以前に私のブログで、運動前後のストレッチに筋肉痛予防効果や傷害予防効果はないといった趣旨の内容をご紹介しました。
(過去ブログ:運動前後のストレッチに筋肉痛予防や傷害予防効果はない?)
今日は、そのブログ内容に関連した内容を取り上げたいと思います。
1.傷害予防に有効なのはストレッチよりも筋トレ。
ストレッチに傷害予防効果は期待できないことをご紹介しましたが、そうなると当然、以下のような疑問がでてくると思います。
答えを先に言うと、
今回は、一般的にエビデンスレベルが一番高いと言われるシステマティックレビュー、メタアナリシスからご紹介したいと思います。
その論文は、26,610人の参加者と3,464人の傷害を含む25の試験が分析されたものでした。
固有感覚とは、わかりやすい例をあげると、バランス感覚をイメージしてもらえれば良いと思います。
スポーツをやる上で、そうしたバランス機能を含む、身体の状態を感知する感覚を研ぎ澄ませることは非常に重要となります。
固有感覚トレーニングとは、そういった感覚を研ぎ澄ますためのトレーニングと捉えていただければと思います。
下の図はそうしたトレーニングを含む、それぞれの傷害予防効果の結果を示したものになります。
↓
Figure 2
Exposure estimates Forest plot. Stretching studies are denoted by red, proprioception exercises yellow, strength training green, and multiple component studies blue.
(引用:Jeppe Bo Lauersen et al:Exposure estimates Forest plot. Stretching studies are denoted by red, proprioception exercises yellow, strength training green, and multiple component studies blue.British Journal of Sports Medicine.2013)
1番上の赤いのがストレッチ、2番目の黄色が固有感覚トレーニング、3番目の緑色が筋力トレーニングの結果を表しています。
図の見方としては、左に位置するほど、傷害のリスクが減っていることを意味しています。
これを参照すると、固有感覚トレーニングも傷害リスクには有効であると考えられますが、その固有感覚トレーニングよりも筋力トレーニングの方がより、傷害リスクの減少に有効であることがわかります。
少し、専門的にはなりますが、ストレッチのリスク比は0.96となっており、95%信頼区間は0.85~1.10となっています。
(※介入なしの時の傷害発生率を1としている。)
95%信頼区間が1をまたいでいるのもあり、同論文でもストレッチは有効な効果が認められなかったとしています。
以前のブログでは、別の論文を参照し、ストレッチには傷害予防効果がないといったことをご紹介しましたが、今回の論文を参照しても、それと相違のない報告であることがわかります。
(といっても、前回紹介した論文が含まれているので当然と言えば当然かもしれませんが、、、)
ちなみに今回の論文の結論部分には、
(参照:Jeppe Bo Lauersen et al:Exposure estimates Forest plot. Stretching studies are denoted by red, proprioception exercises yellow, strength training green, and multiple component studies blue.British Journal of Sports Medicine.2013)
2.筋トレの効果は多種多様である。
筋力トレーニングはあまりにも有名すぎて、面白みがないかもしれまんせんが、その分、様々な研究がされていることから、非常に奥の深いトレーニングです。
少し分野は変わりますが、慢性疼痛に関しても筋力トレーニングが有効であると考えられています。
筋力トレーニングは誰もが知っているトレーニングであり、歴史も長くあります。
そうしたことから、時に否定的な内容を見かけることもあります。
確かに、以前に紹介したブログ内容のように、トレーニングの種類を間違ったりするとマイナスに働く場合もあります。
(過去ブログ:腰痛に腹筋は良いの?、ダメなの?腹筋運動で腰痛が悪化した人へ。)
ただ筋力トレーニングは使い方を誤らず、取り入れ方次第では、非常に多種多様なメリットをもたらしてくれます。
言いにくいことではありますが、実を言うと、リハビリ業界でも一部、筋力トレーニングが軽視されているきらいがあります。
リハビリは基本的には傷害が起きた後の対応となるといった状況なのであれですが、仮にリハビリ職の人に「傷害予防をするなら?」と尋ねると、固有感覚トレーニングと筋力トレーニングでは恐らく、固有感覚トレーニングの方に力をいれると答える人の方がかなり多いと思います。(私の主観ですが)
(勿論、そちらをプログラムに多く取り入れる方が良い場合もあります。)
というのも、私自身がこういった論文を読むまでは、固有感覚トレーニングと筋力トレーニングでは、傷害予防の効果としては、良くて同等くらいか、それか固有感覚トレーニングの方が効果は高いのではないかなといった印象を持っていました。
しかし、この論文に限って言えば、筋力トレーニングの方が傷害予防効果が高いことがわかります。
それも、エビデンスレベルの高いものとなるので、それなりに信頼して問題ないと思います。
少なくとも無視すべきではないと言えます。
3.雑記:運動にかかわる職種間の違い。
お恥ずかしい話、私自身、過去に筋力トレーニングというものを軽視していた時期があります。
ただ様々な論文を読んでいくにあたって、そうした考えも変わり、今では必要かつ適応となると感じた場合は、かなり積極的に取り入れるようにしています。
トレーナー系の資格を取得したのもそういった背景があります。
実はちょっとしたあるあるで、リハビリ系のセラピストとトレーナーは度々、考えの違いで衝突する場面があります。
十把一絡げにはしたくないのですが、私個人の印象としては、リハビリ職とトレーナーには良くも悪くもそれぞれに、少し偏ったカラー(傾向)があると感じています。
リハビリ職の強味は何といっても深い機能解剖に沿ったリハビリ治療行為です。
リハビリ行為は必ず、医師の指示のもとで実施することが定められているので、当然ながら医学の知識が必須となります。
ただリスク管理部分が徹底している反面、それより少し先の領域の運動面、、、それこそ筋力トレーニングの重要性に関してはやや軽視されているというか、もっと深く学ぶべきではないかなと感じる場面があります。
現に、米国理学療法士協会では無駄な医療撲滅運動として、不十分な量の筋力トレーニングを処方しないように注意喚起する声明をだしています。
(参照:Choosing wisely)
(これに関してはまた別途、とりあげたいと思います。)
良くも悪くも専門性が高いため、その弊害として、木を見て森を見ず状態に陥りやすい印象を持っています。
反対にトレーナーは、かなり筋力トレーニングの重要性について理解をもっています。
そしてトレーナー業をやっている人は、トレーニング好きが多いので、トレーナー系の勉強会に行くと、やはり体格やスタイルの良い人が多い印象があります。
勉強した内容を、自ら体現している人が多いため、それは非常に尊敬できる部分です。
(裏を返せば、自らの成功体験だけで盲目的に自信を持ってしまい、適応とならない人にまでも同じメソッドを提供してしまうリスクがあるといったケースがなくもないのですが、、、)
その反面、機能解剖の部分や障害(傷害)のリスク管理に関しては、配慮が足りていない場面が見受けられます。
というよりは、一般的なトレーナーは医療従事者ではないので、当然ながら医学の部分を深く勉強するといった機会をつくることが難しいので、どうしてもそうなってしまうといった現状なのかもしれません。
私自身はというと、スタートはどっぷりとリハビリ畑の人間(医療業界)でしたが、とあるきっかけでトレーナーの分野、フィットネス業界にも興味を持ちましたが、個人的にそれはすごいよかったと感じています。
というか、そもそも論として、私は作業療法士なので、理学療法士やトレーナーが発信するような内容をこのブログで書いている時点で、少しおかしいと言われればその通りなのですが、、、。
そういう意味では両方とも畑違いになってしまいますね、、、笑
ただそんな少し異質な部分のある私でも、できれば、このギャップ部分を少しでも埋めれるような情報発信を当ブログでもできたらなと思っています。
理学療法士、作業療法士、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、トレーナー(メディカル、アスレチック、ストレングス)、整体師などは、時に同じように扱われてしまうことがありますが、こうした違いも追々紹介できたらなと思います。
少し脱線してしまった上に、ややマイナス面に関して触れてしまいましたが、それぞれの強味や良いところも雑記的な感じで紹介していきたいと思います。
そもそも、リハビリ職とトレーナーでは、専門とする領域が違えば、対象となる人も異なるので違って当然だと思います。
しかし、そうした職種同士がまったく平行線な言い争いをしているのをみると、すごく勿体なく感じるのは私だけではないと思います。
それぞれの良いところは積極的にとりいれ、足りないところは補い合うといった関係が理想ですね。