今日は少し実践的なことをご紹介します。
膝の痛みがある人は勿論、現在痛みのない人も確認しておいて損はないと思う内容です。
膝の痛みの原因は様々ですが、その中でも非常に多く遭遇するケースの多いものをご紹介します。
膝関節というものは普段から自分の体重を支えているだけあって、まっすぐと上からかかる力(負荷)に対しては非常に強いのですが、その反面ねじれるような力に対しては脆弱で痛みを誘発しやすいといった特徴を持っています。
そのため、膝のねじれがあるかないかといったことは膝の痛みと密接に関わってきます。
1.膝の捻じれ。
膝のねじれの有無は、膝の痛みを抱えている人のリハビリをする際に私は必ずチェックする要素の1つです。
変形性膝関節症の人は健常な人と比べて膝の動きが違う。
前回にブログで変形性膝関節症についてご紹介しましたたが、
膝の動きを3次元運動計測した研究によるものですが、そのポイントを簡単に参照すると以下のようになります。
【健常な人の膝の動き】
- しゃがむ動作などでは膝が曲がってくるに伴い、緩やかに太ももの骨は外に捻じれる動き(大腿骨外旋)を示した。
- 階段の上がり降りでは膝が伸びてくるに伴い、緩やかな内まきの動き(大腿骨内旋)を示した。
- 屈曲100度から120度までの膝の関節の接触位置は、正常膝と同様の内側ピボットパターン(medial pivot pattern)を示した。
【変形性膝関節症(内側型)】
- 正常膝に比べ、太ももの骨の内ねじり(大腿骨内旋)の偏りが見られ、後方への移動が少なかった。
- 膝が伸びきる(伸展位)付近の膝では、スクリューホーム運動(膝の伸びに伴う外ねじり)は観察されなかった。
- 変形性膝関節症患者(内側型)の体重がかかった状態での膝の運動は正常な膝の運動とは異なる。
- 関節面と靭帯の病理学的変化は、観察された膝関節の運動学的異常と対応している。
だいぶ割愛したのに加え、少し専門的なことも含む細かい話になるのでわかりにくいかもしれません^^;
ただこれは別に完全に理解する必要はなく、ある程度イメージで理解していただく程度で構わないと思いますが、重要なことなのでご紹介させていただきます。
「そういう背景があるんだな」といった捉え方程度でも構いません^^
少し順を追って説明します。
健常な人の膝の動き。
膝に関して有名な研究で、MRIを用いて生きている人の膝の運動を調べた研究があるのですが、それによると実は、私たちの膝は曲げ伸ばしをする際には微妙に捻じれる動きが伴っているということがわかっています。
特に体重がかかった状態での膝の曲げ伸ばしの際にそうした徴候が大きく現れることが確認されています。
この研究によると、
- 体重がかかった状態での膝の動きとしては膝を伸ばしきった状態から、120°曲げるまでに大腿骨外側顆(太ももの骨の外側部分)は22mm後方へ移動する。
- 120度から完全にしゃがみ込むまで、さらに10mmの後方移動があり、大腿骨外側顆はほとんど後方へ亜脱臼しているようになる。
といったことが報告されています。
(Hamai S et al.Knee kinematics in medial osteoarthritis during in vivo weight-bearing activities .J Orthop Res. 2009 Dec より画像引用)
少しわかりにくいかもしれませんが、動きとしては膝を曲げる際には太ももの骨は外ねじり(=脛の骨が内ねじり)の動きが、反対に膝を伸ばす際には太ももの骨は内ねじり(=脛の骨は外ねじり)の動きが伴うことがわかっています。
まず間違いなく意識に上がらないような細かい動きとなりますが、私たちが普段の中で何気なく膝の曲げ伸ばしをしている際にもこういった動きが伴っています。
実はこの何ともなさそうな細かい動きが、膝の機能としてはこの上ないくらいに非常に重要な要素の1つとなっています。
膝の細かな動きが膝の痛みに大いに関わっている。
というのも最初に変形性膝関節症の人の膝の動きは健常な人と比べて違うといったことをご紹介しましたが、まさにこうした本来備わっている細かな膝の動きの異常が痛みの原因となっていると考えられるケースに沢山遭遇します。
と疑いたくなるかもしれません。
これはなかなか体験しないとわからないことかもしれませんが、こうした動きが改善されるだけで膝の痛みがかなり軽減するケースが多く存在します。
更に言うと、こうした動きの悪さがあるのは何も変形性膝関節症の人だけでなく、レントゲン上は変形があまりなく、それほど問題のない画像所見であるにも関わらず、膝の痛みがあるといった人にもこうした正常の動きの異常が認められることが多くあります。
(膝がねじれるとなぜ痛みが出やすいのかといった理由については次回ご紹介します。)
そういったケースの人にもこうした正常から逸脱した動きを改善することで痛みが軽減したり、消失したりするといったことは多く見受けられます。
このあたりの評価に関しては専門的となりますが、まず膝のこうした異常がないかを確認する第一歩目の方法の一例として冒頭に紹介した膝の捻じれをチェックするといったことが非常に重要となってきます。
安静時の膝のねじれを確認する。
というのも動かす前の段階で既に関節の位置がずれていると、膝の曲げ伸ばしといった動きを出す際に自然と伴うはずの良い意味での捻じれ運動が阻害され、正常の運動ができなくなってしまう可能性が高いからです。
そのためまず確認すべきことの第一歩目として、
2.膝のねじれのチェック方法。
早速、その膝の関節の位置関係のチェック方法をご紹介します。
膝のねじれのチェック手順。
方法は以下の通りとなります。
- 膝を伸ばした状態で力を抜く。
- お皿の骨(膝蓋骨)を確認する。
- 脛の骨のでっぱったとこ(脛骨粗面)を確認する。
- お皿の骨の真ん中(場合によっては外の縁(ふち))と脛のでっぱったとこの位置関係を確認する。
その2つは以下の黄色の丸で囲んだところになります↓
(https://visual-anatomy-data.net/kokkaku/detail-patella.html より画像引用し黄色線は筆者が付記。)
黄色で囲んだこの2つの位置関係を確認することで膝の捻じれ状態を知ることができます。
解剖図と実際の膝(右)を並べると以下のようになります↓
そして実際の膝の膝蓋骨と脛骨粗面を確認すると以下のようになります↓
黄色で書いているのが膝蓋骨と脛骨粗面になります。
そしてこの2つの位置関係を確認する際のポイントは赤の破線部分になります。
1つは【膝蓋骨の真ん中から下に引いた線】で
もう1つは【膝蓋骨の外の縁(ふち)から下におろした線】になります。
上の写真のように脛骨粗面が膝のお皿の中央からおろした線に対して少し外側にあるのが正常となります。
脛骨粗面は膝蓋骨の外の縁からおろした線を越えないのが正常。
そして、もう1つ注意して見ていただきたいのが膝蓋骨の外の縁からおろした線との関係です。
というのも膝の痛みを抱えている人は、この脛骨粗面の位置が膝蓋骨の外の縁からおろした線を越えて大きく外側へずれている人が非常に多いからです。
つまり、脛の骨が外にねじれているといった状態を意味します。
普段リハビリ現場で働いていても、同じ人でも痛みのある方の膝と痛みのない方の膝を比べると、痛みのある方の膝だけが大きく外にねじれているといった状況によく遭遇します。
本当にびっくりするぐらいに沢山遭遇します^^;
骨の位置関係さえわかって、慣れればすぐにできる確認方法なので興味ある方はぜひ試してみてください。
細かい話をすると、膝関節の位置関係を確認する前にお皿の骨の動きが制限されていないかなど事前に確認する必要のある細かい注意事項はありますが、まずはその細かい部分は置いといて、手軽に試してみて自分の膝の状態を簡易チェックしたり、他の人と比べてみると面白いと思います。
特に現在、膝に違和感や痛みがある人でこの脛の骨の外ねじりが確認された人は要注意です^^;
次回は(レントゲン上でもあまり問題のない人であったとしても)なぜこの脛の骨が外にねじれると痛みが出やすいのかといったことについてご紹介したいと思います。
3.まとめ
- 変形性膝関節症の人と健常な人の膝の動きは異なっている。
- 膝の痛みと密接に関係しているのは”膝のねじれ”の有無。
- 膝のねじれは膝の適切な動きを阻害する可能性がある。
- 変形のない人でも膝のねじれがあると痛みを生じやすい。
- 膝のねじれチェックのための指標は”脛骨粗面”と”膝蓋骨”
- 正常な膝は脛骨粗面が膝蓋骨の外の縁からおろした線を超えない範囲におさまっている。