「筋肉を伸ばす最適な時間は?スタティック・ストレッチングの効果的な長さについて解説。

前回、前々回とストレッチについて取り上げましたが今日は少し実践的な内容を書いていきたいと思います。

 

ストレッチには多種多様な種類があります。

その中でも柔軟性の改善目的として使われる有名なものとしてスタティック・ストレッチングがあることを紹介させていただきました。

 

前回のブログで書きましたが、身体のセンサーの1つであるゴルジ腱器官は興奮すると筋肉の緊張を低下させる作用を持っています。

その原理を利用して柔軟性を獲得する手法がスタティック・ストレッチングになります。

 

そしてその筋肉の緊張をおとしてくれるゴルジ腱器官は、筋腱移行部に存在し、ゆっくりと持続的に伸ばされるといった刺激に反応することがわかっています。

 

 

ここまでは前回のブログで取り上げましたが、ここで

持続的に伸ばす“って言うけど、どれくらいの時間をかけて伸ばしているのが良いの?

といった疑問が出てくるかもしれません。

 

 

今日はその疑問に答えていきたいと思います。

 

 

1.オススメは30秒を目安に伸ばすのが良い。

 

ストレッチの原則。

 

まず先にある程度の答えを言うと、eヘルスネットを参照してみるとスタティック・ストレッチングをする上で注意すべき原則として以下の5つを挙げています。

  1. 時間を20秒以上かけて伸ばすこと。
  2. 伸ばす部位を意識すること。
  3. 痛くなく気持ちよい程度に伸ばすこと。
  4. 呼吸を止めないこと。
  5. 部位を適切に選択すること。
    e-ヘルスネット:ストレッチの実際より引用。

 

この通りではあるのですが、今日はこれらに加えて、個人的な補足その他ストレッチの豆知識についてご紹介したいと思います。

 

少し長めに伸ばすのがおススメ。

 

まずスタティック・ストレッチングに関しては、eヘルスネットには20秒以上と表記されていますが、個人的にはこれよりも気持ちもう少し長めに行うことが良いかなと思っています。

 

具体的にどれくらいかというと、私としては

柔軟性を向上させたいなら30秒といった時間を目安に伸ばすことをお勧めします。

 

 

なぜ30秒かというと勿論理由があります。

 

 

まずこのeヘルスネットの情報の中で20秒以上かけて伸ばすといったことが書かれており、その理由として

最初の5-10秒程度は適度な伸展度合いに定めるための「ムダな時間」だからです。
(e-ヘルスネット:ストレッチの実際より引用。)

といった表記がされています。

 

そしてこれらの根拠の参考文献として

  1. Bandy WD, Irion JM, Briggler M.
    The effect of time and frequency of static stretching on flexibility of the hamstring muscles.
    Phys Ther 1997; 77: 1090-6.

が挙げられています。

 

少し古めの文献ではありますが、実際に私もこれを読んでみました。

↓ リンク先

(Bandy WD, Irion JM, Briggler M. The effect of time and frequency of static stretching on flexibility of the hamstring muscles. Phys Ther 1997; 77: 1090-6.)

 

詳細は省きますが、この論文はハムストリングスと呼ばれる筋肉に柔軟制限のある21歳から39歳までの93名の被験者(男性61名、女性32名)を対象に行われたストレッチについての研究報告がされています。

 

研究結果の報告としては、

ハムストリングスのストレッチを持続させる時間は、関節可動域を増加させるために30秒が効果的であることが示唆された。

と結論付けています。

 

ストレッチで伸ばす時間と頻度の違いによる効果の差は?

 

また、30秒間のスタティック・ストレッチチングと60秒間行った同ストレッチングでは効果差はなかったようです。

 

更にこの研究ではストレッチを行った頻度として、1日1回、週5日、6週間行った場合に、ストレッチを行わなかったグループと比べて柔軟性の改善を認めたことがわかっています。

しかし、興味深いことにこのストレッチを1日3回と回数を増やしても柔軟性の改善効果が更にアップするといったことはなかったと報告されています。

 

そのため、この論文のまとめとして、1日1回、週5回、6週間、30秒間のストレッチで柔軟性改善効果を認めた、、、が、それより長い時間、より高頻繁に毎日ストレッチを行ったからとして更なる柔軟性UPに繋がるかは疑問を持たざるを得ないといった旨が書かれています。

 

これらのことから、

この論文を参照するなら、私なら柔軟性を改善するためのストレッチ手法としては、30秒を目安に伸ばすようなストレッチ指導をするかなといった考えです。
(もしかしたら何か理由があっての20秒以上と表記しているのかもしれないので、少なくとも「私の個人的な考えとしては…」ということは断っておきたいと思います^^)

 

2.30秒未満でも効果がないというわけではない?

 

20秒間のストレッチでも柔軟性が向上したといった報告もある。

 

そんなつもりは全くありませんが、これだけだと批判しているようで何か後ろめたいので補足します。

 

30秒未満のストレッチだと効果がないのかというというと、そういうわけでもないと私は思っています。

eヘルスネットでは最低20秒以上と表記されていますが極端な話、20秒でも柔軟性の改善効果は見込めると考えられます。

 

事実、20秒間のハムストリングスのストレッチを1日2回6週間実施したところ柔軟性(長座体前屈)が向上したといった報告もあります。
(対象者の年齢が13〜15歳と若いことには少し注意が必要かもしれませんが)

(参照:A Chaouachi et al. Stretch and sprint training reduces stretch-induced sprint performance deficits in 13- to 15-year-old youth. Eur J Appl Physiol. 2008 Oct.)

 

そのため、20秒といった時間が間違いかというとそういうわけではないと思っています。

 

ただ他にも理由はあり、それでも私個人としてはスタティック・ストレッチングを取り入れるなら、30秒間を目安に伸ばすことが妥当かなと感じています。

 

ちなみに2つ目に参照した論文は1つ目と違い、実はストレッチの柔軟性の改善効果の検証を目的に行われた研究ではありません。

ただ、20秒間といったストレッチ効果の結果が含まれていたので取り上げさせていただきました。

 

 

3.スタティック・ストレッチング導入の注意点。

 

持続的に伸ばし続けるストレッチの注意点。

 

最後に余談として、ついでにその論文の内容にも関連するものとしてスタティック・ストレッチングの注意点をさわり部分だけ1つご紹介したいと思います。

 

それは

運動直前にスタティック・ストレッチング(持続的に伸ばすストレッチ)を単体で導入することは避けた方が良い

といったことです。

 

実はスタティック・ストレッチングのような持続的な伸張によるストレッチの急性効果として、一時的に身体機能のパフォーマンスを低下させるといった一面を持っています。

 

柔軟性を高めるスタティック・ストレッチングにはそうした一種のマイナス要素も持ち合わせているのです。

 

ただこれも非常に誤解を生じやすいのですが、だからといってスタティック・ストレッチング自体が悪いというわけではありません。

 

あくまでも運動“前”のスタティック・ストレッチング単体の実施があまりよくないという意味であって、それ以外の場面でスタティック・ストレッチングを取り入れて長期的に身体の柔軟性向上を図ることは有益であると考えられています。

 

この辺りの細かいお話はまた別途取り上げていきたいと思います^^

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