動不足の自覚をお持ちの方はまずは運動習慣の見直しからを図ってみるのも良いと思います。
3.鎮痛効果のための運動療法の原則とは?
鎮痛効果のための運動療法の原則。
先ほど参考にさせていただいた下和弘氏の同じ特集の中で運動療法の原則があげられていたのでその中から少し抜粋してご紹介致します。
- 有酸素運動:1回あたり20分〜60分、週2回以上。
6週間以上継続すると症状改善や機能向上が十分見込まれる。 - 筋力増強運動:痛みを訴える部位とは別の部位の筋力増強運動を行うことでも全身的に疼痛抑制効果を得られる。
- 運動の強度:有酸素運動、筋力増強運動共に低〜中等度の運動で痛みや機能の改善が得られることが示されている。
(慢性疼痛に対する運動療法の最近のエビデンス,MB Med Reha No.242より一部抜粋)
これらはあくまでも体系的な運動ではありますが、特に有酸素運動に関しては1つの目安として上記の頻度を意識して取り入れていただくと良いと思います。
関係のない部位の筋力トレーニングも有効。
また
筋力トレーニングに関しては痛みのある部位だけでなく、関係のない部位に対し行っても痛みの緩和につながる
という点は非常に面白いですね。
4.まとめ
- 過度の安静は痛みを更に悪化させる可能性がある。
- 運動そのものに痛みを和らげる作用がある。
- 低〜中等度の有酸素運動や筋力トレーニングが良い。
痛みと関係のない部位の筋力トレーニングでも疼痛緩和につながる。