度々このブログでも取り上げていますが、肥満度の判定にはBMIを用います。
(BMI=体重(kg) ÷ 身長(m)の2乗)
そして日本肥満学会の基準で言うと、BMI25以上であれば”肥満”と位置付けられます。
しかし、そもそも論ですが
という答えに対して、肥満について厚労省のe-ヘルスネットを参照すると以下のように記載されています。
「肥満」とは、体重が多いだけではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。肥満は、糖尿病や脂質異常症・高血圧症・心血管疾患などの生活習慣病をはじめとして数多くの疾患のもととなるため、健康づくりにおいて肥満の予防・対策は重要な位置づけを持ちます。(e-ヘルスネットより一部引用)
そうです。
そのため、今回は主に生活習慣病のリスク管理に焦点を当てた肥満予防について、まずは知っておきたいことを4つご紹介していきます。
・肥満について知っておきたいこと4つ!
① 生活習慣病のリスクを減らしたいのであれば、目標値はそんなに高く設定しなくても良い。
まずダイエットする上で陥りやすいこととして、最初に設定する目標値が高いということがあります。
良し悪しは別として、以前紹介したことのある美容体重やシンデレラ体重などを目指すなら目標値は確かに自然と高くなってしまいます。(むしろ高すぎますが^^;)
(痩せすぎていることのデメリットについては 痩せていることのデメリットって何? を参照。)
しかし、もし肥満による生活習慣病のリスクを下げたいことが目的なのであれば、何もそんなに最初から目標値を高くしすぎる必要性は低いといえます。
どういうことかというと、、、
実は過体重の日本人の肥満関連の危険因子や状態改善のために必要な最小の体重減少量を調べた追跡研究によると、体重減少率が3%以上5%未満および5%以上のグループで測定されたすべての肥満関連の数値が有意に改善されたことが報告されています。
(参照:Akiko Muramoto, et al:Three percent weight reduction is the minimum requirement to improve health hazards in obese and overweight people in Japan.Obes Res Clin Pract. Sep-Oct 2014.)
これらの結果から同論文では肥満の日本人において、肥満に関連する危険因子や疾患を改善するために必要な最小の体重減少は3%であると結論付けています。
つまり、たった3%の減量であっても肥満の合併症の改善に有効であることがわかっています。
またそれ以外の資料も参考にすると、米国心臓病学会にある肥満の管理に関するガイドラインを臨床家がどのように現場に導入するのかがベストかといったことを書いた内容のものを読むと、、、
最初の体重減少目標は6ヶ月間で5~10%が現実的であるとしています。
そして同時に、それくらいの適度な体重減少であっても、脂質、血圧、グルコース値などの心血管代謝の危険因子を大きく改善することができると書かれています。
これらを参照すると、肥満による生活習慣病のリスクを下げたいのが目的なのであれば、まずは最低3%の減量を目指し、さらに可能であれば6か月かけて5〜10%程度まで頑張ってみるのが良いと考えられます。
私自身の考えとしては美容体重やシンデレラ体重の推奨はできませんが、過体重の方の減量は当然ながら非常に有益であると考えています。
そのためまずは生活習慣病のリスクが下がるとされている最低ラインを知っていると目標が立てやすいだけでなく、まずは3%程度の減量だけでも意味があるんだとわかることで少し気が楽になると思い、今回紹介させてもらいました。
② 5%以上の減量でも実は難しい。
ただ気が楽になると言っておきながらではありますが、同時にこの数%の減量、、、「それなら簡単だ」と思う方もいるかもしれませんが侮ってはいけません^^;。
現状を確認してみると、、、
実はこの数%の減量であっても思いの外、達成することが難しいことが指摘されています。
肥満予防のプログラムを専門家にサポートしてもらいながら減量に励むことができればそれに越したことはないのですが、当然ながら誰もがそういった恵まれた環境に身を置けるとは限りません。
そのため多くの方は、ある程度自分で情報収集しながらもダイエットに励んでいる方が多いと思います。
しかし先ほどの米国心臓学会の同じページを読んでいくと、オンラインシステムや通信手段を使ってそういった介入を受けていたとしても(ポジティブな報告もあるとはいえ)、体重減少結果は対面での介入に比べてあまり良くはなく、5%以上の体重減少を達成した人は5〜45%であったと報告されています。
そのため、そういった環境であっても過半数以上が達成できない現状を見ると言うに及ばず、
たとえ数%の減量であっても自分の力だけでやるには相当に難易度が高いことがわかります。
③ 減量達成後もある程度の身体活動量の維持は必要である。
また仮にそのような難易度の高い減量をこなした後も、その減量後の体重をキープするにはある程度の身体活動量は必要であると考えられています。
成人の体重減少とそのリバウンド予防のための適切な身体活動の介入戦略について書かれた論文を参照してみると、
まず肥満の成人への健康増進のための身体活動の最低ラインは中強度の身体活動を150分/週としています。
そして長期的に体重減少を測るのであれば時間を増やし、200~300分/週を推奨しています。
その他の情報もまとめると
- 150~250分/週の中強度の身体活動→体重増加の予防に有効である。
↪︎予防には有効であってもこの活動量では体重減少はわずかしか見込めないとされている。 - 150~250分/週の中強度の身体活動に中程度の食事制限を付け加えることで体重減少につながる。
- 250分/週の中強度の身体活動は臨床的に有意な体重減少と関連している。
としています。
(参照:Med Sci Sports Exerc. 2009 Feb.) American College of Sports Medicine Position Stand. Appropriate physical activity intervention strategies for weight loss and prevention of weight regain for adults.
これを参照すると、
減量後もリバウンド予防のためにも中強度の運動を1週間で2.5~4時間以上は確保する必要があると考えられます。
④ 予防であれば毎日でなくても、まとめて運動し身体活動量を確保するのも有効である。
仕事や学校が忙しい方にとっては中々、毎日運動時間を確保することは難しいのが現状ではないでしょうか^^;
事実、以前は成人は1週間のうちのほとんどの日にち、もしくは毎日運動することが推奨されていたようです。
しかし、カナダの身体活動量とメタボリックシンドロームについて検討したある研究によると必ずしも毎日運動を行わなければならないわけでもないことがわかります。
メタボリックシンドロームとは肥満と非常に関連の強いものですが、“メタボ”という名前でよく聞いたことのある人も多いと思います。
このメタボリックシンドロームの定義は国や機関によって変わるのですが、肥満の中でもお腹の内臓に脂肪がたまり腹囲が大きくなる「内臓脂肪型肥満(内臓肥満)」によって様々な生活習慣病のリスクが上がってしまっているようなことを主に指します。
(参照:e-ヘルスネット)
そして先ほどのカナダの成人を対象にしたこのメタボリックシンドロームと1週間の身体活動の頻度との関連を検討した研究によると、実はメタボリックシンドロームと身体活動の頻度自体はあまり関連していないことがわかっています。
その論文によると、1週間の身体活動の頻度は成人のメタボリックシンドロームとは独立して関連しておらず、
1週間の総合的な身体活動量とメタボリックシンドロームが強く関連していたと報告しています。
(参照:Appl Physiol Nutr Metab. 2013 Jul.) Is the frequency of weekly moderate-to-vigorous physical activity associated with the metabolic syndrome in Canadian adults?.
つまりは普段の仕事が忙しくて、毎日運動時間や一定の身体活動量を確保することの難しい人でも週末や休みの日などにまとめて運動をこなすことによってこれら生活習慣病のリスクを減らすことが可能であると考えられます。
そのため若い人であれば体力もあるため、頻度高く運動ができなくても休日などにまとめてこなすといった方法も1つの手だと思います。
・おわりに
以上、肥満予防のために最低限知っておきたいことを4つご紹介しましたが、難しいことですがやはり運動は何よりも継続が重要となります。
そのためにはあまりハードルを上げすぎないことが大切だと思います。
すでに過体重の方でもまずは3%の減量を目標に頑張ってみるのがオススメです。
またそれでも大変な方であれば、まずは今より毎日10分だけでも身体活動量を上げることで糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、ロコモ、うつ、 認知症などになるリスクを下げることができると厚労省は推奨しています。
(参照:健康づくりのための身体活動指針)
なのでどんなことでも良いので、まずはできることから少しでも始めることが大切です。