体操や筋力トレーニングにおいてフォームが重要であることは聞いたことがあるかもしれません。 というのも同じような体操、トレーニングでもフォーム次第で効果が変わるだけでなく、場合によっては身体を痛める原因になる可能性もあるからです。
それとほぼ同義ではありますが、身体の動かし方というのも非常に重要となってきます。 専門用語でMotor Control(運動制御)ということもありますが、要は身体を動かす器用さになります。
そしてその同論文から6つのテストというものご紹介しますが、それに2つ以上引っかかった場合は、(あくまでも腰の話にはなますが)動かし方の調整機能が良くない、、、
いわゆる不器用であるといった評価結果になるので、興味があれば一度、そのテストを行い自分の身体の動かし方の器用さをご確認ください。 (当然ながら本当はそれをチェックできる人がいることが理想です。)
1.テストの背景:腰痛持ちの人は平均して2つ以上が陽性。
まずそのテストについて書かれた論文の背景を簡単に説明すると、 スイスの外来理学療法診療所で実施された研究であり、そこで210名の被験者(腰痛のある人108名、腰痛のない人102名)に対して6つのテストを用いて腰椎の動かし方の器用さを評価しました。
その結果、腰痛患者は平均して2つ以上(2.21)の陽性所見を認めたというものです。 (腰痛のない人は0.75) その研究は腰痛のある人と、ない人との間で腰の動きの器用さに有意差があることを示した初めての研究であると言われています。
(参照:Hannu Luomajoki et al. Movement control tests of the low back; evaluation of the difference between patients with low back pain and healthy controls.BMC Musculoskelet Disord. 2008.)
そのため腰痛のある人の中で、もしかしたらそうした身体の使い方に問題があって痛みを生じている可能性があることを確認したり、腰痛のない人でも身体の使い方が不器用であればそこから将来的に腰痛が起きる可能性も否定できないので、ご興味ある方はそんな身体(腰)の動かし方の器用さチェックとして試してみてください。
(くれぐれも腰痛のある方は注意をしつつ、行うにしても痛みのない範囲で行ってください^^;)
2.腰痛に関係する身体の器用さチェックテスト。
それでは早速、その研究で実際に行われた6つのテストについて簡単にご紹介したいと思います。(写真については全て同論文から引用しています。) 先ほども書きましたが、
【テスト1】体幹の姿勢をキープして股関節を曲げることができる。
(画像引用:Hannu Luomajoki et al. Movement control tests of the low back; evaluation of the difference between patients with low back pain and healthy controls.BMC Musculoskelet Disord. 2008.)
テスト内容:体幹をまっすぐの状態で股関節を曲げる。 正常(写真左):体幹をまっすぐに保ったまま股関節を50~70°曲げることができる。 陽性(写真右):腰が曲がったり、過度に反るといった代償動作があったり、股関節を50°以上曲げることができない。
【テスト2】立った状態で骨盤だけを後ろに傾けることができる。
(画像引用:Hannu Luomajoki et al. Movement control tests of the low back; evaluation of the difference between patients with low back pain and healthy controls.BMC Musculoskelet Disord. 2008.)
テスト内容:立った状態で骨盤を後ろに傾ける動作を行う。(骨盤後傾) 正常(写真左):胸椎がまっすぐ(中間位)のまま、骨盤の後傾動作が可能。 陽性(写真右):骨盤後傾ができない。胸椎の代償動作がある。(曲がる、過剰に反る)
【テスト3】片足立ちをした時のおへその移動距離を測定し、その差が2cm未満である。
(画像引用:Hannu Luomajoki et al. Movement control tests of the low back; evaluation of the difference between patients with low back pain and healthy controls.BMC Musculoskelet Disord. 2008.)
テスト内容:片足立ちを行う(両足交互に)。その際におへその横への移動距離を測る。 正常(写真左):おへその横への移動距離の左右差が2cm未満。 陽性(写真右):おへその横への移動距離が10cm以上、または左右差が2cm以上。
【テスト4】座った状態で腰の骨を動かさずに膝を伸ばすことができる。
(画像引用:Hannu Luomajoki et al. Movement control tests of the low back; evaluation of the difference between patients with low back pain and healthy controls.BMC Musculoskelet Disord. 2008.)
テスト内容:座った状態で腰椎をまっすぐ(中間位)のまま、片膝を伸ばす。 正常(写真左):腰椎を中間位のまま膝を伸ばすことができる。(伸び切らなくても良い) 陽性(写真右):膝を伸ばす際に腰椎が曲がる。または中間位だと膝を伸ばすことができない。
【テスト5】四つ這いで腰の骨を動かさずに骨盤を前後に移動できる。
(画像引用:Hannu Luomajoki et al. Movement control tests of the low back; evaluation of the difference between patients with low back pain and healthy controls.BMC Musculoskelet Disord. 2008.)
テスト内容:四つ這いで腰椎をまっすぐ(中間位)のまま、骨盤を前後に移動させる。(開始姿勢は股関節の曲がり角度が90°) 正常(写真左):腰椎中間位のまま、後方移動では股関節120°、前方移動では股関節60°までの曲がり角度で行うことができる。 陽性(写真右):骨盤の後方移動の際に腰椎が曲がる、もしくは前方移動の際に腰椎が過剰に反ってしまう。
【テスト6】うつ伏せで腰が動かずに膝を90°まで曲げることができる。
(画像引用:Hannu Luomajoki et al. Movement control tests of the low back; evaluation of the difference between patients with low back pain and healthy controls.BMC Musculoskelet Disord. 2008.)
テスト内容:うつ伏せで、片側の膝を90°まで曲げる。 正常(写真左);腰椎が動かない。 陽性(写真右):膝を曲げるに伴い、腰が反ったり、ねじれたりする。
これら6つのテストの内2つ以上が陽性であれば、腰椎のMotor control(運動制御)不全、平たく言うと身体(腰)の動かし方が不器用であるといった評価結果となります。
2.テスト結果について。
とは言っても
というのも、腰椎の変形だったり、潰れているといった器質的な障害がない限りは基本的にこうした不器用さというものは練習によって改善が見込めます。
さらに言うと、仮に変形などがあったとしてもこの器用さというのはある程度改善することが可能ですし、そういった人であっても身体の使い方を器用にしておくことには大きなメリットがあります。
こうしたMotor control(運動制御)についてのエビデンスベースの効果や反対にその限界点、練習方法といった内容についても追々取り上げていきたいと思います。