運動の要:負荷量の重要性と適切な設定方法とは?

運動をする上での重要な1つの要素として“負荷量”があります。

今日はそんな負荷量についてまずは導入程度に書いていきます。

 

1.適した負荷量はニーズによって変わる。

 

運動といえば、ストレッチ、筋肉トレーニング、有酸素運動などが代表格ですが、これらもそれぞれ、手法や負荷量の設定次第で運動の効果が変わってきます。

 

そこで

 

負荷量はどれくらいが良いの?

 

という質問に対しての答えは、

 

その人が、どんな効果を求めるのかによって適切な負荷量は変わってきます。

 

例えばストレッチならば、

  • 筋肉を伸ばし(柔軟性を高め)たいのか、
  • 筋肉の温度を高めたいのか、
  • 筋肉の緊張を落としたいのか

といった感じで適したストレッチの手法が変化します。

 

筋肉トレーニング有酸素運動の負荷量ならば、

  • 筋肉を大きく(肥大)したいのか、
  • 筋肉は極力大きくせずに筋力を高めたいのか、
  • 特定のパフォーマンスを高めたいのか、
  • 筋持久力を高めたいのか、
  • 全身持久力を高めたいのか、
  • 疾病予防効果を期待したいのか、
  • 自律神経機能を改善したいのか、
  • 運動の継続を優先したいのか、

といった風な目的によって、取り入れる手法や負荷量というものは変わってきます。

 

今日はまずは導入部分のみを書きます。

 

入門としてのトレーニング原則について書いた後、まずはスタートの超簡易的な1つの目安を提示します。

それ以外の目的別の負荷量については少しずつまたブログに綴っていきたいと思います。

 

まず入門のトレーニング原則についてですが、この原則を意識するかしないかで、トレーニングの質が左右されます

 

そんなトレーニングを取り入れ、効果を得たいならまずは最低限抑えておきたい原則を紹介します。

 

 

2.最低限、意識したいトレーニング原則4選

 

人間の持つ機能は、使わなければ退化し、適度に使えば発達するが使いすぎると萎縮してしまう
(ウィリアム・ルー)

 

これは生理学の基本原則「ルーの使用の法則」というものです。

 

読んでの通り、

 

人の機能は使わなさすぎても、使いすぎても能力が低下するリスクがあります。

 

なんともわがままな話ですね(笑)

 

そのため、“適度に使う”ことが機能維持及び向上にとても重要になってきます。

 

中庸の徳という言葉があるように運動にしても、何事もほどほどにということですね。

運動でいうこの“適度に使う”というのが難しいのですが、運動の効果を上げるには必要な要素となります。

 

その適度を作るための負荷量設定なのですが、負荷量を設定する上で、大前提となるこの”ルーの使用の法則”を基にしたトレーニングの原則があるのでそれを先に紹介していきます。

 

まずは4つの原則を簡単に紹介します。

 

1つ目は、

オーバーロード(過負荷)の原則

 

これは筋肉の活動力を高めるには、日常で使用するよりも高い運動刺激を課す必要があるというものです。

 

これは比較的わかりやすいと思いますが、トレーニングをして身体機能を向上するわけですから、トレーニングをしていない普段の日常と変わらないような刺激では変化が見込めないのは想像できるのではないかと思います。

ただこの筋肉の機能を高めるにしても、以前のブログ(見かけの筋力低下)でも触れたように、筋肥大(筋を大きく)を狙うのか、筋力向上を狙うのかでこの負荷量も変わってきます

 

ちなみに余談ですが、数年前までは筋肥大を狙うなら高強度でないといけないというのが通説でしたし、そうしたことを聞いたことがあるかもしれません。

 

2009年頃まではアメリカスポーツ医学会でもそうした声明を出していましたが、現在は必ずしもそうではないといった現状です。

 

長くなるので今回は詳細を省きますが、現在は低強度であっても、「総負荷量」が高ければ筋肥大が見込めることがわかっており、アメリカスポーツ医学会も声明を変えそれに準じています。

更にその総負荷量も1回の総負荷量というよりは、週単位の総負荷量で考えるのが良いようです。

 

2つめの原則は、

「漸進性の原則」

 

これは筋力レベルの増加に合わせて次第に負荷刺激を高めていくことに加え、負荷のかけ方を高度化・効率化・細分化していく。といったものです。

 

これはトレーニングをしていくにつれ、負荷の強度や量を増やし、トレーニングの手法の難易度も上げていくというものです。

 

どんなことでもそうですが、仕事や勉強、スポーツやゲームにしてもある程度できてくると物足りなくなってくるという経験はないでしょうか。

トレーニングでもそれは同じであり、また飽きてくるだけでなく、全く同じ負荷と量、難易度で行っていると次第に効果が頭打ちになります。

 

そのため、ある程度トレーニングに適応したらそれらの負荷量を増やし、場合によってはトレーニング方式の難易度も変えステップアップしていく必要があるというものです。

 

 

3つ目は、

「継続性の原則」

 

これは、筋肉と筋力に限らずですが運動の効用を得るには、目的に合った運動をある一定期間以上継続していくことが必要である。というものです。

 

なんだかんだ言って、運動やトレーニングをする当事者としてはここが凄く難しいと思います。

3日坊主になってしまったり、ジムに入会しても数ヶ月もしたら退会してしまったなどを経験した方も多いのではないでしょうか。

また同時にここの改善方法に関しては、まだまだ学問的にも発展途上で面白い部分かなと思います。

 

運動に限らず何かを継続するために、

  • 行動変容の理論があったり、
  • 認知行動療法のような心理療法が利用されたり、
  • ゲーミフィケーションのように楽しむ要素を取り入れることで継続性を高めたり、
  • そもそも個人の意思では限界があるため環境を変える重要性が説かれたり、
  • それに行動経済学の知見が活かされたり、

といった感じで枚挙にいとまがありません。

 

こういったことも将来的にどんどんブログに綴っていきたいなと思います。

 

ちなみに有酸素運動などは、人によっては退屈であったり非常に辛いと感じる人もいるかもしれません。

有酸素運動も心肺機能を高めたり、自律神経機能の調整に適した負荷量だけでなく、面白いことに”運動の継続性”に焦点を当てた負荷量というものも存在します。

 

またこの継続性に関連しては、”トレーニングの可逆性”というものがあり、得られた効果は永久に持続することはなく、続けないとまた元に戻ってしまいます。

 

それだけではなく、それ以前より悪化した状態になることもあり得るため、その点でも運動の継続というのは非常に重要になってきます。

 

 

そして4つ目ですが、

「特異性の原則」

 

 

これはトレーニングは与えた運動刺激によって効果が異なるので、目的にあった運動を選択してトレーニングをする必要がある。というものです。

 

これはスポーツ選手なら特に重要になってきます。

 

スポーツは競技によってその競技特有の動き、運動というものがあります。

 

よく競技に精通した選手の動きを見ると、その動きのしなやかさや滑らかさに感動したことはないでしょうか。

まさにあれはその競技特有の動作に対して、筋肉が最適解の働きをした結果であるとも言えます。

 

そうした動きを獲得するには、要求された課題に対して、いかに筋肉が特有の適応を示すかが重要になってきます。
(SAID:Specific Adaptation to Imposed Demandsと呼ばれます。)

 

そのため、トレーニングをする際にも実際のスポーツ動作にできるだけ類似した運動様式を取り入れ、筋肉やそれに指令を送る神経系の協調性を高めていくことがポイントになります。

 

以上、4つの原則を紹介しましたが、主にこれら4つの原則はデータ的にも確認されており、比較的信頼性も高く現在の通説となっています。

 

その他にも

全面性の原則 バランスよく、トータルに高めていくことを推奨。
個別性の原則 年齢,性差,体力,体格,健康状態などの個人差を考慮した上でトレーニング内容を選択。
意識性の原則 トレーニング理論(目的、方法、効果)についても理解し取り組む。

といったことも重要となりますが、最初のうちは先に紹介した4つの原則の方をおさえておけば良いと思います。

 

 

3.こだわりがないならこの負荷量からスタート(超簡易版)

 

最初に述べたように、最適な負荷量の設定は目的によって変わってきます

そのため一概にこれ!とは言えないので、各目的別の負荷量については追々書いていきたいと思います。

 

ただ、全く運動習慣がない人であれば少しでも運動を取り入れるメリットは多分にあるので是非運動はお勧めしたいと思います。

 

そんな中でも全く目安がないのもなんか張り合いがないと思うので、1つの基準を紹介したいと思います。

 

その基準は、”2008 Physical Activity Guidelines for Americans”というガイドラインより引用したいと思います。
(参照:https://health.gov/sites/default/files/2019-09/paguide.pdf)

 

なぜこのガイドラインを引用するかというと、、、

これは”Leisure time physical activity and mortality: a detailed pooled analysis of the dose response relationship”という論文でも分析されており、6つの研究データを分析(66万1137人の男女と11万6686人の死亡を含む)した結果によると、この身体活動ガイドラインを満たすことはほぼ最大に長寿をもたらす利益と関連していると結論付けているからです。

 

そのため、何も目安がないのであればこのガイドラインを参考にすると良いのではと私は思っています。

 

このガイドラインによると、運動に関しては有酸素運動筋肉強化の両方を推奨しています。

 

まず【有酸素運動】に関しては、1週間で中等度の負荷で150分程度、もしくは激しい強度で75分程度を推奨しています。

 

ここでいう中等度とは少し強めのウォーキング程度(競歩ではない)のようです。
(激しい強度は競歩やランニング、縄跳びレベル。)

 

イメージとしては、1週間で150分(2時間半)、少し歩幅の大きいウォーキングや早歩きをする時間を作ると良い感じですね。

 

私は歩くのが元々好きなので、1週間あたり2時間半と考えると、私の印象としては比較的取り入れやすいかなと思います。

 

また、余裕のある人はここから更に追加で運動量を増やすとより健康上の利益を得られると述べられています

その追加の運動量が、中等度であれば1週間で300分、激しい強度であれば1週間で150分としています。

また1週間でこれだけの時間を確保できれば良いのですが、共通して言えることは最低でも1回が10分以上の運動であることを推奨しています。

 

次に【筋肉強化】についてですが、筋肉強化で健康上の利益を得るなら中等度から高強度の運動を1週間に2日以上、主要な筋肉のグループを満遍なく使うことが良いとされています。

 

筋肉強化の方法に関しての詳細は記載されていませんが、上の条件を満たしていれば良いということであると思うので、運動初心者の方にとっては個人的には自重トレーニングチューブトレーニングをお勧めしたいなと思います。

 

ジムでのウェイトトレーニングも勿論良いのですが、、、

  • 慣れない人であれば怪我をするリスクが少なからずあるのと、
  • ジムの月会費などの金銭的なコスト
  • とりかかるまでの心理的ハードルが高い

などのことから先述した運動の継続性を踏まえると、まずは家の中でもすぐにできることから始めて、試してみるのが良いのではないかと思います。

 

運動の初心者の方で、ジムでウェイトトレーニングを行う際は理想を言うと、初心者のうちは効率よく、怪我なく運動を行えるように
指導してくれるトレーナーがいる環境が適していると思います。

 

自重トレーニングの方法やチューブエクササイズの方法、チューブ選びのポイントについてもポイントやお勧めがあるのでまた是非書いていきたいと思います。

 

今日のところは、まずは運動の負荷量について私なりの導入部分を簡単に書かせてもらいました。

 

4.まとめ

 

  • 負荷量設定はどんな効果を求めるかで変わってくる。
  • 運動をするなら最低限のトレーニング原則を押さえておく方が効率的。
  • 日常よりも高い負荷で、場合によっては難易度・負荷を上げていき、続けることがポイント。
  • 競技成績を上げたいなら、その競技に類似した運動様式のトレーニングを入れると良い。
  • 導入部分としてまずは、有酸素運動は中等度の負荷で1回10分以上で150分/週、
    筋肉強化は中~高強度で身体の部位を満遍なく使い、2日/週以上の頻度で取り入れる。

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