腰痛に腹筋は良いの?、ダメなの?腹筋トレーニングの落とし穴とは?

腰痛には腹筋が良いというのは、聞いたことあるかもしれません。

 

しかし同時に、腹筋運動をしていて腰痛が出た、悪化したといった事例を聞いたことがある人もいるかもしれません。

 

一見すると、この2つは相反するような内容ですね。

 

腰痛には腹筋が良いって聞いたのに、腹筋運動をしたら腰痛が悪化(出現)した。

 

こうなると

結局、腹筋運動って腰に良いの?悪いの?

と言いたくなりますよね。

 

 

 

結論を言うと、この正反対の印象を受ける2つの事例ですが、実は両方とも正しいと言えるのです。

 

 

腰痛に腹筋運動が良いのは事実です。

しかし、それと同時に腹筋運動で腰痛が悪化したり、腰痛がでてしまう場合もあります。

 

 

今日は、こうした相反する事例がなぜでるのかについて、ご紹介したいと思います。

 

 

まず腰痛について腹筋が良いと言われる理由ですが、それは様々な理由があります。

その中で一例をあげると以下のような研究報告があります。

 

1.腰痛に腹筋が良いと言われる理由。

 

腰痛経験の有無と腹部筋群との関連を明らかにすることを目的とした研究があります。

詳細は省きますが、腰痛のある人とない人の腹筋を調査した結果、腰痛にて受診経験のある人は,ない人と比較して腹横筋と呼ばれる筋肉が薄かったことが報告されています。


(論文内では正確には、慢性腰痛などで受診経験のある群、長時間の立位・坐位での腰痛やときどき腰痛が出現したことはあるが受診経験のない群、腰痛を経験したことのない群の3グループに分類しています。)

 

筋肉が薄いとは、その筋肉が弱っていると解釈してもらうとわかりやすいと思います。

つまり、腰痛のある人はない人と比べて、お腹の筋肉(腹横筋)が弱かったのです。

 

お腹の筋肉が弱いなら、鍛えれば良いと考えるのが通常です。

 

細かい話を抜きにすると、それ自体は非常に有効な方法であると考えられます。

 

そして、弱ったお腹の筋肉を鍛えるために腹筋運動をする、、、ここまでは良いのです。

 

ただこの時に選ぶべき運動を間違えると、腰痛を起こす可能性があるのです。

 

 

これは単純にフォームが間違っているといった場合に限りません。

 

たとえ、フォームが完璧であったとしても、選ぶトレーニングを間違えると腰痛が発生するリスクがあるのです。

 

 

そこで重要となるのが、アウターマッスルとインナーマッスルという概念です。

 

 

2.アウターマッスルとインナーマッスルとは。

 

アウター、インナーという名前の通りですが、イメージとしては以下のような関係となります。

 

  • アウターマッスル:身体の表面にある筋肉。主に大きな動作を行うのに必要となる。
  • インナーマッスル:身体の奥にある筋肉。主に関節の安定性を高めるのに必要となる。

 

 

ちなみに先ほどご紹介した、研究で腰痛のある人は弱っていたことが判明した腹横筋と呼ばれる筋肉はインナーマッスルになります。

 

察しが良い人は気づいたかもしれません。

 

腹筋運動をフォームも正しく行って、痛みが出てしまった人の多くは、アウターマッスルを鍛えるようなトレーニングを選んでいる場合が多いのです。

 

アウターマッスルに関しては、近年は悪いイメージで語られることも多いですが、私はそうは捉えていません。

 

ただ、インナーマッスルを働かせることのできない人が、アウターマッスル優位のトレーニングを選んでしまった場合が問題となるのです。

 

別にインナーマッスルが適切に働いている人が、アウターマッスルを鍛えるトレーニングを取り入れること自体は問題がないと考えられます。

 

インナーマッスルが働かないと、関節の安定化を図ることができません。

インナーマッスルが働かずに、アウターマッスルを働かせている状況とは、言い換えると身体の中の関節が安定されていないまま、身体を動かしている状況なのです。

 

関節が安定していないので、当然ながら関節はぶれますし、変な動きをします。

 

少し専門的な言い方をすると、関節の本来持つ生理的な回転軸から離れたところに外力が作用することで、関節周辺に過剰なストレスを与えてしまうのです。

 

こうしたストレスの反復は身体を痛めてしまうことに繋がります。

 

よくある下のような腹筋運動↓

 

この腹筋運動自体が問題であるわけではありませんが、これはまさにアウターマッスルが優位な運動となります。

 

少なくとも、上の絵のような運動をするなら、その前提として、インナーマッスルを働かせることのできる身体である必要があります

 

インナーマッスルを働かせることができない人が、こうした運動を繰り返してもインナーマッスルを鍛えることは、ほぼできません。

 

この運動はインナーマッスルを鍛える運動ではなく、インナーマッスルが既に使えている人が取り組むべき運動なのです。

 

例えば、先ほど腰痛持ちの人は腹横筋が弱っていたことをご紹介しましたが、腹横筋は腰椎の動きが制限されているときに、他の腹筋よりも活動が高かったといった研究報告がされています。

(腰椎の動きと腹横筋の筋電図に逆相関を認めた。)

(参照:Donna M Urquhart er al.Abdominal muscle recruitment during a range of voluntary exercises . Man Ther . 2005 )

 

つまり、上の絵のような身体が大きく動いているような動作であると、腹横筋(インナーマッスル)よりもそれ以外のお腹の筋肉(アウターマッスル)ばかり活動性が高くなってしまうのです。

 

そうなってしまうと、まさにインナーマッスルが働かずに、アウターマッスルばかりが働き続けるといった状況になってしまいます。

 

ただでさえインナーマッスルが働かない人が、このような運動を繰り返してしまうと、痛めてしまうリスクばかりが高くなってしまいます。

 

もし、腰痛予防や腰痛を気にして行うなら、ターゲットとすべき筋肉はアウターマッスルではなく、インナーマッスルです。

 

3.腰のインナーマッスルについて。

 

また、補足でもう1つご紹介したいことがあります。

 

慢性腰痛を抱えている人は、そうでない人と比べて多裂筋とよばれる筋肉が小さくなってしまっていることが確認されています。

 

筋肉が小さくなっているとは、筋肉が萎縮してしまっていることを意味します。

 

先ほどの腹横筋はお腹の筋肉でしたが、多裂筋は腰にある筋肉になります。

 

そして重要なのが、この多裂筋もインナーマッスルです。

 

更に、このインナーマッスルである多裂筋は、片側に腰痛のある人では、その痛い側の多裂筋が萎縮していたことが報告されています。

 

加えて、同論文でインナーマッスルである多裂筋をターゲットとした運動は、腰痛の再発率を下げたといった報告もされています。

(参照:J A Hides et al:Long-term effects of specific stabilizing exercises for first-episode low back pain.Spine (Phila Pa 1976). .)

 

 

いかかでしょうか。

先ほどの腹横筋もそうですが、多裂筋といったインナーマッスルも腰の痛みに対して非常に深く関わっている筋肉とされています。

 

こうしたことから、腰痛に対してインナーマッスルを鍛えることが推奨されているのです。

 

4.結論。

 

冒頭に話を戻します。

 

腰痛には腹筋が良いと聞くけど、腹筋運動をしていて腰痛が出た・悪化したという話も聞きますが、、、。

一見、相反するようなこの2つの事柄は何もおかしいことではありません。

 

『腰痛に腹筋は良いのか?悪いのか?』

 

 

その答えは、腰痛に対して、インナーマッスルを鍛える(賦活する)腹筋運動は良いのです。

ただ、腰痛に対して、アウターマッスルを鍛えるような腹筋運動はリスクが高く、おススメできないのです。

 

そして、腹筋運動をして腰が痛くなった人は、インナーマッスルが働かずに、アウターマッスル優位となっている可能性が非常に高いと考えられます。

 

運動をする上でフォームは命といって過言ではありませんが、それ以外にも選ぶ運動の種類も非常に重要になってきます。

 

腰痛がある人や、腰痛がなくても腹筋運動をすると腰が痛くなってしまう人は、インナーマッスルが働いていないケースが多いのです。

 

そうした人は、いかにフォームが正しくても、アウターマッスル優位の運動ではなく、まずはインナーマッスルを働かせるのに特化した運動を選択する必要があるのです。

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