【リハビリの秘密】意欲と運動効果の関連性について。

リハビリとは何かのきっかけで低下した能力の再獲得を図る行為であると言えます。広い意味ではリハビリは能力低下・社会的不利のある人を環境に適応できるように訓練するだけではなく、社会統合を促すために、環境や社会へ、全体として介入することなどを目標としています。

ただ今日はシンプルに、一般的にイメージしやすい身体機能の改善といった意味でリハビリという言葉を使わせていただきます。

そんな身体機能の改善を図るリハビリですが、、、

 

実は当人の「意欲・やる気」次第で同じ内容の運動を行ったとしても効果が異なる可能性があることをご存知でしょうか。

 

頭では運動をやらないといけないとわかっていても辛い人もいるかもしれません。

 

しかし実は、

嫌々ながら運動をするのと、自発的に取り組むのでは運動(身体機能改善)の効果が異なる可能性が指摘されています。

 

これは人工的に脳梗塞を起こしたラットをあるグループに無作為に振り分けて比較した研究なのですが、それを参照すると、車輪走行による自主的な運動を行った群とトレッドミルで強制的に運動を行わされた群では、運動機能の回復が異なっていた事が報告されました。

具体的には自発的に運動したラットでは海馬のBDNF(神経栄養因子)濃度が有意に高く、強制的に運動させられていたラットと比べて運動機能の回復が大きかったと報告されています。
(※神経栄養因子とは神経系が分泌する、神経細胞の生存維持、神経系の成長や修復などを制御するたんぱく質の総称を指します。)

また、同時に自発的に運動したラットは、他のグループと比べてコルチコステロン(ストレスホルモン)のストレス反応が少なかったようです。

 

 

それと比べて、強制的に運動をさせられたラットはというと、、、

 

  • ストレスが高く
  • 脳内BDNFレベルが低く
  • 運動機能の回復も少ない。

 

といった最も好ましくない介入方法であることが示唆されたと報告されています。

(参照:Zheng Ke et al.The effects of voluntary, involuntary, and forced exercises on brain-derived neurotrophic factor and motor function recovery: a rat brain ischemia model. PLoS One. .)

 

ただ1つ補足しておきたいのは、これらはあくまでもラットでの研究結果なので、必ずしも人に対しても同様に当てはまるかどうかはまだ言い切れないことでもあるので、その点はあまり早合点しないことにも注意が必要です。

しかし、私は神経系でなく、運動器系のリハビリを専門としていますが、これはリハビリの従事者からすると経験知的にそれなりのあるある話でもあります。

肌感覚的なものにはなりますが、

というのも意欲の高い人と低い人では、やはり平均すると身体機能の回復やそのリハビリ効果といったものにはそれなりに大きな差があるように感じます。

入院リハビリはともかく私の場合は外来リハビリなので、患者さんのリハビリ頻度としては概ね週に1,2回、1回あたりの時間は20分か40分といった程度になります。

そうした少ない時間であっても、やはり病態や身体機能等などの条件が近い人であったとしても、意欲(やる気)の差によって回復スピードが違うように感じる場面は多くありました。

回復力の早さに逆に私の方が驚かされることは今でも意外と多くあります。

病は気からとはよく言ったものですが、リハビリ分野でもなかなかそう思わされる場面はよく経験しました。

個人的なエピソードですが、意欲の高い人を見ると、逆に私の方が自然と励まされる場面もあり変な話、そうした患者さんにはこちらが感謝でした^^

 

ちなみに先ほどご紹介したのは脳卒中に対する運動効果の結果でしたが、実は不安や抑うつなどの心理面に対する運動の効果に関しては、意欲の有無に左右されないことが示唆されています。

これも同じくラットによる研究なので、必ずしも人も当てはまるかという疑問の余地は残りますが、その研究結果によると、たとえ強制されていると認識された運動でも情動や精神的健康に役立つ可能性があることが示唆されています。

(参照:Benjamin N Greenwood et al. Exercise-induced stress resistance is independent of exercise controllability and the medial prefrontal cortex.Eur J Neurosci. 2013 Feb.)

 

そのため、可能性の域を出ないことではありますが

  • 身体機能などの運動スキル部分に関しては意欲の有無が結果を左右する可能性がある。
  • 不安や抑うつといった心理面に関しては、本人の意欲に関係なく強制的な運動であっても良い効果をもたらす可能性がある。

といった特徴が示唆されています。

 

なのでもし心理面、、、気分が晴れない人などは仮に気が全く乗らなくても、ひとまず少しでも身体を動かしてみるのもメンタルヘルス的には悪くないと思います。

あくまでも参考程度に^^

今日はそんな意欲(やる気)が運動効果にもたらす可能性についてのご紹介でした。

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