知らなかった!?肥満と筋肉増加の意外な関係について解説。

筋トレ界隈でよく言われる提言。

 

「筋肉をつけるにはたんぱく質が大事!」

 

耳にしたことがある人は多いと思います。

 

中には聞き飽きた言説かもしれません。

 

これを少し専門的に言い換えると、筋肉をつけるにはタンパク質同化・合成が重要ということです。

 

筋肉の萎縮や肥大は、タンパク質量に依存するといわれています。

 

 

私たちの身体に存在するタンパク質は合成(同化作用)分解(異化作用)を繰り返しています。

そのため、理論上、筋肉の肥大と萎縮の関係は以下のような関係が成り立ちます。

 

  • タンパク質の合成>分解の関係であれば、筋肥大する。
  • タンパク質の分解>合成の関係であれば、筋委縮する

 

 

もちろん、これ以外の要素も影響します。

例を挙げると、筋肉の血流その他栄養素ホルモンの関係なども影響してきます。

 

ただ、筋肉の構成要素の主であるタンパク質が非常に重要であることに違いはありません。

 

事実、筋肉量の維持・向上にタンパク質の合成は必須の要素となります。

 

 

ところで、あなたは「年齢を重ねると若い時と比べて筋肉がつきにくくなる」ということを聞いたことはないでしょうか。

 

 

何歳になっても筋肉はつくことはつきますが、若い時と比べて筋肉がつきにくいのは事実です。

 

 

この現象の代表的な理由として、高齢者ではこのタンパク質の合成反応(同化反応)が若い人と比べて弱いことがわかっています。

 

こういったタンパク質の合成反応が低下することを【タンパク質同化抵抗性】と言います。

 

仮に同じ量の栄養を摂っていたとしても、高齢者のほうが筋肉の合成量が低くなるのです。

 

加齢による筋力低下・筋肉量の減少のことをサルコペニアといいますが、高齢化になっている近年、非常に関心の高い分野の1つになります。

 

 

 

余談ですが、筋肉量の減少であるサルコペニアですが、やせ細ってしまった人をイメージする人も多いかもしれません。

しかし、サルコペニアは何も痩せた人だけに限りません。

サルコペニアと肥満が合併した【サルコペニア肥満】という病態も存在します。

 

そのため「体格が良ければ(?)大丈夫!」というものではないことには留意が必要です。

 

 

そして、今日ご紹介したい内容なのですが……実はこの”タンパク質同化抵抗性”……

 

高齢者だけでなく、ある特徴をもった人にもこの傾向(タンパク質同化抵抗性)が認められるといった報告があります。

 

 

 

その傾向を認められた特徴というのが、肥満です。

 

結論を先にいうと、肥満の人はそうでない人と比べて、筋肉がつきにくいという可能性が示唆されているのです。

(参照:Joseph W. Beals et al.Obesity Alters the Muscle Protein Synthetic Response to Nutrition and Exercise.Front Nutr. 2019)

 

同じ量のタンパク質を摂取しても、同じ負荷量の運動療法を実施したとしても、肥満の人はそうでない人と比べて、たんぱく質の同化作用に対して抵抗性を持っていることが報告されています。

 

その原因としては、肥満に認められる脂質蓄積、インスリン抵抗性、炎症がこの問題の根源にあると考えられています。

 

過去に痩せすぎであるリスクについてブログでとりあげたことがありますが、肥満もまた同様に身体に様々な負の影響をもたらします。

 

肥満の人の脂肪細胞には、脂肪細胞の数の増加とその脂肪細胞自体の肥大が認められています。

加えて、肥満の人の脂肪組織では、炎症性サイトカインの増加と抗炎症性サイトカインの減少といった調節障害が生じていることがわかっています。

 

肥満と聞くと、単純に余ったエネルギーが脂肪という形で身体に蓄えられているだけのように感じます。

 

しかし、身体の反応としては、体重の増減によって脂肪組織の細胞成分は大きく変化するのです。

そういった組織の変化が、脂肪組織の機能障害を引き起こしたり、メタボリックシンドロームの原因になっていると考えられています。

 

 

こうした肥満における脂肪組織の変化は、多くの免疫担当細胞の相互作用により慢性炎症が誘導されることがわかっています。

 

こういったことから近年では、肥満は炎症性疾患であるといった見方がされています。

(参照:小川佳宏:肥満と自然炎症.日薬理誌)

 

一般的な肥満やサルコペニアに対する生活習慣の見直しとして、高いレベルで推奨されているのは以下のようなものがあります。

 

  • 十分な食物摂取は減量に有用である。
  • 高齢者肥満症では、可能であれば、食事療法と運動療法の併用が望ましい。
  • 運動療法はガイドライン推奨レベルに達してなくても心血管発症・重症化リスクを低下させる。
  • 座位行動の減少は心血管発症・重症化リスクを低下させる。
  • 体重減少には食事摂取エネルギーの減量が有効である。
  • 運動療法は減量(体重減少)にはあまり効果的でない。
  • サルコペニアやフレイル予防の予防のためには、蛋白質を1.0g/kg目標体重/日以上摂取することが望ましい。

 

(参照:肥満症ガイドライン2022)

 

ただ、今回ご紹介したように肥満の人は炎症や代謝障害の影響があり、食事や運動の効果が健常者で異なる状態であることが示唆されています。

 

そのため、今後の研究で、そういった「肥満に伴う代謝異常が食事と運動に対するタンパク質合成反応にどのように影響するのか?」について、更なる新しい発見が出てくることを期待したいところです。

 

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