肩の痛みを感じたら要注意!腱板断裂の症状と対処法とは?

今日は肩の痛みの原因となる”腱板断裂”についてご紹介します。

 

肩の痛みといえば、”五十肩”といった言葉を良く聞くと思います。

 

そんな五十肩とは区別されるのですが、腱板断裂も肩の痛みの原因となる運動器疾患の代表例の1つです。

 

1.腱板断裂の”腱板”って何?

 

腱板とは、回旋筋腱板と呼ばれる肩の筋肉のことを言います。

 

この回旋筋腱板は、何か特定の1つの筋肉のことではなく、肩にある4つのインナーマッスルのことをさします。

 

 

 

 

そして、この上のイラストにある肩のインナーマッスルのどれかが断裂してしまったものを腱板断裂と呼びます。

 

その4つの中の筋肉の中でも、棘上筋と呼ばれる筋肉が最も損傷されやすく、好発部位とされています。

 

 

 

 

2.腱板断裂の割合と特徴は?

 

日本整形外科学会のHPを参照すると、この腱板断裂は特に40歳以上の男性に好発し、発症年齢のピークは60代とされています。(男性62%、女性38%)

 

五十肩の違いとしては、肩の痛みはあるものの、肩の動き自体はそれほど制限されないといった特徴が挙げられています。

(動きの制限や関節の拘縮を伴うケースも存在します。)

 

反対に、腱板断裂によくみられる症状としては、肩を動かしたときの痛みや、夜寝ている時の痛みなどがあります。

(参照:公益社団法人 日本整形外科学会)

 

 

肩のインナーマッスルが切れてしまうので、一見、痛いのは当然だと感じるのではないでしょうか。

事実、損傷の程度や症状の経過によっては、手術となってしまう場合もあります。

 

 

3.腱板断裂の意外な事実。

 

しかし、実はこの腱板断裂、、、以外な事実も報告されています。

 

それは、

 

腱板断裂があっても、症状がない人も多く存在していることがわかっているのです。

 

 

インナーマッスルが切れているのにも関わらず、肩を問題なく普通に動かせるといった無症候性の腱板断裂というのが多く確認されています。

 

 

断裂した腱板は元通りになるといったことは期待できません。

一度、断裂してしまった腱板は、基本的に断裂したままとなります。

 

これを聞くと、少しショックかもしれませんが、朗報もあります。

 

実はこの腱板の断裂の重傷度と痛みの強さといったのは、必ずしも一致しないということもわかっています。

 

そのため、現在の通説としては程度にもよりますが、断裂したからといって、絶対に手術しなければならないというわけではありません。

 

 

断裂はしてはいるものの、気にせず肩を動かすことができて、日常生活には何ら支障なく今まで通り、使い続けることができているといったことは特別珍しいことではありません。

 

 

 

事実、私もそういった人を多く見てきています。

 

そのため腱板断裂の治療としては、最終的にはそうした無症候性の腱板断裂を目指すといった考え方がされています。

 

 

4.無症状の腱板断裂。

 

日本人683名を対象に行われた研究では、その683名(1,366肩)のうちの20.7%に存在したといった報告があります。

(男性229名、女性454名、平均年齢57.9歳(範囲:22~87歳))

 

肩の痛みなどの症状がある人の内の36%に腱板断裂を認めましたが、症状のない人であってもその内の16.9%に腱板断裂を認めたそうです。

(参照:Atsushi Yamamoto et al:Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general population.J Shoulder Elbow Surg. 2010)

 

また別の研究で、肩の痛みのある人を対象にした調査によると、

肩の痛みのある588人のうち、212人は両側の腱板が無傷でしたが、199人は片側の腱板断裂、177人は両側の断裂が認められたといった報告があります。

(参照:Ken Yamaguchi et al:The demographic and morphological features of rotator cuff disease. A comparison of asymptomatic and symptomatic shoulders.J Bone Joint Surg Am. 2006)

 

こういった調査報告を参照してみても、腱板断裂というのは決して他人事ではなく、(症状の有無に関わらず)比較的身近にあり得るものだと言えます。

 

 

またこれら同論文によると、年齢と腱板断裂には高い相関を認めています。

 

つまり、年齢が高くなるほど、腱板損傷を認めやすいということです。

 

事実、腱板損傷は若い人であれば、何かしらの外傷をきっかけに発症することが多いのですが、年齢が上がるほど明らかな外傷がなくとも腱板損傷に至るケースが多くなります。

 

 

腱板断裂は腱の退行変性を基盤としており、老化によるcomon disease(日常的に高頻度で遭遇する疾患、有病率の高い疾患)として位置づけられています。

 

しかし、そうは言っても

 

腱板断裂は肩のインナーマッスルが切れた状態なので、手術しなければならないのでは?

 

と心配になるかもしれません。

 

 

確かに手術が必要となるケースもあります。

 

しかし、先ほど紹介したように、腱板断裂は比較的身近な疾患です。

 

何の症状もない人は当然ながら、病院に受診することはありません。

にわかに信じがたいですが、実はそんな中の人にも、実は発見されていないだけで、もしかしたら腱板が切れているといった人がいる可能性があるような疾患です。

(仮に腱板が断裂していても、症状がなければ基本的に問題となりません。)

 

加えて、腱板断裂に関しては、手術は適切な痛みの管理やリハビリを行ったうえで検討すべきとされている疾患です。

 

手術適応となる例としては、断裂のサイズが大きく、筋力低下を認める場合や拘縮が合併している場合、若い人の外傷性の完全断裂、肩甲下筋腱の完全断裂といった場合などが挙げられます。

 

ただ、こういったケースで手術をした場合でも、肩の機能障害があると、たとえ腱板の修復状況がよかったとしても、手術後の痛みが長引き、最終的な治療成績も劣る傾向になると言われています。

 

また、仮に手術後に再断裂が起こったとしても、継続したリハビリにより良好な肩の機能改善が得られれば、良好な治療成績となり得るケースも少なくないと言われています。

 

そのため、腱板断裂の治療はリハビリによる機能改善が非常に重要になると言われているため、私のようなリハビリ職としては、非常に責任を感じる疾患でもあります。

 

こういったことから腱板断裂は、器質的な問題と同等以上に、肩の機能的な問題をみていくことが大事になる疾患となります。

 

次回は、そんな症状のある腱板断裂と、腱板断裂はあっても症状のない人の肩の機能の違いについて、少し紹介したいと思います。

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