肩こりの複雑さと治療の真実。医学の現状と課題について。

今日は一種の国民病とも呼べる肩こりについて少し触れていきます。

 

1.肩こりの原因は現代医学でもわからない?

 

厚労省の国民生活基礎調査(2019年)によると、病気やケガ等で自覚症状のある人は人口1,000人当たり302.5人(有訴者率)とされています。

 

症状別で見ると、男性では第1位が腰痛、次いで肩こりとなっております。

一方、女性では第1位が肩こりで次いで腰痛といった現状です。

 

そんな男女ともに有訴者率の高い一種の国民病とも言える肩こり症状ですが、実は病因や病態が十分に解明されていないのです。

 

医学が発展した現代でもこの肩こりに関してはまだまだ解明されておりませんが、その中でも現在わかっている範囲のことについて少しご紹介したいと思います。

 

2.肩こりの種類とは?

 

肩こりは原因の有無で大きく2種類に分けられます。

原因が不明であるものを原発性肩こり、原因が明らかであるものを症候性肩こりにと分類することがあります。

(場合によってはこれに心因性が加わることもあります。)


 

  • 原発性肩こりでは過労、体型、不良姿勢、精神的緊張感などが関連していると考えられています。
  • 症候性肩こりは基礎疾患と関連して発症する症状であり、これは原因の基礎疾患を治療することにより肩こりは改善されると考えられております。

 

ただ症候性肩こりでも基礎疾患をきっかけに肩こりが出現し、そこから痛みの悪循環へと陥ってしまっている場合は原発性肩こり的な治療も必要ではないかと考えられます。

 

症候性肩こりについては各診療科のほとんどすべてに関連して見られますが、大まかな例は下記にある通りです。

 

 

肩こりと関連があると報告されている疾患例

整形外科 頚椎疾患、胸郭出口症候群、頸肩腕症候群、手根管症候群、その他肩関節疾患など
循環器 高血圧、狭心症、心筋梗塞など
消化器 胃、十二指腸、肝、胆、膵臓を含むほとんどの消化器疾患など
呼吸器 胸膜炎、肺尖部腫瘍、横隔膜下膿瘍など
眼科関連 遠視や近視の視力障害、Visual Display Terminal(VDT)作業による眼精疲労など
耳鼻科 外・中・内耳の炎症、内耳性のめまい、耳管開放症、鼻腔及び副鼻腔炎など
歯科関連 顎関節症など
精神神経科 うつ病、心身症、神経症など
その他 脳出血、脳梗塞、片頭痛、自律神経失調症、貧血など

 (篠崎哲也:肩凝りの特徴と理学療法への留意点.理学療法ジャーナル.pp397,2015
森本昌宏:肩こりの臨床:適切な診断と治療のために.近畿大医誌 第35巻3,4号 151~156,2010より一部引用)

 

上記の表の症候性肩こりでは当然、原因の基礎疾患の治療が優先されます

 

一方、原発性肩こり対する治療は保存療法が原則となります。

 

しかし、この原発性肩こりに対してはエビデンスを伴う治療がほとんどなく、対症療法として行われているのが現状です。

 

そんな肩こりですが、このブログのテーマでもある医学的に見た運動との関連を少し紹介したいと思います。

 

 

3.運動による肩こりの治療の注意点とは?

 

肩こりの治療としては薬物療法やトリガーポイント注射、神経ブロック療法、鍼灸療法、物理療法など多種ありますが、その中でもこのブログのテーマでもある運動による肩こり治療について触れたいと思います。


 

運動による肩こり治療のメリットとしては”安全かつ誰でもできる簡便さ“があげられます。

 

そんな運動療法ですが、先述した通り、残念なことに、肩こりに対して有効な方法についてはまだまだエビデンンスが不足しているのが現状です。

 

しかし、同時に原発性肩こりの治療手段の中では、まだ多少なりともエビデンスがあるものが運動療法であるとも言われております。

 

 

詳細はまた次回以降で書いていきたいと思いますが、ひとまず今日は運動療法を行う際の一般的な注意点3つ紹介します。


 

1つ目は、どんな運動でも運動を行う際はリラックスすることが重要で、過度に力を入れた運動は避けることが推奨されています。

 

2つ目は、肩こり予防も含めてストレッチを行う際は、正しい方法でゆっくり、反動をつけずに優しく行うことが推奨されています。

 

人によってはついつい物足りず、もしくは達成感を得たくて強くやりすぎてしまう方もいるかもしれません。気持ちはわかのですが、普段私が患者さんの施術をしている際でもこれは強く感じます。

肩こりに限らずこうした病態に対して強い負荷をかけてしまうことは、逆に症状を悪化させてしまうことのリスクの方が大きいのが現状です。

そのため、焦らず、程よい負荷で運動を継続していただくことが一つのポイントとなります。


 

 

そして最後の3つ目ですが、いわゆる通常の肩こり以外に何か変わった症状が見られた場合には、運動を行う前に必ず医療機関や医師に相談することが推奨されています。

 

先述したように症候性肩こりの場合は、原因の基礎疾患の治療が優先されるべきであり、その基礎疾患により肩こりが出現している可能性があります。そういう場合は当然ながらまずは医師に相談されることが1番となります。

 

 

次回以降は、この肩こりについて私の経験等も踏まえて比較的おすすめできるものを紹介していきたいと思います。

 

4.まとめ

 

  • 自覚症状の多さランキングで肩こりは男性では2位、女性では1位であり一種の国民病とも言える。
  • 肩こりの種類には症候性肩こりと原発性肩こりがある。
  • 症候性肩こりでは原因の基礎疾患の治療が優先される。
  • 原疾患の不明な原発性肩こりの有効な治療法のエビデンスはまだまだ不十分。(その中でも運動は比較的推奨されている。)
  • 運動のポイントはリラックスすることであり、正しい方法で優しく行うことが推奨されている。

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