あなたの睡眠は大丈夫?睡眠の質を良くする手軽な方法についてのご紹介!

「いつも眠たい」、「眠っても熟睡感がない」、「寝つきが悪い」といった悩みはありませんか。

 

「何か手軽に睡眠の問題を解決できそうな方法ってないの?」

今日はそんな睡眠の問題解決の一助となり得る情報についてご紹介したいと思います。

 

1.「睡眠」は現代人の悩みの一つである。

人の睡眠は短くなっている!?

睡眠は現代人に多い悩みの一つです。

睡眠障害ガイドラインによると、日本人の平均睡眠時間は1960年では 8 時間13 分程度だったようです。

それに対して2005 年には 7 時間 22 分であり、約 1 時間短くなっているといった報告がされています。

また就寝時刻についても、1960年では 22 時に就寝している人は66%でしたが、2005 年には 24%に減少していると報告されています。

特に働き盛りの40,50代の睡眠時間は7時間ちょっとであり、週末に1時間ほど長く寝ることで睡眠時間の帳尻を合わせているといった現状のようです。

つまり、昔と比べて現代人の方が睡眠時間が短い傾向にあることがわかっています。

私も元々、睡眠時間は短いタイプでした。

私は20代くらいまではショートスリーパーだと勝手に思っていました。睡眠時間は平均すると4~5時間くらいだったような気がします。

ただちょっとしたきっかけで睡眠時間を長くとるようになった際に、非常に調子が良いことに気が付きました。

今では私自身、睡眠を重視した生活を送るように心がけています。

おかげさまでかはわかりませんが、正直なところ、体感的には心身ともに20代よりも今の方がずっと調子が良いです。

体力的にも今の方がだいぶ良い自覚があります。

振り返ってみると私はショートスリーパーでは全くなく、ただ単に慢性的な寝不足が当たり前になっていただけだったんだろなと思います(笑)

 

運動にとっても睡眠は欠かせない存在である。

ちなみに運動につなげていうと、睡眠不足はトレーニングのパフォーマンス低下痛みの増悪因子となり得ることもあって非常に問題です。

事実、慢性疼痛の改善には睡眠も重要な要素であることが示唆されています。

 

それ以外にも、睡眠障害は2型糖尿病高血圧のリスク増加やうつ病や自傷行為などの精神疾患のリスクまで高めると言われています。

 

2.睡眠の質を上げる方法とは?

睡眠の質を上げるには?

今日はそんな様々な健康と切っては切れない関係にある”睡眠”について取り上げます。

今日取り上げる内容は端的にいうと、「睡眠の質を上げる効果が見込める方法」についてのご紹介です。

 

ただ補足として、睡眠障害の分類は一説では約80種類もあると言われているため、必ずしも今回ご紹介する内容が全員にあてはまるわけではないことについては注意が必要となります。

 

睡眠の質をあげるのに、とある飲み物が有効である可能性が示唆されています。

 

その飲み物とは”牛乳”です。

「ホットミルクを飲むと寝つきが良くなる」といったことを聞いたことがある人はいるかもしれません。

私もそのようなアドバイスを受けたことがあります。

そんな昔から聞かれるアドバイスの有効性の有無について、実際に論文を基に紹介したいと思います。

(参考論文:Jinzhong Xu et al.Associations between Milk Intake and Sleep Disorders in Chinese Adults: A Cross-Sectional Study.Nutrients. 2023 Sep 21;15(18):4079.doi: 10.3390/nu15184079)

 

3.牛乳が睡眠の質向上に役立つ理由とは?

牛乳が睡眠の質を高める生理学的根拠とは?

まず「牛乳が睡眠の質を高める」といった点についての生理学的根拠をご紹介します。

牛乳にはメラトニン、トリプトファン、生理活性ペプチドといった睡眠の質を高めるのに不可欠であるものが多く含まれています

 

メラトニンとは?

それぞれを簡単に説明すると、まずメラトニンは身体のリズム調節に重要な役割を果たしています。

人の身体の体温やホルモン分泌といった基本的な機能には約24時間のリズムが存在します。

このリズムのことを概日リズム(サーカディアンリズム)と言いますが、メラトニンはこれに対する調整作用があります。

血中メラトニン濃度は昼間に低く、夜間に高値を示すといった特徴があります。

加えて、太陽の光や照明といった強い光によってメラトニン分泌量は低下することがわかっています。

「寝る前にスマホを見るのは睡眠に良くない」といったことはよく聞くと思いますが、その理由としてスマホの光によってメラトニンの分泌量が低下するといった理由もあるのです。

 

トリプトファンとは?

次にトリプトファンですが、これは日中はセロトニンという別名「幸せホルモン」の1つである神経伝達物質を生合成するのに必要なものです。
(オキシトシンやドーパミンも幸せホルモンと呼ばれています。)

それと同時に、夜間時には先ほど紹介したメラトニンに変化するといった特徴を持っています。

トリプトファンはセロトニンやメラトニンの原料となる成分なのです。

トリプトファンは体内でつくることができない必須アミノ酸の一つであるため、食事から摂取する必要があります

 

生理活性ペプチドとは?

最後の生理活性ペプチドはアミノ酸が複数繋がってできた分子です。

役割としては、内分泌系や摂食や飲水、性行動、睡眠覚醒などの本能行動、自律機能の調節といった生命維持に重要な働きを担っています。

 

牛乳は睡眠の必須要素が詰まっている。

牛乳はメラトニンの原料となるトリプトファンが多く含まれていることや、牛乳の主成分であるカゼインを消化酵素で分解することで生理活性ペプチドが生成されます。

このように牛乳には睡眠に不可欠と呼ばれるもの多く含まれているといった点が、牛乳が睡眠に良いとされる生理学的根拠となっています。

 

4.本当に牛乳を飲むことは睡眠の質向上に役立つの?

本当に牛乳は睡眠の質を高めるの?

ただし、いくらメカニズム的に効果が期待・説明できるというだけでは根拠不十分です。

「実際に牛乳を摂取することが睡眠に対して効果的かどうか」に関しては、しっかりとした検証なしに結論をだすことはできません。

 

そんな疑問解決の一助として、今回は実際に牛乳摂取と睡眠障害の関連性を調査した研究についてご紹介します。

簡単に述べると、「牛乳を摂取している人と、そうでない人とで睡眠の質に差はあるのか?」について調べた研究です

 

睡眠と牛乳の関係を調べた研究の概要。

研究の概要は以下のようになります。

  • 28~95歳の成人768名が参加した。
  • 参加者は、1週間あたりの平均牛乳摂取量に応じて分類。
    →まれにしか摂取しないグループ(≤62.5 mL/週)と定期的に摂取するグループ(>62.5 mL/週)の2グループ。
  • 牛乳摂取量は10種類の食品を含む食品摂取頻度質問票を用いて評価。
  • 睡眠障害の評価としてピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。

 

研究結果。

その結果はというと、睡眠障害や睡眠障害の有病率の低下と牛乳摂取との間に正の関連があるといったものでした

この研究の結果としては、「牛乳を週62.5mL以上摂取している人は、62.5mL未満の人に比べて睡眠の質が良かった」ことが報告されています。

5.研究結果に対する注意点とは?

研究結果の補足①

ただ、この研究の結果についていくつか補足しておきたいこともあります。

先ほどお伝えした通り、牛乳の定期的な摂取が睡眠障害の低下と関連していることが結果として報告されています。

しかし、同時にこの結果には”性差”があったことも報告されています。

 

男性においては牛乳の摂取量と睡眠障害の関係について逆相関が認められましたが、女性ではそうした関連は認められませんでした。

 

つまり、女性に関しては牛乳の摂取量が多かったといって、睡眠障害の割合が少なかったといった関係が認められなかったのです。

これはどういうことでしょうか。

 

研究結果に性差があった理由とは?

これについては以下のような考察がなされています。

  • 女性は男性よりも心理的及び社会的なプレッシャーにさらされている。
  • 女性は中年以降にかけて生理的な変化があることが影響しているのではないか。
    →男性と異なり、女性は更年期にはエストロゲンレベルが急激に低下し、脳内のセロトニンの利用量も減少しやすいといった背景がある。

 

女性の閉経に伴う内分泌の変化は45歳前後から始まるとされていますが、この研究に参加された女性の98.5%はは45歳以上であり、まさにこれに該当するものでした。

こういった今回の女性参加者の特徴的な年齢分布が性差を認めた結果を表した可能性が指摘されています。

言い換えると、「年齢分布が違っていれば牛乳と睡眠の関係については、女性にも男性と同様の傾向があるのではないか」といった可能性が考えられます。

 

研究結果の補足②

もう一点、補足したいこととしては、今回ご紹介した研究は”横断研究”であるという点です。

というのも、横断研究では因果関係の有無は証明できないからです。

横断研究でわかることは、あくまでも”相関関係”であるという点はおさえておきたいポイントです。

 

こういった研究は経年変化の評価ができない点や、逆の因果関係によっても影響を受けるといったデメリットが存在します。

そのため必ずしも今回の結果だけをもって「牛乳の摂取をしたら睡眠の質を改善する」といった結論付けをするには早計です。

 

牛乳以外にも睡眠を促進する食物についての臨床研究は存在します。

そういったことに関してもまた別の機会にご紹介できればと思います。

 

また今回ご紹介した論文でも使用されていたピッツバーグ睡眠質問票(PQSI)は代表的な睡眠尺度であり、世界的に使用されているものになります。

日本語版も存在するので、もし自分の睡眠に関して気になる方は一度試してみるのも良いのかなと思います。

(参考論文:Jinzhong Xu et al.Associations between Milk Intake and Sleep Disorders in Chinese Adults: A Cross-Sectional Study.Nutrients. 2023 Sep 21;15(18):4079.doi: 10.3390/nu15184079)

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